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そして、伝承に…|国興しラブロマンス・銀の鷹その61

翌日、シャムフェスから山のような祝いが届き、アレクシードは、2人の仲でそんな形式張ったものはいらないのに、とお礼を言いがてら文句を言いにシャムフェスの屋敷へ出向いていた。

「なんだ、あれは?」

「あれとは?」

「あれだ!あの山のようなものはなんだ?あれほどのことする必要もないだろ?」

「ああ、そのことか・・・まーな、普通の誕生祝いならそんなこともしないけどな。」

「なんだ、そりゃ?」

笑いながら答えたシャムフェスに、アレクシードはどういう意味だ、と聞く。

「将来の妻に送るプレゼントとしては、まだまだ足らないとオレは思ってるんだが?」

「は?し、将来の・・・・何だって?」

アレクシードは自分の耳を疑って思わず大声を出す。

「いいだろ?恋愛は自由だ。姫のことはきっぱりと諦めたんだから、その代わりな。」

「おい!冗談も・・」

「冗談じゃないさ。」

アレクシードの言いかけた言葉を切って、シャムフェスは真顔で言う。

「安心しろ。無理強いはしない。あの子がオレを気に入ってくれたらということでいい。」

「おい、ちょっと待てよ。オレの子なんだぞ?」

「分かってるさ。」

「産まれたばかりなんだぞ?」

「ああ。」

「まだどんな子になるかもわからないんだぞ。・・・そ、その・・かわいいかどうかも?」

「なるさ。」

「オレ似だったらどうする?」

「いや、ぜったい姫に似てるさ。」

「じ、自信たっぷりだな?」

「そりゃそうだ。お前に似ちゃかわいそうだろ?」

「おいっ!?」

はははははっと朗らかに笑ってシャムフェスは続ける。

「冗談だ。お前に似てもいけるんじゃないか?ともかく、お前と姫の子だ。いい子に決まってるさ。どっちに似ようとも。」

「ったく・・・・それはいいとしてだな・・・」

「ん?」

ぐいっとシャムフェスに近づいて睨むアレクシード。

「なんでお前の嫁さんなんだ?まだ産まれたばかりなんだぞ。なのに、早くも嫁に出す父親の気持ちを味あわせなくてもいいだろ?!だいたいオレとお嬢ちゃんでも歳が離れてるっていうのに・・・オレの娘とお前とじゃ・・・いくつ違うと思ってるんだ?!」

怒りのまま怒鳴るアレクシードに、シャムフェスはあくまで飄々としている。

「いいじゃないか。愛に歳の差は関係ない。それに、お前には散々苦い汁を飲まされ続けたからな。このくらいのお返しがあってもいいと思うな。」

「なんだ、そりゃ?」

「・・・お前には姫がいれば、それで十分だろ?」


その言葉の中に、セクァヌへの想いが籠もっていることを感じ、アレクシードはそれ以上言うことが躊躇われた。

人を愛しく思う気持ちは、恋いこがれる気持ちは、アレクシードにも痛いほどよくわかっている。
そして、シャムフェスが真剣だったということも。


「ほら、オレはもういいから、姫の傍についていてやれ。あ・・それから・・」

「なんだ?」

「いい加減「お嬢ちゃん」はやめるんだぞ?」

シャムフェスのからかうような笑みに、アレクシードは照れ笑いのような困ったような笑みを返して帰っていった。


「今度も振られるかもしれないが・・・いや、今度こそ心を掴んでみせる。・・・奴は殺しても死にそうもないしな・・・。」

去っていくアレクシードの後ろ姿を見ながら、冗談ともそうでないとも思える独り言を、シャムフェスは呟いていた。

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 銀の鷹姫と呼ばれた少女がいた。

軍を率い、強国から一族を解放し、新天地に新たなる国を興したスパルキアの姫。銀の飛翔、彼女の進軍の様を人はそう呼んだ。


 月光を反射し銀色に輝く鋭い視線、馬を駆り、その馬上で躍動する銀の髪。心まで射抜くかのような鋭さと、安らぎを湛えた穏やかさとの2つの顔を持つ銀色に輝くの瞳。

誰しもその不思議な輝きを放つ銀色の瞳に囚われ魅了される。

セクァヌのその伝承はいつまでもいつまでも長く伝えられていった。

・・・その生涯の辛い時期も、そして、幸せな時期も長く分かち合った、歴戦の勇者アレクシードの名前と共に。


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