冒険の旅、4人パーティー結成|創世の竪琴・その53
木々の間を駆け抜ける心地よい風と小鳥の囀りだけが聞こえていた。
「分かりました。」
しばらくして、リーは渚のイヤリングの剣を指しながら言う。
「こんな私でよければ、同行させていただきます。
ですが、もし意識をゼノーに乗っ取られ、私自身を取り戻しそうもないと判断した場合、かまわずその剣で私を殺して下さい。」
「えっ・・で、でも。」
「お願いです。約束して下さい、私を殺すと。
私の心まで闇に染まらないうちに。」
「そんな事言われたら、俺だって一度はゼノーに操られたからな。」
イルが体裁悪そうにそっぽを向いた。
「分かったわ・・約束する・・でもリーなら大丈夫よ。
そんな事あり得ないわ!」
渚は再びリーの手を取り、固く握った。
「ありがとう、渚。」
リーもまた渚の手を固く握り返す。
「じゃ、旅の仕度しようか。
向こうは寒いから服とかもいるし・・・。」
イルはリーに少し嫉妬も感じながら、それでもリーが仲間になる事に、安堵した。
イルも渚同様、リーが信頼に足る人間だと感じていた。
「うん。お頭に聞いてみる。」
「今日はもう遅いので、仕度は明日するとして、私たちの小屋に泊まりませんか?
粗末な小屋ですが夜露くらいは凌げますので。」
心の内を話し、二人に微笑んだリーに、先程までの陰りはもうなかった。
「そうね、お頭もそう言ってたし。」
渚たちが帰ろうとした時だった、手を振って駆けてくる女の姿が木々の間から見えた。
「あ、あれは・・・!」
「どうしたの、イル?」
少し焦りだしたイルを見て渚は、不思議に思った。
が、はっきりその女の姿が分かるようになって納得した。
それは、ファラシーナだった。
ファラシーナは近くまで来ると、息を切らせながらイルに言った。
「あ~疲れたぁ・・・。こんな奥まで来てるんだもん・・。」
「ど、どうしてここへ?」
「あたいね、あんたたちに付いて行こうと思ってさ。
ちゃんと団長から許しも、もらったし。」
ファラシーナは早速イルの片腕に自分の腕を絡ませた。
「お・・おい、いいのか?団きっての舞姫がいなくても?」
「まぁ、なんとかなるさね。
世界がなくなっちまったら、それどこじゃないからね!」
何とかファラシーナを思い止まらせようとしたイルだが、彼女の勢いに押され、結局一緒に行く事になった。
「術の使い手は多い方がいいと、私は思います。」
「あっ、あんた話が分かるね!」
リーは渚に一瞬睨まれたような気がしてびくっとした。
そして、その夜はそこに泊まった渚たちは、ザキムと黒の森から始まる話を明け方近くまで話していた。