魔王と魔導士の過去|創世の竪琴・その52
リーは幼い頃の事を少しだが、2人に話した。
その桁外れな魔法力と魔物の瞳と言われる紫の瞳のせいで、産みの母にも捨てられ、村人に散々迫害され、追われ、命さえも狙われ、村や町を転々と渡り歩いたこと。
「とにかく、生きるために私たちはあらゆる事をしました。
盗みなど、日常茶飯事の事です。
最もほとんど兄が私を養ってくれたようなものですが。
・・ある村での事です。
兄が熱を出し、私は途方にくれていました。
偶然私と会った女の子が、森に隠れていた私たちに、自分の食事から少し、持ってきてくれるようになったのです。
ですが、ある日、その子は、私たちの所に来る途中、狼に襲われ、死んでしまったのです。
私たちの事を知った村人は狂ったように山狩りをし、捕らえようとしたのです。
私たちは必死で逃げました。
が、途中、兄が獣用の罠にその足を取られたのです。
兄と私は必死にそれを外そうとしました、が、その時村人はもうすぐそこまで迫っていたのです。
手に鎌や鍬を持ち、私たちを殺そうと鬼のような形相をして。
私にはそれが丁度死の鎌を振りかざした死神に見えました。
その恐怖に私は、兄を・・見捨てて逃げてしまったのです。
その後は・・多分、兄は私の想像を越えた酷い体験をしたのでしょう。
運良く私は、街道筋に倒れていた所を旅人に拾われ、その人に育てられました。
その人が精霊使いだった事もあり、今の私があるわけですが・・兄には、手を差し延べてくれる人が誰もいなかったのでしょう。
その時以来、兄との心の繋がりは、ぷっつりと切れたままでした。黒の森で会うまでは。」
「そ・・そんな。」
想像し得なかったリーとゼノーの体験に2人は驚愕していた。
「私には・・最後に別れたあの時の兄の叫びが忘れられません。
兄は、私に逃げるよう言ってくれたのです。
捕まった自分がどうなるのかは十分承知の上。
・・一瞬私は躊躇したのですが、次の瞬間には、もう、駆けだしていました。」
多分リーは、今までその精霊使いの人以外誰にも話した事がないだろう、と渚は思った。
悲しそうに、そしてそれでも淡々と話すリーの心境は、いや、淡々と話すからこそ、それだけリーの心は傷ついている。
「それは・・仕方なかった事だと思う。
私でも多分、そうしたと思う・・リー、あまり自分を責めないで。」
渚はそっとリーの両手を取り、握った。
「ありがとう、渚。」
しばらくの間、渚はリーを、リーは渚をその見えない目でじっと見つめていた。
ですが、ある日、その子は、私たちの所に来る途中、狼に襲われ、死んでしまったのです。
私たちの事を知った村人は狂ったように山狩りをし、捕らえようとしたのです。
私たちは必死で逃げました。が、途中、兄が獣用の罠にその足を取られたのです。
兄と私は必死にそれを外そうとしました、が、その時村人はもうすぐそこまで迫っていたのです。
手に鎌や鍬を持ち、私たちを殺そうと鬼のような形相をして。
私にはそれが丁度死の鎌を振りかざした死神に見えました。
その恐怖に私は、兄を・・見捨てて逃げてしまったのです。
その後は・・多分、兄は私の想像を越えた酷い体験をしたのでしょう。
運良く私は、街道筋に倒れていた所を旅人に拾われ、その人に育てられました。
その人が精霊使いだった事もあり、今の私があるわけですが・・兄には、手を差し延べてくれる人が誰もいなかったのでしょう。
その時以来、兄との心の繋がりは、ぷっつりと切れたままでした。黒の森で会うまでは。」
「そ・・そんな。」
想像し得なかったリーとゼノーの体験に2人は驚愕していた。
「私には・・最後に別れたあの時の兄の叫びが忘れられません。
兄は、私に逃げるよう言ってくれたのです。
捕まった自分がどうなるのかは十分承知の上。
・・一瞬私は躊躇したのですが、次の瞬間には、もう、駆けだしていました。」
多分リーは、今までその精霊使いの人以外誰にも話した事がないだろう、と渚は思った。
悲しそうに、そしてそれでも淡々と話すリーの心境は、いや、淡々と話すからこそ、それだけリーの心は傷ついている。
「それは・・仕方なかった事だと思う。
私でも多分、そうしたと思う・・リー、あまり自分を責めないで。」
渚はそっとリーの両手を取り、握った。
「ありがとう、渚。」
しばらくの間、渚はリーを、リーは渚をその見えない目でじっと見つめていた。
「私を育ててくれた精霊使いは、もう亡くなりましたが、私に攻撃魔法を教えてくれたお師匠様がいます。
その方に頼んだ方がいいと私は思うのですが。」
リーは渚の手を放し、歩き始めた。
「でも・・・・」
「仲間は心から信用できる者でなければなりません。
私はその方がいいと思うのですが。」
「ううん!私はリーでいい!・・あの、もしリーが嫌でなければ・・。」
「俺も。もし、ゼノーになってしまったとしても・・その時は俺が渚を守る。大丈夫だって!」
「渚、イル。」
リーはその歩みを止め、2人の方を振り返った。
「しかし・・」
「私、リーはとても強い人だと思うの。
だから、例えリーの内にゼノーが潜んでいて、何かの拍子に現れても、絶対打ち勝つと思うの。だから・・リー・・・」
渚はリーの目の前に立ち、じっと見つめていた。
リーはじっと考え込み、沈黙が渚たちを覆った。