敵国の地下組織|国興しラブロマンス・銀の鷹その51
3人は地下水路をひたすら走っていた。
「このくらいあそこと比べればどうってことないのに、ダメね、明るさに慣れてしまって。」
走りながらレブリッサが言う。
「そうね。確かに感覚はあの頃より落ちてるかもしれないわ。」
セクァヌも同感だった。
「でも、レブリッサが盗賊だったなんて思いもしなかったわ。」
「でしょうね。まさか大臣夫人がそんなだとは誰も思わないでしょう。それに実際に結婚したわけじゃないし。」
「ええ?」
「その前に落とされたから。」
「あ・・・・・そ、そうだったの。」
「形式は関係ない。要は2人の気持ちだ。」
シュケルが付け加える。
「でも、やっぱり女としては結婚式あげたいわよね、レブリッサ?」
「そうね。だからこのことが決着がついたらって約束してるの。」
「ええ~~?!そんな大事なこと話してくれないなんて・・・水臭いわよ、レブリッサ!」
「決着がついたら話すつもりだったの。」
「もう、いつまでたっても子ども扱いなんだから。」
セクァヌは拗ねる。
「そう。あなたは私たちの子供よ。いつまでたっても。・・・少し大きいけれどね。それも、どういうわけかシュケルと会う前の子供だったりするけど。」
「ふふっ・・・アレクより4つ上だけだったかしら?」
「こら!女性に歳を聞かないの!」
「いいじゃない、女同士だもの。それに母親の歳を知らない子供はいないわよ?」
「そういわれればそうね・・」
一応小声でだが、なんとものん気な話をしながら、セクァヌらは進んでいた。
「さてと、知らせを飛ばしておいたからもう集まってくる頃だな。」
コスタギナ大臣の元屋敷の地下。
そこには代々の当主のみが知っている隠し部屋があった。
「でも、灯台下暗しってこういうことを言うのよね?」
「そうね。」
「大臣!いよいよ決行か?」
バタン!と息をきらして一人の男が入ってくる。
「えっ?!」
そして、そこにいるセクァヌの姿に驚く。銀の髪とゆらめくランプの炎を弾いて不思議な輝きを見せる瞳。
「おい!早く入れよ!」
後ろから続いてやってきた男が一人目の男を急かす。
「おいったら!」
そして、無理やり部屋に押し込むようにして入り、その男も目を丸くして驚く。
「こんにちは。」
「こ・・・・こ、こん・・にちは。」
屈託のない笑みをみせるセクァヌにまたしても驚きそして呆れる。
1人、2人と部屋に入ってくる。思いがけない人物の笑顔に迎えられ腰を抜かして。遠まわしにしていつもの所定の場所へと行って座る。
「さてと、そろそろいいかな?」
シュケルが口をわる。
「その前に理由を聞かせてくれないか、大臣?」
リーダー核らしい目の鋭い男がセクァヌを睨みながら立ち上がる。
「敵将をつれてきてどういうつもりなんだ?」
それまでざわざわしていたのが、し~~~んとなる。
「『敵将』か・・・確かにそうかもしれない。が、お前たちの目指すものは何だった?」
シュケルが静かに言う。
「それは・・・・・・だが、オレたちの中にはスパルキアの軍勢に身内を殺された奴もいるんだぞ。」
「私がそのスパルキア軍に組していることは知っているはずだが?」
「それでもあんたはガートランド人だ。だけどあいつは違う!」
男はセクァヌを指差して叫んだ。
「なぜこんなところで笑ってるんだ?なぜ笑えるんだ?!」
『敵将』という言葉が『なぜ笑えるんだ?』という言葉が心に突き刺さり、セクァヌの表情がかげる。
「すみません、私の配慮が足りませんでした。」
おずおずと立ち上がってセクァヌは謝る。
「私は・・・確かに敵将です。でも、できれば敵でいたくない。誰とも争いたくはありません。」
「きれいごと言ってんじゃねーよ!」
その男はセクァヌをぎろっと睨む。
「では、どう言えばいいのですか?笑ってはいけない、争いたくはないといってもそうはできないと言われては・・・・」
「やる気あんのか姫さんよ?」
「え?」
「にこにこ笑えば、オレたちが尻尾振って協力するとでも思ってきたのかっ?!」
「あ・・・・・・」
一気に沈んだセクァヌを気遣いシュケルが怒鳴る。
「キース!今更何を言うのだっ?!この前あったときは快く承知してくれたではないか?」
シュケルもレブリッサも驚いていた。そんな風潮は全くなかった。
「いいのです、シュケル。私が悪かったのです。」
「セクァヌ?」
セクァヌは、それでもかばおうとしてくれるシュケルを止める。
「分かりました。私が甘く考えすぎていました。あなたがたは自分の国を救うために戦っておられるのです。そして、私は私の一族の為に。」
そっと目を閉じる。
「私は何としても彼らを助けなければなりません。たとえ、どんなに困難な道でも、その為にどれだけ敵を作ろうが・・・どれだけの命を奪おうが・・・」
すっと目を開ける。
それはさっきまでの少女の瞳ではなかった。
ランプの光を弾き、紅く輝くそれは恐ろしいほどの威圧感を持っていた。
すべてを射抜く鋭利な視線、静かに燃え盛る紅い炎。部屋にいた男たちは完全に捕らえらていた。
「我が前に立ちふさがるものは・・全て排除します!例え何者であっても!」
「ヒ・・ヒィーーーーー・・・・・」
突然奥に座っていた男が悲鳴を上げて外へと飛び出した。
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