龍龍杯 夏
今日の東京は30度越えの真夏日。
北海道生まれの私にはちょっと堪える暑さだけれど、湿気っぽい暑さって嫌いじゃないんですよね。
地元北海道の麻雀最強戦を除いて、配信対局は2度目。
まさか夏目坂スタジオで麻雀を打てる日が来るとは夢にも思っていませんでした。
夏目坂スタジオへ向かう道すがら。
地下鉄の通路がコロッセオに向かう敢闘門のように見えて、不意に写真を撮ったんです。
思えば、何気ないこの通路がそんなものに見えている時点でかなり入れ込んでいたんでしょう(笑)。
少しだけ自分のことを語らせてください。
私は、昔から麻雀プロになりたかったんです。
でも、正直言って自分にその適性があったかどうかは疑問です。
打ち手としての実力もさることながら、プロとして必要な他の力が致命的に足りないからです。
プロになりたかったけど、なれなくて良かったのかもしれません。
麻雀に対してアマチュアとしての携わり方というものがあり、その道を懸命に走ってきたから今日という日があったわけで、大昔に先輩方から学んだことは間違っていなかったのではないかと思います。
そんな私にとって、今日の大会は「擬似プロ体験」ができる素晴らしい舞台でした。
配信でもちょっとお話ししたんですが、最初はラフな格好でこようと思っていたんです。
でも、なんか違うなって。
「お前、プロになりたかったんだろ?あの画面に映る自分がネクタイしていなくても良いのかよ?」
そんなことを思いまして、お気に入りのネクタイに合わせて急遽ワイシャツを買い直したんです。
あのネクタイ、4年前の麻雀最強戦の時にしていたものなんです。
次に大きな大会に出られることがあったらしようと思って、大切にとっておいたもの。
そうか、もう4年も経っていたのか…。
本当は自戦記でも書こうと思っていたんです。
でも、B卓戦は我ながらあっちをフラフラこっちをフラフラ…と良い加減な打ち筋で、顔から火が出そうなのでやめておきます。
6万点のトップを取れたのは、いろんな巡り合わせで展開が私に向いただけで、決して誉められた内容ではありませんでしたから。
それよりも記しておかなければならないことがあるんです。
ガッチガチに緊張していた私に、共に卓を囲んでくださった三人のプロが本当に素晴らしい応対をしてくださったんです。
まず、仲田加南プロ。
控室で緊張しながら一人でいた時に、気さくに話しかけてくださって緊張を解いてくれました。
なんていうか、海より広い雰囲気をお持ちの方。
それでいて麻雀があんなに強い。
あれだけのリードを持たせてもらっていながら、オーラスは一発でやられるんじゃないかという危機感を抱かざるを得ないくらい押しが強い。
ご一緒できて嬉しかったです。
次に、一瀬由梨プロ。
麻雀最強戦で観戦記を書かせていただいてから、SNSで仲良くしていただいていましたが、実際にお会いするのは今日が初めて。
ようやくお会いできた嬉しさもありましたが、何よりこの舞台で一緒に打たせていただけて光栄でした。
観戦記でいつも偉そうなことを書いていながら、けちょんけちょんにやっつけられたらどうしようかと思っていたのですが(笑)、そうはならなくて良かったです。
でも、オーラスの仕掛けは素晴らしかったですね。助かりました。
そして、二階堂瑠美プロ。
瑠美プロは、大昔に札幌でお見かけしたことがあったんです。
確か、亡くなった安藤満プロと一緒にいらっしゃった時だったと思います。
お世辞抜きで、あの頃とほとんど変わっていないんです。
相変わらず見目麗しい方だなと、対面に座った者の役得として眺めていました。
緊張している私に対して常に動作を優先させてくださって、さすがこういう場をたくさん踏んでいらっしゃるプロは違うなと感じました。
B卓戦の結果は、紛れもなく同卓いただいたプロの皆様にいただいたものと思います。本当に良き思い出が増えました。
そして決勝。
大好きな内川幸太郎プロと夏目坂で打てる。
こんなに幸せなことはありませんでした。
内川プロは、読みの精度と深さが抜きん出ている方。
それは、Mリーグの観戦記者としていつも感じていることです。
内川プロと打ち合うためには、まともにやっても読まれてしまうので何か仕掛けなければいけない。
だから私は、その機会を狙っていました。
内川プロは対局後に「たった5,800で仕掛けてくるか」とおっしゃいましたが、点数が何点であれ、このまま内川プロに点棒を持たせて良いわけがないので、読ませるために一計を案じたんです。
尊敬する打ち手に前に出られてしまって、後から自分の脚で差し切れるわけがないんですから。
この読み合い、読ませ合いこそが麻雀の醍醐味。
今日はこの一局に巡り会えただけで本当に満足です。
幸せな時間でした。
結果的に勝利には一歩…いや、かなり足りなかった気がしますが、当初の思いのとおり良い戦いができたことが最高の収穫でした。
そして、1日だけトッププロの中に混じって麻雀ができたこと、本当に幸せでした。
きっと、私がプロになれた世界線ではあり得ない出来事だったはずです。
龍龍杯は、いつも二百人以上のユーザーがわずか3席のプラチナシートを奪い合う大会です。
勝ち上がるのは本当に難しいし、私みたいなものが夏目坂にやってくるのは一生に一度の珍事だったでしょう。
でも、その先にはたくさんの打ち手との出会いがあったし、何より私の心の中にずっと引っかかっていた「未練」みたいなものを押し流してくれました。
本当に、出られて良かった。
大海を臨むと世界が広がるんです。
予選を勝ち上がれて本当に良かった。うん。
この大会を企画してくださった関係各位の皆様、運営をしていただいた事務局の皆様、素敵な実況をしてくださった襟川麻衣子プロ、長時間解説をしてくださった石川遼プロをはじめとする皆様。
そして、ガッチリ打ち合ってくださった内川幸太郎プロをはじめ出場プロの皆様。
夢のような時間をありがとうございました。