日常生活は平穏に?|創世の竪琴・その65
そして、自分の世界に1人戻った渚の日常は平穏にすぎていき……
渚たちが作ったそのゲーム【創世の竪琴】を公開する文化祭当日・・・
「渚っ!」
運動場の片隅で、出店で買った焼きそばをほおばっていた渚のところに、千恵美が走り寄ってきた。
「どうしたの?・・」
時計を見た渚は、まだ私の当番の時間じゃないのに?と思いながら千恵美を見る。
「大当たりよっ!あのゲーム!みんな順番待ちでやってるわ!」
「そう・・よかったじゃない。」
「何よぉ?気のない返事をして?渚が作ったんじゃないのぉ?」
「みんなでね。」
「ま、そうだけどさ・・でも発案者は渚だし、ほとんど渚が作ったようなものじゃない?好評につき、ダウンロードゲームとして販売するって!」
「ホント?ふ~ん・・・・」
「もう!他人事みたいに言ってぇ・・・
どうも夏休み以降沈んでるわね?何かあったの?」
「別に・・・」
「おっ!なんだ、こんなとこにいたのか?」
その声に振り向くと、部長の山崎が立っている。
「ゲーム好評の褒美に、これお前にやるわ!」
ばふっと渚の顔目掛けて投げてよこしたそれは、頭が少し尖っている真ん丸なブルースライムのクッション。
目がくるくる動くおかしな表情のもの。
「危ないじゃないのっ!」
顔の寸前で受け止めた渚が部長を睨む。
「何よ?2Bの出店で売ってたやつじゃない?」
「はははっ!お前にゃぴったりだろ?」
「ぶうぅーっ!」
思わず渚は膨れっ面をする。
「ほら見ろ、その顔!そっくりだ!」
「もうっ!部長ったらっ!」
-はははっ!-
ぬいぐるみの顔の真似をした部長に、渚も千恵美もそして、本人も笑っていた。
「笑ってた方が、桂木には、あってるぞ!」
「え?」
「最後のフォークダンス、付き合ってくれよ、な!」
照れ笑いして、部長は部室のある校舎へ駆けて行く。
「えっ?何?何?・・ひょっとして部長って・・?えーっ!?」
目を丸くして千恵美が渚を見る。
「な・・何よぉー?ちーちゃん?」
「ふ~ん・・そうか、そうか・・・」
「わ、私は部長のことなんて・・」
「ま、いいじゃないの?そろそろ勇者様から卒業しても?
じゃ、私、約束があるから!」
勝手に決め込んで、祀恵はウインクすると走り去っていく。
「もうっ!そんなんじゃないわよ、絶対っ!」
いつもの部長のからかいなんだからと千恵美の後ろ姿に文句を言ってから、スライムのクッションに目を移す。
「ララ…?」
その顔はまづでララがおどけた時のような顔。
「勇者様卒業試験にしては・・キツ過ぎるわよ・・・・。」
クッションを見ながら、思わず渚は呟く。
「精神的ダメージ9999、最高値!!」
ふう・・・ため息をつき、自嘲する。
「ララ・・お前は、イルと一緒にいるの?」
ふと見上げた空に、ララとふざけ合って笑ってるイルの顔が見えたような気がした。
-完-
>>続・創世の竪琴「月神の巫女」に続きます。