夢の中で見るパソコンの向こうの現実の世界|創世の竪琴・その42
ニーグの村では、村長夫妻が急にいなくなったイルを心配していた。
が無事渚を連れて帰ってきたイル、そして渚を温かく迎える。
4人は夜の更けるのも忘れ、廃墟での出来事等を話していた。
「とにかく、一日も早く龍玉を集めに出掛けた方がいい。
が、問題はどこに神龍がいるか、だな。
・・・グナルーシがいれば相談もできたのだが・・・。」
イルは村長のその言葉でグナルーシを思い出していた。
やさしく、そして厳しかったおじいを。
渚もまた思い浮かべていた、そのやさしい笑顔を、あたたかさを。
「・・・とにかく、今日はもう遅いから寝たほうがいいわ。
イルも渚も疲れてるでしょうから。
また明日、考えましょう。
疲れを取ってすっきりすれば、またいい案も考えつくかもしれないわ。」
気づくとすでに時計は午前3時を指していた。
カーラにそうすすめられ、とにかく山道を歩き続け疲れ切っていた身体を休ませることにした。
興奮と不安でなかなか眠れなかった渚だが、疲れがいつしか深い眠りへと誘っていった。
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「う~んと・・・神龍はどこにいることにしようかな?」
「えっ?」
意外な言葉を耳にして、渚ははっと目を開けた。
彼女は再び暗闇にいた。
そして、目の前の四角い明かりの中には、千恵美の思案する顔が写っていた。
「今日渚からマップデータをもらおうと思ったのに、怒って帰っちゃうし、家に行ったら渚があんな事言いだすもんだから、すっかりもらってくる事を忘れちゃったし・・・。」
渚はその驚きのあまり、声も出ず、しばらく祀恵の顔に見入っていた。
映画の大画面にドアップされたように写っている祀恵の顔に。
「炎龍が火山で水龍が滝じゃ、当たり前すぎてつまらないし・・・風龍は・・・どこがいいんだろ?う~ん・・・赤、青、緑の玉。ホントは渚と相談してみようと思ったんだけどな。
あの子、時々突拍子もないこと言いだすから、結構いい案を思いつくかもしれないのに。
・・・あ~あ・・・どうしよう?」
(な、何?この展開って、ちーちゃんが考えたストーリーなのぉ?)
渚は驚いた。
確かにここは渚が作った地図に似てはいるが、まさか話の展開まで、作っているようになっているとは思いもしなかった。
「ち、ちーちゃん、どこか近くにして!あんまり難しくしないでよ!!」
思わず画面にすがりつき、思わず叫んでしまう渚。
「う~んと・・・そうねぇ・・・そうだ!その反対でいこう!炎龍は氷の中、水龍が砂漠ってのもいいかもしれない!そして・・風龍は、風龍は・・・う~ん・・・風は・・無風地帯なんてないなぁ・・・宇宙ってわけにもいかないし、まっ、いっか、今のところはそれで。」
-カチャカチャカチャ・・・-
どうやら祀恵はその展開でいくようだ、タイピングの音がし始めた。
「んでもって・・ここでのイベントは・・」
-カチャカチャカチャ・・・-
「ちーちゃん、それって何処にあるの?教えてってば!ちーちゃんっ!」
内容も言いながらタイピングしてくれればいいのに、と渚は思っていた。
それと同時に思いつく、渚はまだそんな場所のマッピングをしてないことを。
「部長でも作ってきたんだろうか・・それともこれから・・・?」
(部長ってすぐ私と反対の事をするんだから。
そんなに気に入らないんなら、今度の提案も却下すれば良かったのに。
いつも私がこうすれば?って言うと、ああした方がいいって言って、私の分担に口を出してきて、取っちゃうんだから!)
渚はいつも自分にちょっかいばかりかけてくる山崎部長の事を思い出していた。
渚をからかっては喜んでる最低野郎を。
が、しばらくして、今、自分がそんな事してる場合じゃないということを思い出した。
「そ、そうだった!あんなアホ部長なんてどうでもいいんだ!ちーちゃんは?」
画面には祀恵の真剣な顔が写っていた。
多分マウスを使って設定でもしているのだろう、その真剣な視線があちこちへと向けられ、時々『うん・・これでよし』とか言っている。
(何とか内容が聞こえないかなぁ・・・?)
「ちーちゃん、ちーちゃんっ!」
渚は大声で画面を叩きながら千恵美を呼んでみた。
「ふぅ~・・・やっぱり駄目?・・・」
呼ぶことを諦めた渚はそこに座り込んだ。
(ああ・・・これからどうなるの?これってまるっりロープレだけど・・・でもゲームと違うところは・・・本当に死ぬって事よね・・・死んだら・・もし私が、死んでしまったら・・・・)
「ああ、もうっ!何でこんなマンガか小説のような事が起きちゃったわけ?」
渚は頭が混乱し、やけになって叫んだ。