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アーガヴァの領主|国興しラブロマンス・銀の鷹その45

翌日、スパルキア軍は、ガートランドの息のかかった国々の連合軍と戦っていた。

その中の1つに昨夜の男、アーガヴァの領主もいた。

「閣下!ジュダム指揮官から攻撃開始の催促がきておりますが!」

軍人上がりの領主である彼は、閣下と呼ばれていた。

「今少し待て。」

「しかし!」

「待てと言っておる!」

「はっ!」

アーガヴァの領主、ローランドは合図を待っていた。それは、ガートランド側に人質となっていた我が子の救出の合図。

戦況はスパルキアの圧勝のように思えた。
が、まだ決着はついていない。
ガートランド側指揮官から再び催促の使者が来る。

「閣下!いつまで待機しておられるつもりですか?!事と次第によっては・・」

「よってはどうなのだ?!」

ローランドの鋭い視線に使者は思わずびくっとする。

とその時、遠眼鏡で遠くの山頂を見ていた兵士が叫ぶ。

「閣下!のろしが、のろしが上がりました!!」

「間違いないか?!」

「はい!間違いありません!」

「よし!」

それまで何と言われようとも立たなかったイスから立ち上がり、ローランドは、命じる。

「我らはこれよりスパルキアに組する!敵は連合軍!」

「うおーーーー!」
兵が叫ぶ。

「な、なんと・・閣下?!」
使者が顔色を変えて叫ぶ。

「こ、このような事をしてただですむとお思いか?」

「いや、思わんが・・・それでも国をつぶすよりは、民を今以上に窮地へ追いやるよりはいいだろう。」

にやっと笑ったローランドは、使者に早く立ち去れ、と目で指図する。

「あ・・・・」

ぐずぐずしていては命が危ないと判断した使者は、慌てて走り去っていった。


そして、戦闘終了後、ローランドは、昨夜の供の男1人を引き連れ、スパルキア陣営へと馬を進めていた。


「失礼、スパルキアの兵士とお見受けするが?」

もうまもなく陣営が遠くに見えてくるだろうと思われた野で、兵士らしき者と思われるフードをかぶった馬上の人物に声をかける。

「我らは今般戦の最後に参戦させていただいたアーガヴァの者。族長殿にご挨拶申し上げたいのだが。」

「こちらへ。」
2人に軽く会釈するとその兵士は、先に立って案内をした。

-カポ、カボ・・-

ゆっくりと陣営内へ入っていく。
戦の後片付けに追われる兵士らが、時々ちらっと彼らを見る。

「閣下、大丈夫でしょうか?」

供の男が心配して小声で言う。

「大丈夫であろう。こちらが手の内を見せて来ているのだ。ガートランドとは違う。」

「は・・ですが・・。」

「心配性だな、お主は。」

ローランドは、前を行く兵士の後姿を見ながら答えた。
切りつけてくれ、といわんばかりのその後姿に、心配はいらない、と感じていた。

-ぶるるるる・・・-

目の前に族長のものらしいテントがあった。
兵士はそこで馬を下りると、その横のテントへ入っていく。

そして、次にそこから出てきたのは、スパルキア名参謀シャムフェス。

「これは、アーガヴァのご領主殿。わざわざお越し頂き、恐縮です。私はスパルキア軍師、シャムフェスと申します。」

「おお、貴殿があの名参謀と名高いスパルキアの軍師であられるか?!」

その声に聞き覚えがあるような感じを受けながらローランドは、馬から下りると丁寧に挨拶をする。

「名参謀かどうかは存じませんが、軍師を勤めさせていただいております。」

シャムフェスは笑顔で話す。

「いや、ご謙遜を。で、族長殿は?」

「はい。突然のこと故、しばしお待ち願えますか?」

「勿論、わしは構わぬ。」

族長のテントに案内され、そこで2人はセクァヌを待った。
数分後姿を現したセクァヌに、例外なく圧倒されつつ対面を終え、友好関係を確認すると、彼らは帰路につく。


-カポ、カボ、カボ-

彼らの前には、来た時と同じ兵士が馬を駆っていた。

スパルキアでの慣わしに従い、案内人が帰りも送っていくという事だった。

(無口な兵士だな)、ローランドはそう感じていた。

が、直接軍師であるシャムフェスに話を通すとは、若いように思えるが、よほどの功労者なのだろうか、と考える。
が、小柄なその兵士からは、とてもそんな風にも思えない。

(スパルキアには族長以外身分というものはなかったはずだ。では、軍師殿の身内か何かなのだろうか。)

その背を見てローランドはあれこれ考えながら馬を駆っていた。

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