厚生労働省 第1回「大麻規制検討小委員会」議事録 2022年5月25日開催

令和4年5月25日 第1回「厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会」  議事録

医薬・生活衛生局

○日時
令和4年5月25日(水)14:00~16:00

○場所
TKP新橋カンファレンスセンター ホール15E

(東京都千代田区内幸町1丁目3-1 幸ビルディング)

○議題
「大麻取締法等の施行状況と課題について」

○議事録

○監視指導・麻薬対策課長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第1回「厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会」を開催させていただきます。
 委員の先生方には、大変御多用のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
 本検討会におけるカメラ撮りについては、冒頭のみでお願いいたします。冒頭の挨拶が終了した後、報道関係者の皆様は御退席をお願いいたします。
 それでは、委員の先生方について、事務局から五十音順にお名前を御紹介させていただきます。お手元に委員名簿があるかと思います。
 太田達也委員。
 神村裕子委員。
 合田幸広委員。
 小林桜児委員。
 鈴木勉委員。
 関野祐子委員。
 富永孝治委員。
 中島真弓委員。
 橋爪真一郎委員。
 花尻瑠理委員。
 舩田正彦委員。
 以上でございます。
 本日は、現時点で全ての委員の先生方に御出席をいただいており、定足数を満たしておりますので、委員会が成立していることを初めに御報告いたします。
 本日は、小林委員、富永委員、神村委員におかれましては、ウェブ形式にて御参加いただいております。
 また、本日は、薬物依存症治療の研究等に従事しておられます、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長の松本俊彦先生に参考人としてお越しいただいております。よろしくお願いいたします。
 本日は、会議室における対面形式とウェブ形式を併用して委員会を進めさせていただきます。また、委員会を開催する前に、本委員会の取扱いについて御説明をさせていただきます。
 本委員会につきましては公開とさせていただきますが、新型コロナウイルス感染症対策のため、一般の方の会場への入場を制限させていただいております。また、報道機関の方にはサテライトセンターで傍聴いただいてございます。
 本日の議事はお配りしている議題に沿って進めさせていただきますが、議事に入る前に、事務局から本委員会の連絡事項を申し上げます。

○事務局 厚生労働省全体の取組といたしまして審議会等のペーパーレス化を進めております。本日はペーパーレスでの委員会開催とさせていただきますので、委員会資料はお手元のタブレットを操作して御覧いただくことになります。操作等で御不明な点等がございましたら適宜事務局がサポートいたしますので、よろしくお願いいたします。
 議事録については後日公開を予定しております。
 最後に、審議中に御意見、御質問をされる委員の方々にお知らせいたします。まず、会場にお越しになって御参加いただいている委員におかれましては、挙手していただき、御自身のお名前と発言したい旨を御発言いただきますようお願い申し上げます。また、卓上にウェブ形式に使用するZoomがございますが、御発言の際は卓上のマイクを御使用いただき、Zoomのマイクについては消音のまま御使用いただきますようお願いいたします。また、ウェブで御参加いただいている委員におかれましては、まずZoomの挙手ボタンを押していただきますようお願いいたします。その後、委員長から順に発言者を御指名いただきますので、御発言いただく際は、マイクについて消音を解除していただいた上、御発言をお願いいたします。

監視指導・麻薬対策課長 ありがとうございます。
 それでは、委員会の開会に当たりまして、厚生労働省医薬・生活衛生局長の鎌田から御挨拶を申し上げます。

○医薬・生活衛生局長 皆さん、こんにちは。医薬・生活衛生局長の鎌田でございます。
 本日は、御多用のところ御参集いただきありがとうございます。また、日頃から薬事行政、とりわけ違法薬物対策などに関しまして御指導、御鞭撻を賜り、誠にありがとうございます。
 御案内のとおり、我が国は薬物の生涯経験率が低いということは誇れると思います。これも戦後制定された薬物四法を中心に、皆様の御協力の下、我々が進めてきた行政というものが一定の効果を上げているのだろうという点は自負できるのだと思います。
 他方、近時大麻の乱用が広がり、とりわけ若年層での乱用が大きな問題になっているということがございます。併せて、大麻由来の医薬品の使用というものについての求めも強まっております。これは国際的な動きもあるということでございます。一方で、特に大麻法が戦後すぐにできたということもありまして、当時の日本で行われた神事などでの使用をどうするのかと。それで栽培規制が今の間尺に合っているのかという御指摘もございます。
 そうしたことを踏まえまして、昨年、皆様の御協力を賜りまして「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を開きまして、大麻草、今、部位による規制がなってございますが、これを成分に着目した規制に見直してはどうか。そして、大麻から製造された医薬品の使用に関する規制についても見直したらどうか。そして、現在は使用に関する取締り規定がございませんけれども、そうした罰則の導入について検討してはどうか。併せて、単に規制を強化、あるいは見直すだけでなくて、再乱用の防止と社会復帰についても併せて推進すべきであるという御指摘を賜ったところでございます。
 その検討会の際にも、法律事項でございますので、当然法改正を視野にと申し上げておりましたが、その後、我々のほうで皆様と御検討を進めさせていただきまして、これから具体的に大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法の改正に向けた議論について、具体的、専門的、そして技術的な論点の整理を行いたいと考えまして、この小委員会を設置することにいたしました。有識者の皆様方には高い見地から忌憚のない御意見をいただければと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

○監視指導・麻薬対策課長 ありがとうございました。
 続きまして、事務局の紹介ということになりますが、本日は座席表をもって代えさせていただいております。
 ここからの議事の進行は、あらかじめ部会長から指名をいただいておりますが、委員長であります合田委員にお願いいたします。
 合田委員、以降の議事進行をお願いいたします。

○合田委員長 国立医薬品食品衛生研究所の所長をしております合田です。
 厚生科学審議会の委員をしている関係で委員長に指名されたものと考えております。
 私は、2001年から12年半ほど国立衛研の生薬部長をしておりまして、実際に大麻、その他の麻薬、違法薬物等の研究等に従事しておりました。その意味でこの検討会の委員長をするということについては、これは自分の仕事だなという具合に思ってここに座らせていただいております。これから皆様方の活発な御意見をいただきまして適切な法改正に向かいますよう、御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 それでは、議事次第に従いまして進行させていただきます。
 まず、本日の議題1でございます。監視指導・麻薬対策課から「大麻取締法等の施行状況と課題について」ということでございます。では、説明をよろしくお願いします。

○麻薬対策企画官 監視指導・麻薬対策課の麻薬対策企画官を務めております荻原と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは、資料に沿って御説明をさせていただきたいと思います。資料1を御覧いただければと思います。資料は大部になっておりますので、なるべくかいつまんで御説明できればと思っております。
 まず、大麻規制検討の経緯というのが1番にございますが、3ページでございます。現行法におきます大麻取締法の概要についてというところでございまして、法の中で大麻の定義を規定しまして、大麻取扱者を免許制として、大麻の取扱いについて規制を課している法体系でございます。基本的に大麻の用途は学術研究及び繊維・種子の採取に限定してございまして、いわゆる部位規制と言われる規制を課してございます。赤い部分が規制対象。花穂とか葉・未成熟の茎、成熟した茎から分離した樹脂が現行法では規制対象となっておりまして、逆に規制対象外というのは青い部分、種子及び成熟した茎(樹脂除く)ということとなってございます。
 法の定義、1条にございますが、こちらのとおりでございまして、法制定当時はともかく、その後、成分に関する研究も進みまして、主な成分としまして、黄色い枠、テトラヒドロカンナビノール、いわゆるTHCでございますが、幻覚等の精神作用を示す成分でございます。CBD、カンナビジオールという成分もございまして、こちらは物質としては規制をされていないということでございます。
 4ページ目は、大麻に関する整理についてでございます。先ほど申し上げました大麻取締法におきましては、いわゆる大麻草、天然由来の大麻について規制を課している法体系でございまして、一方で、THCについても、化学合成由来のものについては麻薬及び向精神薬取締法のほうで規制を課してございます。いわゆる麻向法と呼ばれる法律でございますが、こちらは原則として成分規制を課しまして、麻薬としての成分を法律の中で定めて、そして規制を課していくという体系になってございます。
 5ページ目は、これまでの主な大麻取締法の改正についてまとめてございます。昭和23年、終戦直後に法律自体は公布・施行されてございます。後ほど議論になります医薬品の施用と、施用のための公布については、この法制定当時から禁止をされているということでございまして、その後、昭和28年に大麻の種子を取り締まり対象から除外いたしました。それ以外に、免許業務について都道府県知事に委任をするといった改正をしてございます。
 また、昭和38年に大麻から製造された医薬品の施用を受けることを禁止したほか、罰則の法定刑もこのときに、麻取法と同時改正だったのですが、引上げを行っています。
 その後、平成2年、3年とそれぞれ必要な法改正を行って、現在に至ると。基本的な法体系そのものは、昭和23年に制定された当時からそこまで大きく変わっていないというのが現状だと認識してございます。
 6ページからが大麻をめぐる国内外の情勢と、そして先ほど局長の鎌田の御挨拶にもございましたが、昨年検討会のほうで御議論いただいた主な内容についてまとめてございます。
 国内における情勢ということで申し上げますと、マル2にございますが、大麻事犯は、令和2年の検挙人員は7年連続で増加して5,260人となり、過去最多を更新している。特に30歳未満の方が65%を占めるということで、若年層を中心とした大麻乱用の拡大が顕著となっているといった国内における情勢があること。
 国外における情勢としましては、エピディオレックスと言われるカンナビジオールを主成分とする経口液剤が開発されまして、既に承認・使用されている国が広がりつつある。そういったこともあり、国連麻薬委員会のほうで1961年の麻薬単一条約における大麻の規制カテゴリーを変更するということが可決されてございます。
 そういったものも踏まえまして、昨年8回にわたりました検討会のほうで御議論いただきまして、その結果として、7ページ下半分ほどに4つ矢印がございます。方向感として、大麻草の部位による規制から成分に着目した規制への見直し、大麻から製造された医薬品の施用に関する見直し、大麻の「使用」に対する罰則の導入と再乱用防止と社会復帰支援の推進。これらが主な大きな論点としまして方向性が示されたというところでございます。
 8ページ目はその詳細ですので、省略させていただきます。
 9ページ目以降が薬物対策の現状と課題ということでまとめてございます。
 10ページ、11ページに現状の薬物規制に関する法律について、表としてまとめてございます。各法に基づきまして対象となる薬物を規定しまして、必要な規制を課しているという整理になってございます。大麻については、化学合成由来の成分については麻向法のほうで定義し、かつ規制を課していますが、いわゆる大麻草及びその製品に関しては、大麻取締法のほうで規制を課しているという形になってございます。
 麻薬4法の比較でございます。それぞれに規制の対象とか免許の対象となっているものについて、表としてまとめてございますが、こちらは後ほど御覧いただければと思います。真ん中のほうに大麻取締法がございますが、特徴としましては、栽培に関する免許と研究者に関する免許。大まかに言えばこの2点だけが免許制となっておりまして、麻向法におきます製造等とか流通といったものについては基本的には前提としないということもありまして、ここは空白になっている。それが大きな特徴となってございます。
 こちらのほうはその免許の対象の一覧でございまして、省略させていただきます。
 13ページ目以降が乱用薬物の種類・作用についてでございます。それぞれどういった作用があるのかというのと種類についてまとめた表でございまして、大麻というのはこちらにございます。こちらについては逐一御説明は省略させていただきます。
 15ページのほうに大麻がございまして、有害成分であるTHCが脳内のカンナビノイド受容体に結合しまして神経回路を阻害するということでございます。現状としましては、乱用されている大麻には乾燥大麻がこれまで最も多いというものでございましたが、それ以外にも大麻リキッドとか大麻ワックス、ブタンハニーオイルとかそういったものがあろうかと思いますが、もしくは大麻クッキー、大麻チョコレートなど多岐にわたっているというのが現状であると認識してございます。
 ここは少し飛ばさせていただきます。
 19ページに「乱用薬物の種類とその影響について」という表をまとめてございます。中ほどに大麻がございまして、精神依存、身体依存、耐性、催幻覚、精神毒性、それぞれについてこういった影響が認められるということでございます。あへんに基づくヘロインとかモルヒネのほうはかなり強い影響がございますが、大麻はそこまでは至らないものの、そういった影響が出るといったことをまとめてございます。
 一方で、薬物事犯全体の状況についてというのが20ページ以降にございます。薬物事犯全体の検挙人員ですが、過去10年、おおむね1万4000人前後で推移していますが、令和2年に関しましては1万4567人ということで、過去10年で最多を記録してございます。中でも大麻事犯の検挙人員につきましては7年連続で増加しておりまして、令和2年には初めて5,000人を超えまして、過去最多を更新してございます。
 麻薬事犯については、平成20年以降13年ぶりに600人を超えまして、令和2年には過去10年で最多というところでございますが、全体の推移から見ると、大麻の伸びが顕著であると見てとれると思っています。
 品目別の検挙人員が21ページにございますが、赤い線が大麻事犯全体でございますが、5,260人。その内訳としまして、乾燥大麻が多数を占めてございまして、4,500人以上となっていますが、液体大麻が令和2年に関しましては急増しまして、平成30年頃まではおおむね10人前後を推移していたのですが、令和元年になりまして43人、令和2年に至っては195人ということで、急速に増加してきたというのが出ていると思っています。
 22ページ、薬物押収量についてでございます。これも年によって変動がございます。乾燥大麻の押収量に関して申し上げますと、令和2年に関しては前年より減少しまして約300kgという状況でございます。量としては、近年で言いますと300kg前後を推移している。令和元年に関しましては400kgを超えているという状況だったと見ています。
 年齢別の検挙人員の推移については23ページでございます。大麻についてですが、30歳未満の方で見ますと、平成26年との比較では5.3倍。20歳未満でいきますと、平成26年との比較では11.2倍というところで、若年層に関しては割合が多いというのもそうですが、伸びとしても大幅に伸びているということが見てとれると思います。全体で言いますと、平成26年との比較ではおよそ3倍程度なのですが、30歳未満、20歳未満に関しては、それをはるかに上回る伸びを見せている状況かと思っています。
 薬物密輸入事犯におきます検挙人員の推移というのがございますが、大麻についてはおおよそ3割前後というところで、事犯としては覚醒剤が一番多いというのが長年の傾向でございますが、大麻のほうも3割を占めているという状況でございます。
 25ページ目以降が生涯経験率の比較でございます。25ページの資料はG7におけます違法薬物の生涯経験率の比較でございまして、各国とも大麻の生涯経験率が最も高いという傾向は同様でございます。一方で、日本におけます違法薬物の生涯経験率は、そもそも諸外国と比較してかなり低いということが言えるかと思います。なおかつ、うち大麻に関しましては、欧米で見ますと大体20~40%台を記録してございますが、日本では1.4%というところで、これらの諸国と比較しますと圧倒的に低いということが言えると思っています。
 26ページで国内における生涯経験率についてまとめてございます。大麻に関して申し上げますと、生涯経験率としましては、覚醒剤、コカイン、危険ドラッグと比べまして最も高いという状況でございまして、令和3年、最も新しい数字で見ますと、1.4%でございます。過去2回、平成29年、令和元年では、1.4%、1.8%というところで推移していましたが、令和3年に関しても1.4%というところで、他の薬物に比べまして高く、覚醒剤と比べても5倍程度ということになっています。そういったところから生涯経験者数の推計を出しますと約128万人というところで、ニーズとしてはかなり多いというのが推計値としては出てきていると思っています。
 27ページが大麻の使用罪に対する認識の調査でございます。警察庁さんのほうで調査を実施していただいてございますが、令和元年、令和2年に大麻の単純所持で検挙された人から使用罪についての認識を調査したものでございます。「大麻取締法において使用罪が規定されていないということを認識していた」というのは、令和元年、令和2年、いずれも70~80%程度。うち「知っていた」と回答した人に対する調査としてみますと、そもそも「大麻の使用罪が規定されていないということと大麻を使用したこととの関係」で見ますと、一番多いのは、「禁止されているか否かにかかわらず、大麻法を使用した」というのが6~7割。大体70%前後になっています。一方で、「大麻の使用に対するハードルが下がった」「大麻を使用する理由となった」と回答した人の割合で見ますと、20%台を記録しているというところでございます。なので、大麻の使用がないということは、使用に対するハードルを下げる要因にはなっているというふうにも見てとれるかと思います。
 28ページ目は、大麻(THC)の有害作用についてでございます。急性、慢性それぞれで精神作用、身体作用について表としてまとめてございます。こちらの表を御覧いただきますと、それぞれにどういった作用をもたらすかというのがございまして、急性の作用で申し上げますと、不安感、恐怖感とかパニック発作といったものもありますし、身体作用でいけば、眠気とか知覚の変容といったものもあるというところで、自動車運転への影響とか、運動失調と判断力の障害を引き起こす危険性があるとまとめられます。
 慢性のほうで見てみますと、成人期以降の乱用と青年期からの乱用それぞれございまして、特に青年期からの乱用に関しては、より強い精神依存の形成が作用としてあり得るといったところもございまして、精神・身体依存の形成とか精神・記憶・認知機能障害を引き起こす危険性も出てくるということで、大麻の乱用によります重篤な健康被害の発生が懸念されるというところでまとめられるかと思っています。
 29ページがWHOによります悪影響についてでございますが、先ほど御紹介した内容と傾向としては同様かと認識しています。
 30ページは、カンナビノイドにつきましてまとめてございます。大麻草には約100種類以上のカンナビノイドが含まれているというところで、先ほど御紹介したTHCとかCBDといったものもその一種でございます。いずれも1960年代以降に化学構造が判明してきというところでございますが、THCに関しましては幾つか異性体がございますが、特にΔ9-THCとΔ8-THCが規制対象としては割としっかりかかっているというところでございまして、大麻取締法で規制される大麻に含まれるTHCというところで、この両者が幻覚作用等の中枢作用が強く、活性本体として位置づけられているということかと認識しています。
 CBDに関しては、いわゆる幻覚作用は有さないというところでございますが、抗てんかん作用とか抗不安作用などを有しまして、比較的毒性が低いとされております。特に一部治療薬として利用しているといったところも見られます。
 国際条約上の位置づけのところを見てみたいと思っています。
 31ページが国際機関の構成でございまして、真ん中にありますCNDと言われる麻薬委員会が単一条約のほうのまとめをしまして、執行しているといったところでございまして、基本的にはWHOのほうからの勧告などを受けて、条約に関しての審議などを行うといったところでございます。
 一方で、国際麻薬統制委員会(INCB)は条約の履行を監視する機関という位置づけで、必要な助言を麻薬委員会のほうにするといった位置づけでございます。
 32ページで国際条約と国内法の関係についてまとめてございます。それぞれ幾つか条約がございますが、対象となる物質、そして国内法でどう対応しているのかというところでございます。大麻に関して申し上げますと、先ほど出てきました麻薬単一条約のほうで大麻が規制対象物質として位置づけられてございまして、それを大麻取締法のほうで対応しているといった形になります。
 国際条約における薬物の規制について。これは単一条約改正前の整理でございまして、もともと大麻はスケジュールIVというところで位置づけられてございまして、スケジュールIの中でも、特に医療上の有用性がないという位置づけのスケジュールIVが従来、改正前の規制対象の位置づけとしてはあったと思っています。
 34ページ目以降ですが、医療上の有用性について、一部先ほど御紹介したような、CBDを主成分としたような医薬品が出てきているといったこともあり、スケジュールIとスケジュールIVというカテゴリーの中で規制をされていますが、特に危険で、医療用途がない物質という位置づけについては外すというのがWHOの勧告でございまして、こちらが可決をされたというところでございます。その結果としまして、スケジュールIとしての規制のカテゴリー上は変わらないのですけれども、医療上の有用性がないという位置づけは変わりまして、スケジュールIのほうに移行していったというところでございます。
 36ページがいわゆる大麻から製造された医薬品についてでございます。エピディオレックスと言いまして、GWファーマシューティカルズ社が開発した大麻草を原料としたCBDを主成分とする経口液剤でございます。レノックス・ガストー症候群とかドラベ症候群の治療薬として承認をされてございます。G7で言うと、日本以外の諸国でもう既に承認をされているという位置づけでございます。
 日本の状況で見ますと、大麻取締法に基づきまして、大麻由来の医薬品については、施用、受施用が禁止されてございます。
 一方で、治験については現行法でも可能という位置づけでございます。現に治験について現在申請がなされているという状況かと認識しています。
 37ページが大麻由来医薬品の規制状況でございます。G7諸国についてまとめてございますが、日本におきましては、医療目的での大麻使用と嗜好目的での大麻使用、いずれも違法になっている。医療目的での大麻使用を国として違法としているのは日本とアメリカ。ただし、アメリカについては、州単位ではかなりの州が合法化しているといった位置づけかと思っています。それ以外の国については、医療目的については合法としている。実際に承認された大麻由来医薬品についても数種類あるという状況でございます。
 嗜好目的に関しましては、カナダ以外は基本は違法としています。ただし、アメリカでは一部の州で合法化している州もあるというふうに整理しています。カナダにおきましては嗜好目的で、一定の条件下で大麻使用を認めるという位置づけになっています。
 38ページですが、医療用途と科学用途で生産される大麻草の世界的な動向についてまとめてございます。基本的に2011年以降に大麻草を医療用途とか科学的研究用途で使用するという国が増えている状況でして、その中でも特にイギリス、カナダが生産量としては多いという状況でございます。先ほどのエピディオレックスを生産しているGWファーマシューティカルズ社はイギリスが拠点ということでございまして、生産量としては多いという状況でございます。
 日本においては、現状そういった栽培は認められてございません。
 39ページは少し資料の中身が変わりますが、大麻草の利用用途についてでございます。大麻は非常に多くの用途があります。衣・食・住、医療・エネルギーなど幅広く活用されていまして、伝統的には繊維利用。しめ縄といったものも有名でございますが、そういった利用方法もございましたが、それに加えまして、近年、食品としての利用、バイオマスプラスチックとしての活用、そういったものも広がりつつあるというところだと思っています。
 40ページ、新たな産業利用についてというところでございますが、欧州の自動車メーカーではヘンプ・プラスチックを活用しましてドアパネルといった内装材の採用が広がっている。バイオマスプラスチックにつきましては、一般的には植物由来の原料を使用してつくられた素材でございまして、いわゆるCO2、二酸化炭素の量をある程度相殺することが可能であるとされてございます。そういったこともありまして、欧州の自動車メーカーを中心に、そういったヘンプ・プラスチックを使用した内装材の採用が広がっているといった状況もございます。
 41ページは、繊維などの用途例でございますが、これはしめ縄とか、伝統的には繊維利用。様々に活用されてきた。
 もう一つ、CBDの製品でございます。アメリカ、欧州におきまして様々な種類のCBD製品が流通してございまして、我が国にも輸入され、食品、化粧品として流通しているという状況ございます。
 43ページでございます。CBD製品は、現行は全て輸入品となってございます。輸入に当たりましては、もともと大麻に非該当であるといったところを確認するというのが前提となっています。通関の際に大麻非該当性確認というのを関東信越厚生局麻取部において実施しまして、こちらで非該当であるということを確認して輸入をしていて、かつ流通につなげていただくという位置づけになっています。ただし、一部THC成分が検出されるといった事例もございます。そういったものについては大麻である疑いが生じるといったところでございまして、44ページから45ページに過去回収について実施した例を挙げてございます。
 46ページは、規制対象とする大麻草の品種でございます。基本的に現行法では「カンナビス・サティバ・エル」ということで位置づけでございますが、大麻草は、植物分類上は基本的に一属一種と考えられておりまして、こちらを使用することが妥当であるというのは、研究結果の中であるということを御紹介してございます。
 規制対象とする大麻草の品種が47ページにございますが、大麻取締法におきまして、大麻草は「カンナビス・サティバ・エル」ということで位置づけられてございまして、それ以外の麻薬単一条約上の位置づけとか、過去の裁判判例上の整理といったものもございます。基本的に判例の中で、いずれも大麻は一属一種であるというふうに判示していると認識しています。
 48ページは、カンナビノイド成分と種類と規制状況でございます。これは先ほど御紹介したとおりで、繰り返しになりますので省略させていただきますが、様々な種類があるといったところでございます。
 49ページ目のほうに危険ドラッグ対策と指定薬物指定について、図にまとめてございます。有害性と有害性立証の程度といったところで、いわゆる医薬品医療機器等法による規制である危険ドラッグもしくは指定薬物といった位置づけとか、麻向法に基づく麻薬、それぞれの位置づけを整理してございます。
 50ページは、先般指定されましたが、カンナビノイド系の指定薬物の指定推移についてまとめています。平成24年に包括指定をされた関係で、ここで一気に激増していますが、令和3年で892種類でございます。指定薬物全体で2,405物質ございますが、うち3分の1強がカンナビノイド系の指定薬物となってございます。ただ、直近で申し上げますと、令和4年3月7日に公布いたしました。これは表としては見にくいので申し訳ないのですが、HHCとか言われているものなどについて指定したといったところでございます。
 ここは少し省略させていただきます。
 一方で、53ページは「薬物犯罪の主な法定刑の一覧について」という表でございます。これは昨年検討会のほうで御議論いただいた際に出させていただいているかと思いますが、現行各法におきます規制対象である行為と、それぞれについて法定刑をまとめたものでございまして、大麻に関しましては、施用の部分、オレンジで枠を囲ってありますが、現行はないといった状況でございます。
 それぞれ麻向法におきます各物質については施用、使用についてございますが、大麻取締法においてはないと。先ほど申し上げました化学合成由来のTHCに関しては、こちらのほうでは規定はされているのだけれども、大麻草由来については使用罪がないといった状況でございます。
 54ページ目は「国際的な大麻の規制状況について」といった表になっています。医療目的での大麻使用に関する規制として見てみますと、かなり多くの国で合法化されているといった状況でして、違法となっている国は日本を含め5か国程度なっています。
 一方で、嗜好目的に関して見ますと、合法となっているのは、調査した国の中ではカナダ、ウルグアイのみということで、その他全ての国では違法となっています。ただし、いわゆる懲役刑のようなものを科さない、反則金のようなもので済ませるといった形での非刑罰化として整理している国というのも、欧州を中心に見られるといった状況でございます。
 少し話が変わりますが、55ページ目以降に麻薬中毒者の医療保護について。これは麻向法の整理でございまして、麻薬中毒者またはその疑いがある者について、基本的にどういった流れになっていくかというのをまとめてございます。精神保健指定医による診察を経まして、その結果として必要という状況であれば、都道府県知事による措置入院がなされるといったところでございます。その結果、医療が提供されまして、退院、社会復帰につなげていくといったものが基本的な流れでございます。
 一方で、この麻薬中毒者制度につきましては、57ページを御覧いただきたいのですが、麻向法に基づきます措置入院といった仕組みもございますが、一方で、精神保健福祉法によります措置入院というのもございます。こちらの中には依存症といったものも対象となるといったところでございまして、そういった意味では、両法による措置入院が可能となっているといった仕組みでございます。
 年間件数で見ていただきますと、これは薬物に限った話ではないのですが、精神のほうで見ますと、年間約7,000件程度ございます。一方で、薬物はこれで全てではなくて、この中で内数という形になると思っています。麻薬中毒者制度に関しましては、年間件数で見ますと、平成20年度以降措置入院の報告はないという状況でございます。
 先ほど御紹介したものですが、58ページ目は薬物中毒者及び措置入院者の年次別推移といったところで、届出件数については、近年は1桁台で推移してございます。措置入院に関しては、平成20年以降発生していないといったところでございます。
 59ページ目は覚醒剤事犯における再犯者率の推移といったところで、全て覚醒剤によるものではございませんが、再犯者の割合が高く、14年連続で増加しておりまして、過去最高の68.6%を令和2年には記録してございます。
 そういったこともございまして、薬物依存症対策の計画について、薬物乱用防止五か年戦略と再犯防止推進計画それぞれの中で薬物依存の人への支援といったところが位置づけられておりまして、関係省庁が連携を取って対策を進めていくといった位置づけになっています。
 話がまた変わりまして、大麻栽培の現状について御紹介したいと思います。大麻栽培免許についてでございますが、大麻取締法上、大麻栽培者になろうとする者は、都道府県知事の免許を受けなければならないとされています。現行法では免許の審査基準については何ら規定がございませんで、都道府県のほうで免許審査を行うに当たっての審査基準を策定していただいて、それに基づいて審査を行っているという状況でございます。
 大麻栽培者の全国分布について、62ページ目、63ページ目で御紹介いたします。令和3年12月31日時点での大麻栽培者は全国で27名。実質的には26名といった状況でございまして、県で見ても北関東から東北と中部地方、九州の一部といったところで、極めて限定的になっているという現状でございます。
 大麻栽培者免許者数と栽培面積の推移でございますが、最新の数字は、栽培面積は令和2年までなので、令和2年になりますが、ピークを記録したのは、栽培免許者数で申し上げますと昭和29年でございまして、3万7000人を超えてございました。栽培面積についても昭和27年頃がピークでございまして、このときには4,900ヘクタールを超えている状況でございました。
 一方で、それ以来、基本的には右肩下がりに下がってございまして、近年では栽培者数もさらに減っておりまして、令和2年で言うと30人で、面積にしても7ヘクタールといったところで、ピーク時に比べますと激減しているという状況でございます。
 64ページ目は大麻の流通規制についてでございます。大麻取扱者は栽培者と研究者という位置づけでございまして、基本的には大麻取扱者でなければ、大麻所持、栽培、譲受け、譲渡し、研究のための使用といったものができないという位置づけでございまして、輸出入も原則してはならないという位置づけになっています。大麻栽培者も大麻を大麻取扱者以外の者に譲り渡してはならないといったところでございまして、流通規制についてはかなり厳しい規制を課しているという状況でございます。
 65ページ目以降が大麻のTHC含有量についてでございます。65ページは大麻草ではなくて、国内で乱用されている乾燥大麻のTHC含有量でございまして、平均値で言うと11.2%という状況でございます。一方、大麻栽培者が栽培する大麻草につきまして、栽培者の協力を得まして収去検査をさせていただきました。これは昨年から今年にかけて行ってございます。
 66ページを御覧いただきますと、総THCの平均値で言いますと、花穂で1.071%、葉で言いますと0.645%。最大平均値で言いますと、花穂で1.5%をちょっと超える数字、葉についても1%を少し超えてございます。最小の平均値で見ますと、花穂で0.6%、葉で0.3%弱といったところでございまして、基本的に乾燥大麻と比べれば平均値で見ても低いという状況でございます。
 駆け足になってしまいましたが、私のほうからは以上でございます。

○合田委員長 御説明どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの監視指導・麻薬対策課からの説明につきまして御意見や御質問等がございましたら、委員の先生方からお願いしたいと思います。どなたか質問等ございますでしょうか。では、橋爪先生、よろしくお願いします。

○橋爪委員 塩野義製薬の橋爪と申します。
 1点、63ページで御質問したいのですけれども、栽培免許者数が激減したというのは社会的な部分なのかどうか。もし分かれば教えていただきたいのですが。

○麻薬対策企画官 お答えいたします。これがあったからこうなりましたというところまではっきりと申し上げるのは難しい部分がありますが、1つ言えるのは、化学繊維の置き換えが進んだといったところがあると思います。従来繊維としての利用が中心であった大麻について、化学繊維の普及とともに、栽培環境は少なくとも悪化したということが言えると思います。
 もう一点は、栽培に関しての免許制度が導入されていまして、それとともに全体としては少なくとも増やす要因にはなっていないというところでございまして、大麻栽培免許者数としては減ってきているといったところかと認識してございます。

○橋爪委員 ありがとうございます。
 それでは、もう一点。今、カンナビノイド成分としてTHCとCBD等いろいろあるのですけれども、そのうちのCBD製品というものが市場には既にかなり出回っていると思うのですが、それについてのエビデンスというか、薬効といったものは何か研究されているのか、全くされていないのか。海外ではされているけれども、日本はそういったデータがないのか。その辺について厚労省としてデータをお持ちでしょうか。

○監視指導・麻薬対策課長 御質問ありがとうございます。
 本日御参加の先生方でお詳しい先生がいらっしゃるかもしれませんが、この薬剤については医薬品の有効成分ということで、先ほどエピディオレックス等の事例を紹介させていただきましたけれども、諸外国ではレノックス・ガストー症候群とかドラベ症候群に対する有効性というものが臨床試験によっても確認されて、承認に至っているということです。ただ、一般的に言われているリラックス効果とか、今、CBD製品が市場で標榜しながら販売されているものについて、明確な医薬品で証明しているような臨床試験に基づく有効性とかそういったものがあるかどうかという点については、まだ十分に確認がされていない。まだ研究の余地がある成分ということだろうと思っております。

○橋爪委員 ありがとうございます。

○合田委員長 どうもありがとうございます。
 先生、よろしいですか。

○橋爪委員 はい。

○合田委員長 では、鈴木先生、お願いします。

○鈴木委員 大麻と交通事故の関係ですが、日本でどの程度大麻に関係した交通事故が起きているのでしょうか。

○監視指導・麻薬対策課長 事務局でございます。
 本日資料がございませんので、そういった数字があるかどうか、こちらのほうでも調べてみたいと思います。

○鈴木委員 この中で増加しているということが出ていたので、その背景がどうなっているかなと思いまして質問させていただきました。

○合田委員長 ありがとうございます。
 ほかにどなたか。どうぞ。

○太田委員 太田でございます。
 今日御説明いただいた資料の66ページに、日本で大麻栽培者が栽培している大麻草のTHCの含有量は、花穂で1%、葉で0.6%ぐらいと示されています。一方、その前のページで、日本で乱用されている乾燥大麻のTHC含有量は11%となっていますが、大麻草として何%ぐらい含んでいれば乱用の危険性がある大麻が作れるのかということが、これまでの科学的知見として分かっているのでしょうか。そのことが大麻栽培者が栽培した大麻草の今後の合理的な管理ということに結びつくと思いますので、お尋ねする次第です。
 私が見たある薬学の研究論文によると、トチギシロの場合には平均的に0.1%ぐらいのTHC含有量となっていて、この含有量ではどんなふうにしても乱用には使えないだろうということが書かれております。ただし、ブタンガスを使って抽出すると、6%以上のTHC成分は抽出できるが、これだけでも乱用しても効果は得られないだろうと書いてありました。果たして大麻草としてどれぐらいの成分を持っていると、そういった乱用の効果、危険性のある大麻関連製品ができるのかということについて、これまで知見が得られていれば、お教えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○合田委員長 事務局は何かお持ちですか。

○監視指導・麻薬対策課長 事務局でございます。
 太田先生から御紹介いただいた論文等がございますが、現状、どこから以上であれば作用がある、どこから以下であれば作用がないという明確な数字があるかどうかというところについては、我々は認識しておりませんが、次回以降の本審議会での議論の中でそういった点も今あるデータの中から御議論いただければと思っております。

○合田委員長 私はもともと天然物化学の研究者だったのですけれども、日本の過去に栽培されているものについては、大麻の薬理活性のことについては日本民族は認識していましたけれども、特にという部分がございました。それは非常に含有量が低いからだと。その辺、栽培種を選択して今のトチギシロという話になっているのだと思いますが、実際に大麻というのは風媒で掛け合いますので、少しでもTHC含量が高い個体があると、そのものに影響を受けて、次世代では現実的には非常に高いのが確率的に出てくる可能性がございます。その辺のところが大麻のコントロールの一番難しいところだという話になっていまして、どのぐらいの含量があるかというのは、実際には分析をしてみないと、天然物ですからわからない。普通天然物は、10倍ぐらいの変異というのは日常的に物事が起こりますので、その辺のところがバラエティーが非常に多いので、単純にはいかないなということを生薬部時代に考えたことがございます。
 花尻先生、何かありますか。

○花尻委員 特に大丈夫です。

○合田委員長 今のお話で、ほかの先生方。関野先生、どうぞ。

○関野委員 濃度の問題は非常に重要なことかと思うのですけれども、「乱用」という言葉に関しましては、「乱用」そのものは、違法なものを使うという意味合いが非常に強くて、それが濃いとか薄いとかということは問題にならないわけです。そこで、1回でも「乱用」になりますよと警告しているわけです。「乱用」という言葉の意味は、日本語として、非常にたくさん使うとか頻度高く使うという解釈をされやすいので誤解があるようです。わざわざリーフレットには「1回でも乱用」とありますので、違法使用という意味に使っているのではないかなと個人的には解釈していまして、この濃度だと乱用に当たるとか、そういう議論は成り立たないのではないかと思っています。

○合田委員長 どうぞ。

○太田委員 私が質問させていただいた趣旨は全くそういうことではございません。何%ぐらい大麻草がTHCを含有していると、そこから薬理効果としてTHCの有害成分が現れてくるような製品がつくれるかということをお聞きしたかったのです。例えば日本で検挙された者が持っていた乾燥大麻が11%ということは、有害な影響が得られるからだと思うのですけれども、こういったものが日本で栽培されている0.6%ぐらい、もしくは1%ぐらいの大麻草からつくれるのかどうかということに関心がありましたのでお尋ねしたのです。要するに、THC成分がかなり低い大麻草であればどうやっても乱用の効果が得られるようなものがつくれないとなると、あまり厳しい規制をして輸送を管理したりする必要もないのではないかなと思いましたので、基本的な情報としてお聞きしたということでございます。

○合田委員長 それは必ずつくれます。濃縮という行為が入りますので、やろうと思えば幾らでもつくれます。僅かでも入っていれば、濃縮しますと必ず活性が出るようになります。
 従来から、日本の麻でも日常的に麻酔いというのがありまして、それは実際には人に対して影響が出ているわけです。普通の植物の状態でそういう状態が出ますので、植物ではなくて、最終的に抽出する、それを使って何かするということになれば、必ず濃縮行為が入りますから、それは十分な活性が出ると思います。

○太田委員 ありがとうございます。

○合田委員長 関野先生。

○関野委員 すみません。質問の意図を間違えて答えてしまいましたけれども、濃度に関しましては、非常に低い濃度でも直接神経系に作用しますといろんな影響があります、神経細胞死がなくても、機能の異常を示唆するようなデータがございます。かなり低い濃度から長期的に投与していますと、細胞死以外で脳機能に影響が出てくるという基礎的な薬理学的なデータがありますので、簡単に濃度とか含有量だけでも決まらないと思っております。

○太田委員 ありがとうございます。

○合田委員長 ありがとうございます。
 ほかに御質問ございますか。橋爪先生、よろしくお願いします。

○橋爪委員 橋爪です。
 先ほど合田先生のほうから麻酔いのお話があったのですが、私は前回の薬物対策の検討会にも出させていただいていたのですが、そのとき厚労省さんからの御発表で、麻酔いという症状は、三十何人かのデータで見たときには実際になかなか起こらなかったということでしたので、今、合田先生がおっしゃった麻酔いというものは、今はもう死語になったのかなと認識をしておりました。

○合田委員長 私が申し上げましたのは、日本の伝統的につくられている大麻で麻酔いがなかったわけではないと言う事です。要するに、大麻というのは、1つの植物個体によって非常に濃度の差がございますので、そのことについて。例えば天然物ですから、どういう遺伝子が強く発現しているかということによって濃度が高くなることがあって、そういうものであるか。あと、人の問題もございますけれども、少なくとも歴史的に日本の大麻の使用者では麻酔いという状況があった。
 ただ、今は完全にコントロールして、種の段階から、トチギシロではTHCについてもともと量がないというものを非常に選択しながら使っています。それから、実際にそのことを意識されて栽培されていますので、今の栽培者の数を考えてみると、非常に少ないですね。そういう状態になっている状態では麻酔いは今ないという話です。

○橋爪委員 承知しました。

○合田委員長 舩田先生、どうぞ。

○舩田委員 舩田でございます。
 66のスライドで、国内で栽培されている大麻の検査をされているのですが、非常に重要なデータだと拝見いたしました。その中でTHCの濃度は示されているのですが、そのほかの成分、CBD等については検査されているかどうか。データがあれば教えていただきたいと思います。
 以上です。

○合田委員長 事務局、ありますか。

○監視指導・麻薬対策課長 次回の議論の際に、委員限りの資料になるかもしれませんけれども提示させていただければと思います。

○舩田委員 ありがとうございます。

○合田委員長 富永先生、お願いします。

○富永委員 日本薬剤師会、富永です。
 私ども薬剤師としての立場から言うと、医療上の有用性の観点から、難治性のてんかん、神村先生も同じ思いだと思うのですけれども、早く法整備をしてお届けしたいという思いがありますが、今、いろいろお聞きしていると、やはりCBDを主成分とした原料の輸入の中にもTHCの混入があると。そして、濃縮すれば、またそれが医療用医薬品の乱用につながるのではないかなという危惧をしております。日本医師会のほうで健康食品の被害対策委員会に入っておりますけれども、最近個人輸入でCBDを含む健康食品。それは医薬品の規制の範疇にありませんので、それが入ってきていて、その中にまたTHCが含まれるという話も聞きますので、そこを安全に使う法整備というのはなかなか難しいものかと思うのですが、今、いろいろお聞きして、これから成分規制とか、どの程度にするのか、どれぐらい含有していてもいいのかという話し合いになるかと思います。皆さん、いかがでしょうか。

○合田委員長 これからそれを議論することになるのだろうと思いますけれども、ただ、医薬品としてコントロールする場合は、医薬品として最終的にどのような条件で保存しなければいけないとか、どういう濃度で最終的にあると。現実的に医薬品として物が承認された場合には、コントロールの下に使用されるので、例えばTHCの量が幾ら以下とかそういうことは当然可能でしょうし、検出されないということもできるのではないかなと思うわけです。ただ、CBDそのものは化学反応でTHCに変わり得ますので、そのことについては何らかの形で考えていかなければいけないだろうと私自身は思います。
 というような私の回答でよろしいですか。

○富永委員 そういうことをお聞きしたかったのです。その辺を念頭に置いて議論をしていったほうがいいのかなと思ったところです。先走りをしてすみません。

○合田委員長 ありがとうございます。
 では、神村先生、よろしくお願いします。

○神村委員 ちょっと違う観点から質問させていただきたいのですけれども、38ページのところです。各国で大分大麻草の生産がされているところもあるということですが、ここでは生産上の管理がきちんと行われているのか。管理する手技があるのかという辺りを御存じであれば伺いたいと思います。

○合田委員長 事務局、これは分かりますか。

監視指導・麻薬対策課長  事務局でございます。
 先ほど御紹介させていただいた38ページの大麻草の主な国における生産ということで、これは医療用途、科学用途での生産ということでございます。ですから、例えば繊維を取るほうの生産国のリストとか、そういうのがあるとすると、これとは違うラインナップになってまいります。その中で、特にイギリスについては、漏れ聞いているところでは、日本で言うところの生薬の栽培等と同じように、医薬品グレードのものをつくるためにかなり徹底した品質管理を行った形での栽培をされているということは聞いてございます。ただ、他の国についてはあまり情報がございません。

○合田委員長 神村先生、今の回答でよろしいですか。

○神村委員 具体性が情報として欠けているかなと思います。実際にそれを日本で適用できるものかどうかという議論になってくるかもしれないと思いましたので、情報をいただきたいと思ったところだったのです。
 以上です。

○監視指導・麻薬対策課長 引き続き情報収集に努めたいと思います。

○合田委員長 医薬品としての用途を認めるという方向性が出た場合でありましても、まず日本で大麻を栽培して、それでつくるという方向性というのはなかなかハードルが高いのではないかなと思います。ただ、現実的な大麻の使用ですから、もしも日本で栽培するとすると、医療用途という方向性はかなり先のことになるのではないかなと思っています。これは私自身の感想です。
 ほかに御質問等ございますか。よろしいですか。どうぞ。

○橋爪委員 橋爪です。
 質問ではないのですが、疑問がございまして、今後大麻系医薬品として、例えばエピディオレックスは大麻由来のCBD製品ということです。それを大取法を改正することで医薬品として使えるようになるといった場合に、現状にあるCBD製品、市場に出回っているものは今、規制を受けていないということになりますから、その辺の整合性を今後取っていく必要があるのかなということで、先ほど合田先生がおっしゃったように、承認上のコントロールで濃度ということが恐らく問題になるのかなと。そこに焦点が絞られていくのかなと思っているのですが、その辺のエビデンスは今後つくっていかないといけないのか、それがないとこの議論は進んでいかないのかという辺りについてはどうなのかなと。先ほど富永先生がその辺のことを聞かれたのかなと思ったのですけれども。

○合田委員長 CBDそのものは、今、化合物で規制がある状態ではないです。ですから、CBD自身がどういう活性があるかということの議論と、医薬品の場合にはそれだけではなくて、現実的にはそれの保存条件等も全部ございます。ですから、そういう方向性は法律が改正されたタイミングで具体的なことを考えるのかもしれませんけれども、そういうことはあろうかと思います。ただ、現行のCBDをどうするかという話は今日の議題ではないのではないかなと考えています。
 では、関野先生。

○関野委員 関野です。
 今の話に関係するかと思うのですが、もしこの医薬品を日本で承認しますということになりますと、CBDそのものが医薬品として使われているものだということで、専ら医薬品とかそういう形での規制みたいなのが適用されるようになりますか。

○麻薬対策企画官 成分規制となった場合、各成分がどういった位置づけになるかというのは、間違いなく今、御指摘いただいたように整理が必要になります。特にCBDについては、一方で医薬品としての主成分になっているというのがございますし、まさに今、承認を受けている医薬品というのがそうなっておりますが、一方で、食品とか様々な用途にも活用されているというところがございまして、現実としていわゆる専ら医のほうで行くのか、それとも非医のほうに入るのかといったところは、今後成分としての位置づけについては必ず議論が必要になってくると思っていますし、逆にそれについて位置づけを明確にしていただきたいといった御要望は各方面からいただいてございますので、それはまず法律上の整理をした上で、その後、成分規制の在り方の具体の中身として議論していく必要があると認識しています。

○関野委員 分かりました。では、順番の問題になっていくということですね。ありがとうございました。

○合田委員長 どうぞ。

○太田委員 2点お伺いしたいのですけれども、1点目は、大麻取締法上で成熟した茎(樹脂除く)は規制の対象外となっています。しかし、前回の検討会でも大麻栽培農家さんが大麻草を収穫をして、そこで乾燥させてしまって、それを運搬しているのだということをお話しされていましたが、成熟した茎を取って、しかもからからに乾燥させて、それから運ぶ。それでも他県に運べないとか、いろいろな厳しい規制があるということでした。これは自治体のほうで規制をしているということなのですが、それを規制する合理的な根拠というのはどこにあるとお考えなのでしょうか。要するに、大麻取締法の全く対象外になってしまっているものを運ぶことすら制限しているということは、どういう理屈に基づいているのでしょうか。これが1点目の質問です。
 もう一つは、次回以降でもし分かればということで教えていただきたいのは、警察がパトロールなどで挙動不審な者を見つけて、任意で尿検査をして、その結果、大麻の陽性反応が出たという場合に、本人から大麻草もリキッドも一切見つからなかったという場合、どういう対応をされていて、そこにどういう問題があるのかということです。これは警察のほうの所管になると思いますけれども、現場でいろいろな御苦労があるのではないかという気もするのですが、もし分かることがあれば教えていただきたいということでございます。

○合田委員長 事務局、よろしいですか。

○麻薬対策企画官 1点目についてでございますが、現状は大麻栽培に関する審査基準の中で、栽培目的というのを審査基準上、各都道府県のほうで定めて、それに基づいて免許を出しているという仕組みだと認識しています。その中では基本的に県内での利用。また、利用も例えば神社のしめ縄に使うとか、そういった利用目的に範囲を定めることで、それ以外にはつくらないでくださいという位置づけにされているということかと思っています。
 そういった意味では、直接的な流通動向ということではないのですが、都道府県としては、その免許の観点から県外への持ち出しはやめていただきたいという取扱いをされているのではないかと考えてございます。
 2点目については、私どもはいわゆる麻取部がございますので、捜査上の取扱いというか、どこまで資料をお出しできるかというのはもう少し考えたいですが、2回目以降のほうで今、御指摘いただいたポイントについて、お答えできる範囲でお答えさせていただきたいと思っております。
 以上です。

○合田委員長 ありがとうございます。
 ほかに御質問等ございますか。よろしいですね。
 それでは、次の論点に入りたいと思います。議題2でございます。議題2につきましては、参考人から御発表いただいて、それから議論をするということになろうかと思います。
 では、松本先生、よろしくお願いいたします。

○松本参考人 皆さん、こんにちは。国立精神・神経医療研究センターの松本と申します。
 私は昨年度のあり方委員会の構成員の一人だったのですが、そのときには私は強く大麻使用罪の創設に反対しまして、それ以来国の会議に呼ばれることはもうないのではないかと思ったのですが、あに図らんや、今回このような参考人という形でお声がけいただきまして、感謝申し上げます。
 前回の構成員のときもそうだったし、今回の委員会もそうなのですが、大麻を使って悩んでいたり、様々な経緯があって病院に来たりしているその本人、人間に会ったことがある委員の方が非常に少ないような気がするのです。新たな規制や法律ができて人権が侵害されるのは人間ですし、そういった人間がどのような生き方をしていて、そしてどのような生き方をしていくのかということに関して情報なしには、この議論は机上の空論になってしまうのではないかという意味で、今回私が話す機会をいただいたことを感謝したいと思います。
 それでは、私の立場から薬物関連障害患者さん、様々な健康被害を呈して医療機関に来られた患者さん、薬物依存症の治療は今、どのような状況になっているのかについて、お話しさせていただければと思います。
 まず、お示ししたいのは、私が前任者の頃から、1987年から全国の入院病床のある精神科医療施設、全部で1,600ぐらいあるのですけれども、そこに2年に1回、調査年の9月から10月の2か月間、入院でも外来でもいいので、薬物で何らかの精神医学的な問題を呈して治療を受けた患者さんの全てのデータを下さいということで、言わば経年的、かつ悉皆的な調査をやっております。薬物関連障害患者さんのモニタリングデータとしては我が国唯一のもので、これまでも様々な薬物施策、政策の企画立案をするときの基礎資料として用いられてきました。
 私自身は2010年からこの調査に関わっております。私自身がやってきたことは、とにかく回収率を上げて、我が国の代表的なデータとして対象の代表性があるような格好にしていくということに努めてまいりました。最近10年ぐらいは8割弱ぐらいの協力率で、かなりの薬物患者さんの特徴を反映しているかと思います。直近のデータは2020年9月から10月に行われたもので、2,733のケースが全国から寄せられまして、本日はそのデータを紹介したいと思います。
 2020年の調査を見てみますと、それぞれの患者さんたち、今回精神科で治療を受けている医学的な問題、この症状におおむね影響を与えている薬物は何か。これを「主たる薬物」と分類しまして、全サンプルに関して「主たる薬物」の分類を円グラフで示したのが、皆さんから向かって左側の円グラフです。ただ、この中には、薬物は長いことやめているのだけれども、後遺症があって、それで治療につながっているという方もいるので、やはりやめられない止まらないというものに絞ってみると、最近1年以内に使用があるということが国際的な診断基準でもとても重要なポイントになります。そこで、1年以内の薬物使用がある患者さんに限って「主たる薬物」ごとの分類をしたものが右側です。
 左側では半数以上が覚醒剤、青い部分ですが、1年以内に限ってみると、それが随分少なくなります。そして、大幅に増えるのが赤い部分。これは睡眠薬や抗不安薬といった処方薬です。紫の部分は市販薬です。ドラッグストア等で簡単に購入できる市販薬です。
 本日テーマとなっている大麻に関しては緑で示してあります。大麻関連精神障害の患者というのは、いるといったらいるのだけれども、そんなに多くないのです。先ほど厚生労働省からの説明でも分かったように、日本の一般国民の中で生涯経験率が最も高い違法薬物は何といっても断トツに大麻です。しかし、薬を使って健康被害を呈して、その治療に来る医療機関においては、大麻は非常に少数であるということをまず認識していただければと思います。
 ちょっと大麻からそれますけれども、紫色で示した市販薬に関して少しだけ追加の話をさせていただければと思います。薬物依存症の臨床の中では、OTC、市販薬は今、非常に問題になっています。年々患者さんが増えておりますし、特に10代に限って見てみると、例えば8年前、2014年において10代の薬物乱用患者さんたちが主に乱用していたのは、脱法ハーブをはじめとした危険ドラッグだったのですが、それが入手できなくなってくるのとちょうど入れ替わりのように増えてきたのが紫の部分、大麻なのです。直近の調査、2020年の段階では10代の患者さんのおよそ6割が市販薬です。これは決して脱法ハーブが手に入らなくなったから市販薬を代わりに使っているわけではありません。
 右側の縦の棒グラフを見ていただくと分かるように、かつて脱法ハーブを使った子たちは男の子がほとんどで、学校は途中でドロップアウトしている。そして非行歴がある。ところが、今、市販薬を使っている子たちは女の子が多くて、学校在籍中か、きちんと卒業している。そして非行歴は全くない。その代わり適応障害や自閉スペクトラム症のようなメンタルヘルスの問題を抱えていて、様々な生きづらさ、あるいは心の痛みに対する対処として薬を使っているというところがあります。
 最も多く乱用されているのは市販のせき止め薬です。この会議なのであえて商品名を出してしまおうと思いますが、ブロン錠です。ブロンの錠剤。この中にはコデインという麻薬、メチルエフェドリンという覚醒剤原料が少量入っております。規制対象薬物。アッパー系とダウナー系が両方入っている。もちろん、厚生労働省が平成26年、乱用依存のおそれのある薬品ということで、ブロンの錠剤等を買うときには、お客さん1人1瓶までというふうに薬局に協力を求めています。実際ブロンを買ったりすると、薬剤師さんが出てきていろんな指導を受けたりするのですけれども、同じ成分が入っていて、かつもっと安くて、お得で、薬剤師さんからの注意を受けない薬があります。パブロンゴールドです。しかも安くて、1円当たりのメチルエフェドリとコデインの量が多いので、どんどんそちらのほうに行きます。
 ただ、パブロンゴールドの場合にはアセトアミノフェン。皆さん、コロナのワクチンを打った後に服用していたカロナールですが、これが入っていて、これを1日1瓶とかのペースで飲んでしまうと、あっという間に重篤な肝機能障害が起きます。依存症臨床で一番健康被害が深刻なのは断トツにアルコールなのですが、アルコールを除くと、市販薬の10代の子たちの健康被害は本当に目が離せないです。
 最近では市販薬のオーバードーズで亡くなる事件なども出ています。時々警察のほうから捜査協力を求められて我々も協力するのですけれども、いろんな市販薬を飲んでいるのですが、その中でいろんなものを併せ飲んだときに濃度が上がりやすいのは、1つはジフェンヒドラミンであり、もう一つはデキストロメトルファンです。最近ではブロン、パブロンが買いづらくなったということもあって、専らデキストロメトルファンを乱用している。今、歌舞伎町などのドラッグストアでは品切れ続出の状態。しかも、これは例えばストロング系と言われるアルコール飲料のダブルグレープフルーツとかで、かんきつ系の果汁が入っているものだと代謝が阻害されるのです。一気に血中濃度が上がって、セロトニン症候群を呈して幻覚が出たり、自発呼吸が止まったりするという案件が臨床現場でも出ているのです。そういう意味では、市販薬は非常に重要だと思っています。
 しかし、今日は大麻の話なので、この後、大麻の話をします。大麻の患者さんたち、あるいは使用者の特徴を比較するときには、我が国伝統の違法薬物使用者、使用患者さんである覚醒剤との比較が適切かと思います。皆さんにお示ししたグラフは、青が覚醒剤、緑が大麻という格好で示してあります。その性差、性構成には差がないのですが、年代、覚醒剤を使う人たちというのは30代、40代、50代ですけれども、大麻の患者さんたちは20代、30代ということで、10歳ぐらい年齢層が若いということが分かるかと思います。
 学歴の高い方たちは、大麻が多いです。高学歴の方たちが多いです。このデータでは有意差は出ていませんが、大麻の方たちは仕事を持っている方たちも多いです。それから、薬物関連の犯罪で捕まったり、刑務所に服役した経験のある方は、覚醒剤に比べると大麻の方たちのほうが圧倒的に少ないです。
 そして、医学的にはこれが一番大事なのですが、ICD-10というWHOの診断基準で、F1というのは物質関連障害の診断カテゴリーを示すのですが、その中で依存症候群、つまり、依存症、自分の意思ではなかなかやめられない止まらないの状態にあると診断される方は、覚醒剤に比べると大麻は少ないということが病院調査のデータから分かっています。
 もう一つ、薬物関連の診断とは別に、依存症とは別の精神疾患、独立して存在する併存精神疾患について、覚醒剤と大麻を比較してみると、大麻の患者さんたちはもともと統合失調症があって、それで大麻を使ってさらに統合失調症の症状が悪くなるということが有意に多いということが分かっています。
 治療の状況ですが、精神科の治療の状況について大きな差はないのですけれども、とにかく大事なのは、主治医の診察とは別に、SMARPPのような依存症集団療法とか、自助グループとか、ダルクとか、精神保健福祉センターのグループ療法とか、このようなプログラムを利用していますかと聞いてみると、覚醒剤の人たちに比べると少ないのです。少ないのは、治療薬がないのだという言い方もできるのですが、そもそも依存症に該当している人たちが少ないので、ニーズが少ない可能性が高いのかなと思います。
 今度は医療ではなく地域のほうで保護観察対象者、私どもは2017年からVoice Bridges Projectと申しまして、例えば刑務所を仮釈放になって、あるいは執行猶予になったのだけれども保護観察がついて、保護観察所につながってくる方たちのコホート調査をしています。ただコホート調査をするだけではなく、本人から同意が取られた場合は、地域の精神保健福祉センターからいろんな電話をかけていろんな情報収集をします。そのときに本人が困り事があったり、悩み事があったら、守秘義務をきちんと守った格好で本人の相談支援をしていく。こういう試みを全国の20か所の精神保健福祉センターで展開しています。
 昨年の10月からは刑務所出所前の釈放前教育とか、あるいは更生保護委員会の調査面接のときにもこのプロジェクトの情報提供をすることにしておりますし、今年度からは16歳から18歳という少年も対象にしています。少年たちが使える自助グループやダルクというのは、なかなか少年たちには難しくて、そこで精神保健福祉センターが個別に本人や御家族の相談に乗るという仕組みをやっています。
 このプロジェクトで集められた覚醒剤による保護観察対象者と大麻使用に関連する保護観察対象者を比較しています。そうすると、先ほどの病院の調査とそれほど変わらない結果が出てきます。やはり性差はないけれども、大麻のほうが年齢が若かったり、大麻のほうが仕事に就いている人が圧倒的に多かったり、年齢が若いせいだと思いますけれども、未婚の方たちも多いです。そして犯罪歴も少ないです。逮捕や服役の経験のない方たちも多いです。
 プログラムの参加状況は、これは保護観察所のプログラムなので、差がないのは当然と言えば当然なのですけれども、DAST-20という薬物問題の重症度を測定する尺度、この得点が大麻の方たちは非常に低得点で、覚醒剤に比べると薬物問題としての重症度が低いということが分かるかと思います。
 これは我々のVoice Bridges Projectの累積断薬率です。3年間追跡していくのですが、その中でやめ続けている人がどういうふうに減っていくのかという生存分析をしたものです。これは成績が不気味なほどいいのですけれども、1年で大体1割ぐらいの方たちが再使用していて、3年間のうちで何らかの形で1回でも再使用する方は2割弱ぐらいです。だから、8割はやめ続けているという不気味なほどいいデータなのですが、ただ、この3年間の追跡を最後まで行き切る人というのが、大麻と覚醒剤で比較してみると結構差があるのです。大麻の方たちはこの追跡調査、コホート調査からドロップアウトしてしまうことが多いです。だから、おせっかいな電話とか支援の相談、何か困り事があるかという電話を煩わしく感じる方たちが多いのではないかなと思います。
 ここまでのところを少しまとめてみます。ここではあえて「大麻使用者」という言い方をさせていただきます。その人たちの中には患者というべき人もいますし、保護観察対象者もいるので、少し幅広な表現を用いた次第です。そこから分かるのは、覚醒剤を使う人たちと生活背景が異なると。若年で未婚者が多いし、学歴が高くて、仕事を持っている人も多い。犯罪歴がない人も多い。さらに治療や回復支援に関するニーズが乏しいです。依存症未満の人とか薬物問題の重症度が軽い人が多くて、生活障害が軽いので、それほど困っていないということがあります。ただ、医療的に注意しなければいけないのは、一部で統合失調症の方たちもいて、統合失調症の症状を緩和しようとして大麻を使う。それによってかえってこじれてしまう人たちがいるのは、医療機関としては無視できないかなと思います。
 ここまで特徴を述べてきましたけれども、ここから先は私どもがやってきた治療のSMARPPという治療プログラム。これは認知行動療法的な手法を用いたワークブックでグループ療法をするプログラムですが、このプログラムで完全に薬をやめさせるというよりは、薬物依存症の治療で一番重要なのは継続性なのです。途中で再使用しながらでも、諦めずプログラムを継続するということが大事だったのですが、従来の我が国の薬物依存症治療は、再使用すると通報するなどということが行われたりして、結局、治療からの離脱を引き起こしていました。
 だから、あくまでも治療継続を重視するということで、しかも、私が25年前、依存症業界に入ったときには、薬物依存症を診てくれる専門病院は国内で多分4~5か所ぐらいしかないと言われていたのです。それをもっと増やさなければ駄目だということで、いわゆるマニュアルベース、ワークブックベースのプログラムをやってきました。幸いにも2016年4月からは診療報酬の加算対象にもしていただきまして、国内46か所の医療機関、精神保健福祉センターは全国で69か所ありますけれども、そのうちの7割近くにプログラムをやっていただいております。
 このワークブックは何度も何度も改訂を重ねてきたのですが、一番最近行った大規模な改訂は、以前から「マリファナの真実」という大麻の章があったのです。これはいわゆる教科書の丸写しみたいな格好で書いていたのですが、当事者にすごく不評で、要するに、教科書に書いてあることは、めったに生じない極めて希少なケースのことだけが書いてあって、本当に当事者から反発がかなりありました。そんなわけで、もう少しニュートラルなものに変えています。
 こういうプログラムを国内の各地で展開する中で、全国規模の医療機関の中で大きな変化があります。私どもが行ってきた全国の病院調査です。回収率は10年くらい前から7割を超えて安定しておりますが、毎回毎回調査のたびに報告される患者さんの数が増えています。薬物患者さんの数が増えているということは、薬物問題が深刻化していることを意味しません。というのは、そのうち1年以内に薬物を使用している人、このグラフでは赤い線で示してありますが、それがずっと一定なのです。これは何を意味しているかというと、医療のアクセスが以前よりも向上していて、そして医療の中でぼちぼちやめている人が出ているということなのです。その一つのきっかけとして2016年にSMARPPが診療報酬の対象となったということが挙げられるかもしれません。
 このことを覚醒剤関連の患者さんだけに特化して、さらに毎回の調査の回収率の微妙な違いとか、患者さんたちの年代の違いとかを全て調整して統計学的に行った論文があります。これは、最近20年の我が国の覚醒剤依存症患者さんの変化について、最近私どもの研究チームで分析した論文で、もうすぐJournal of Psychoactive Drugsという国際誌で掲載されるのですが、それによればいくつかの顕著な変化が明らかになっています。この20年間増加したものとしては、医療へのアクセスが促進されて、治療中の患者さんが増えたということ、そして、治療を受けながら断薬をしている方たちということです。一方、減ったのは、幻覚や妄想のような精神病症状を呈する方たちが減りました。つまり、重症化が防がれているということ。それから、前は覚醒剤をどこで入手したということを担当医に隠す患者さんが多かったのですけれども、隠す患者さんが減っていて、結構正直な立場で治療を受けるようになっている。それは治療の環境がかなり改善されてきたというふうに言えるのかなと思います。
 私が所属しているNCNP、国立精神・神経医療研究センターでも年々薬物の新患、患者さんが増えていますし、SMARPPに参加する延べ患者数もどんどん増えております。とはいっても、その大半は覚醒剤です。大麻の方たちもいるにはいるのですけれども、全体からするとかなり限られたポピュレーションです。そして、我々の病院で大麻の方と覚醒剤の患者さんたちを比較してみると何が違うかというと、まず大麻の方たちは依存症に該当する方たちが少なくて、逮捕をきっかけに、保釈中に、公判までの間頑張りましたということを示すためにプログラムに参加している方たちが多いような気がします。
 SMARPPに参加している割合というのは覚醒剤と差がないのですが、SMARPPの重要なアウトカムの一つとして、ほかの社会資源、自助グループとかダルクとか精神保健福祉センターのプログラムにつながるということが大事なのですけれども、覚醒剤の人たちに比べると、大麻の方たちはつながっていません。それは彼らのやる気がないからではなくて、依存症の水準以上かどうかという重症度と非常に関係していて、ニーズを反映した結果ではないかと思っています。
 これが最後のスライドになるのですけれども、こういったことを踏まえて、今後大麻を規制する上で考慮しなければいけないことがあるかと思っています。まず一つは犯罪化の問題です。少年法の対象年齢が引き下げられた現在、ある意味で学歴が高くて、社会的な能力の高い若者たちが前科者になってしまうことの社会的な損失について考えてみる必要があるでしょう。しかも、少子化が進んでいて、自殺対策が進む中で、自殺者総数は激減してはいるものの、児童生徒に関しては一貫して増え続けていて、かつコロナ禍に入ってさらに増えているのです。このような状況の中で、若者たちをターゲットとした法規制というものをいかが思われるかということは問いかけたいと思います。
 むしろ刑罰でなくて、逮捕されたことをきっかけに治療や支援につなげればいいではないかという意見もあるでしょう。ただ、国内の薬物依存症治療のエビデンスはほとんど覚醒剤依存症によって出されています。だから、大麻依存症に特化したエビデンスはないのだということです。エビデンスがなくて、そういう仕組みづくりをしてもいいのですかということを言いたいと思います。
 もちろん、依存症未満の方たちに治療を提供していけないというわけではありませんが、ただ、刑罰の代わりに依存症水準未満のいわゆる病気水準でない方たちに対して、例えば強制的に治療を課すことの功罪ということについても、あるいは人権擁護の立場からもちょっと考えてみる必要があるかもしれません。
 私自身が希望しているのはSOSを出しやすい社会づくりです。例えば犯罪化したり、あるいは駄目、絶対みたいな、ある種差別的、排除的な啓発、プロパガンダがもたらすスティグマ化によって、困った人がアクセスしづらい状況になっていないかということ。
 医療機関や相談支援において守秘義務を優先すること自体は、法的にも例えば医師の裁量に任されてはいるのですが、とはいっても公的な相談機関や医療機関の場合には、本当にそれでいいのかという迷いは常にあります。これに関して国のほうがしっかりと保障するということがなければ、安心してSOSを出せないと思います。
 今日はもう申し上げませんけれども、麻薬中毒者届出制度に関してもいろいろ見てみると、人権擁護の立場から、例えば保護観察のような刑事処分に比べても人権の制限が深刻だということは、昨年のあり方委員会でも述べさせていただきました。こんなことをぜひ考慮に入れて、これから先この委員会での議論を進めていただければと思います。
 以上です。

○合田委員長 松本先生、ありがとうございます。
 それでは、ただいまの松本先生の御発表につきまして、御意見や御質問等ございますでしょうか。橋爪先生、どうぞ。

○橋爪委員 松本先生、貴重な御講演ありがとうございます。
 私、前回検討会に出させていただいたときに、先生の書かれた書物もちょっと読ませていただきました。薬物依存治療に非常に御苦労されているということも非常に理解はしたつもりなのですが、先生の今日のお話の中で、大麻はそれほど重症化しない、大きな依存化しない。途中でそういうプログラムをやっても、どちらかというと早く抜けていく方が多い。今回の検討会そのものの発端は何かというと、生涯経験率は大麻のほうが高いということがあると思うのですが、先生は、こんなに高いのはなぜなのか、どんなふうに分析されているかというのを教えていただけますか。

○松本参考人 大麻の生涯経験率がほかの薬物に比べてと。

○橋爪委員 はい。

○松本参考人 御質問ありがとうございます。
 そもそも日本は欧米諸国に比べて薬物の生涯経験率がめちゃくちゃ低いです。その低い状況の中で大麻が最も高いという議論なのです。もちろん、それをさらに少なくするのだと。ゼロコロナではありませんが、ゼロドラッグを目指すのだという考え方も一方であるけれども、ただ、薬物依存臨床から見てみると、大麻よりも先に手をつけるべき問題、取り残されたままになっている問題があるのだということを私は言いたいのです。

○橋爪委員 例えば覚醒剤とか、先生がお話しされた一般市販薬、睡眠薬、向精神薬、アルコールも含められると思うのですが、どちらかというと依存に関わりやすいようなもののある中で、大麻がなぜ生涯経験率がそれだけ高いのかなというのがすごく疑問で、そこがずっともやもやしているのですけれども、先生の知見は何かありますでしょうか。

○松本参考人 多分国際的な影響というのがあると思います。海外の様々な動向や情報が今、ネット社会だから入ってくるというところもあります。
 それから、これはあくまでも私が診察室の中で印象として感じたお話なので、エビデンスではないということを承知の上で聞いてほしいのですが、脱法ハーブ、危険ドラッグの部分が2011年から14年ぐらいまでありました。僕はそれを臨床医としてずっと診ていて、最初のうちは海外で大麻を覚えた人が、日本で捕まらない、大麻によく似たものを使いたいということが動機、乱用者の最初の第一歩だったのです。ただ、規制を強化する中で、だんだん中身がひどくなって、そのユーザーたちがみんな、これなら大麻のほうが安全だねと。脱法ハーブブームで大麻の安全性を自分の実体験をもって経験してしまった。実際脱法ハーブをやめるのにずっと苦労した患者さんが大麻に戻ったら本当に落ち着いてしまって、結局、治療をやめたいと言われて、僕もちょっと戸惑ったのですが、いや、どこにどうするのと言ったら、カナダに移住すると言われるので、そう言われると僕らとしても弱ったなあという感じになってしまいます。
 これはあくまでも個人的な体験なのですけれども、啓発資材において大麻の危険性についていろいろな健康被害が列挙してあります。あるいは先ほど関野先生もおっしゃったように、細胞レベルのいろんな危険性を列挙しています。ただ、使用経験者たちからすると、それが実感を持って、「そうだよね」という形にはなりにくくなっています。だから、国や専門家が出す情報発信と当事者たちの間に乖離が生じていて、我々、治療とか支援というのは当事者と共同しながら、すり合わせをしながらやっていかなければいけない。そこでこんなにも視点が違ってしまっていたら、当事者の心は離れてしまい、支援は成り立たないと思います。

○橋爪委員 理解しました。

○合田委員長 ありがとうございます。
 鈴木先生、お願いします。

○鈴木委員 危険ドラッグの中で半数以上はカンナビノイド系だと思うのです。先生が危険ドラッグと大麻系を分けて統計を取られていますが、その危険ドラッグの中にカンナビノイド系というのはどれぐらい含まれているのでしょうか。

○松本参考人 まず、近年は危険ドラッグで来院する方々が非常にまれになったので、近年はそういうことはあまり考慮していません。そして、乱用がかなりひどかった2012年と14年のときにはいろんな形で調べております。ただ、カチノン系とJWH系がありました。使っているユーザーも正直分からないのです。先にJWH系の包括指定をされた後に、いわゆるハーブ系のものにカチノンが入ってきて、自分たちは大麻類似の効果を期待しているのだけれども、実際は覚醒剤みたいだったと。だから、使っている本人も分からなければ、我々も分からない。そのような状況です。

○合田委員長 ありがとうございます。
 ほかに御質問等ございますか。関野先生、お願いします。

○関野委員 関野です。
 松本先生の御意見をいつも伺っていて、依存に苦しむ方たちの支援に関しては、本当にすばらしい取組をされていると思っています。これと今、大麻におけるカンナビジオールの利用とか、医療目的で使うための法規制、整備の仕方という議論とちょっと整理しないといけないのかなと思ったりしてお話を伺っているところです。基礎研究で細胞レベルでの変化はかなりあるよということは申し上げておりますけれども、それが実感として感じないというのも事実そうなのかなと思っていますが、かといってみんなが自由に使う。これよりも安全だからいいという話ではなくて、まず一歩としては、医薬品としてきちっとした使用、どこかで困っている方に医薬品を届けるということを先に解決して、それから後、法規制のほうですね。一番問題なのは、若者に使用罪とかそういうものができることに対しての危機感を先生はお持ちではないかなとちょっと感じたのですけれども、そこを明確に区別した形での議論を進めれば一つ一つ解決していくのかなとちょっと思ったので、コメントをさせていただきました。

○合田委員長 ありがとうございます。
 それでは、橋爪先生、お願いします。

○橋爪委員 先生の御発表の中で、いわゆる大麻使用者は若い。どちらかというと学歴も高くて有識者が多いというのは、覚醒剤とそういった危険ドラッグなどを使う方々と明らかに何か違う背景を持っていらっしゃるということが有意になっているのでしょうか。

○松本参考人 一定層、かなりの割合でいるのは海外留学経験者なのです。そういう意味では、学歴も大学卒だけではなく、大学院卒とかそういう水準になったりします。

○橋爪委員 承知しました。

○合田委員長 ありがとうございます。
 ほかに御質問等ございますか。ウェブの先生方、よろしいですか。では、神奈川県の小林先生、お願いします。

○小林委員 神奈川県立精神医療センターで依存症の臨床をやっております小林と申します。こちらは外来・病棟と日々アルコール、薬物、ギャンブル等々、依存症の臨床をずっとやっている者ですが、臨床医として現場のお話をさせていただくと、大麻は非常に症状が乏しいのです。大麻単剤で来る方は非常に少ないです。当院でも全体の5%を切るぐらいですので、ほかの薬物、ほとんど覚醒剤と処方薬なのですけれども、そちらの中で他剤で、並行して、昔使ったことがあるとか、たまに使うとかいうぐらいで、大麻単剤で依存症で重症化することはなかなかないです。
 一方で、大麻を使用しているということは、他剤、ほかの薬物へと移行しやすいという傾向がありまして、ゲートウェイドラッグとよく言われていて、そこからさらにほかの薬物の乱用へと進行していくリスクは当然あると考えます。
 最近、当院の研究室で論文を投稿したデータの中からちょっと御紹介しますと、違法薬物群の3年断薬予後は48%ぐらいなのですが、一方で、市販薬、処方薬、違法でない薬物になってくると20%ぐらいに落ちてしまうのです。そういった意味では、1つの要因として、違法であることによって何かしら生活に困り感が生じて、それがやめ続ける動機づけの一つにはなっているということは、日々の診察室の臨床現場、あるいは病棟での臨床現場でも患者さんたちの話の中に出てくることはあります。
 一方で、刑事罰化に伴うスティグマという問題がまさにありまして、日本の場合には前科者が社会的に排除されてしまうという要素があります。そういった意味では、我々は違法でない薬物の治療においては非常に困り感が乏しい。何をやったって別に捕まるわけではないし、市販薬とか処方薬というのはそういった問題があって、その中でオーバードーズで亡くなってしまう患者さんもいる。できるだけ早く何らかの形で患者さんに困り感を感じてもらって、早く生活のトラブルを感じて、このままの生き方、薬物を使いながらの生活では無理なのではないかと患者さんに感じてもらうための一つの要素として、何らかの司法の強制力があってもいいのではないか。
 実際につい昨日、覚醒剤の患者さんで逮捕されたことがきっかけで考えが変わるという患者さんもいたのです。なので、全てとは言いませんけれども、刑事罰とは違った形で患者さんの生活に何かしらの混乱感が生じるようなこと。患者さんは順調に進んでいると勘違いしているそのライフスタイルを1回止めて、そして困り感を感じてもらうような法的な対応は、日本では考えてもいいのではないかなというのが一臨床医としての実感でもあります。
 これが全面的に何の法的なサンクションもないということになってしまうと、事実上、処方薬や市販薬と同じ扱いということになってしまって、我々がこの患者さんを動機づけていく。依存症の重症度の多い少ないはあるとしても、何らかの形で支援が必要だからこそそういった乱用に陥っているわけで、その患者さんのアセスメントをして、抱えている問題に応じたいろんなレベルの支援を考えていく上では、ただただ患者さんが心身共に生活が破綻していくのを眺めていくしかないという現状の市販薬や処方薬のことを考えると。しかも、今、日本国内において大麻の乱用率が著しく低いということを考えると、今の国民感情としても全面的に無罪化するということに関しては抵抗があるのではないかと思います。
 臨床現場の我々としても、何らかの形でそういった強制力が医療と連携する形で関わっていただけると、より患者さんの困り感が高まって、何らかの動機づけにつながって、例えば大麻で逮捕されたことをきっかけに、患者さんの様々な生きづらさや問題点が解決する契機になればいいのではないかなと考えているので、私は全面的に刑事罰化も全面的に無罪化も臨床の現場からするとちょっと極端だなと考えておりまして、何らかの形で患者さんのスティグマ化を防ぎつつも、患者さんの困り感を高めるような関わり方ができないかということをぜひ問題提起していきたいと考えております。
 以上です。

○合田委員長 小林先生、どうもありがとうございます。
 ほかにどなたかいらっしゃいますか。よろしいですか。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。次は議題3でございまして、監視指導・麻薬対策課から「大麻取締法等の改正に向けた論点について」の説明をお願いいたします。

○麻薬対策企画官 それでは、資料3「大麻取締法等の改正に向けた論点について」ということで、1回目としてございますが、資料3を御覧いただきたいと思います。1ページ目「大麻取締法等の改正に向けた論点」というところで、大きく4つあろうかと認識してございます。昨年「大麻等の薬物対策のあり方検討会」におきます取りまとめなどを踏まえまして、大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法の改正に向けて、さらに検討すべき論点というのは以下の4つであるとしてございます。
 1点目が「医療ニーズへの対応」というところでございます。先ほども御議論いただきましたが、大麻から製造された医薬品につきまして、G7諸国における医薬品の承認状況、麻薬単一条約との整合性を図りつつ、その製造、施用等を可能とするということで、医療ニーズに適切に対応していく必要があるのではないかということでございます。
 2点目が「薬物乱用への対応」ということでございます。3点ほど書いていますが、医療ニーズに応える一方で、大麻使用罪を創設するなど、不適切な大麻利用・乱用に対して、他の麻薬等と同様に対応していく必要があるのではないか。
 2点目です。一方、薬物中毒者、措置入院の仕組みを見直しまして、無用なスティグマ等の解消とともに、再乱用防止や薬物依存者の社会復帰等への支援を推進していく必要があるのではないか。
 3点目です。規制すべきは有害な精神作用を示すTHCであるということから、従来の部位規制に代わりまして、成分に着目した規制を導入する必要があるのではないかというところでございます。
 3点目、4点目については、次回以降、具体的な論点をお示ししたいと思っております。
 3が「大麻の適切な利用の推進」というところでございます。成分規制の導入等によりまして、神事をはじめとする伝統的な利用に加えまして、規制対象ではない成分であるCBDを利用した製品等、新たな産業利用を進め、健全な市場形成を図っていく基盤を構築していく必要があるのではないか。その際、こうした製品群について、THC含有量に係る濃度基準の設定等についても検討していく必要があるのではないかとしています。
 4点目が「適切な栽培及び管理の徹底」でございます。現在の栽培をめぐる厳しい環境、国内で栽培される大麻草のTHC含有量の実態等を踏まえまして、1点目から3点目の論点などを念頭に、適切な栽培・流通管理方法を見直していく必要があるのではないかと考えています。特に現行法におきましては、低THC含有量が低いものであれ、高いものであれ、栽培に関する規制という意味では同一となっているという点については、見直しを図っていく必要があるのではないかと考えてございます。
 続きまして、2ページ目を御覧いただきたいのですが、論点1、医療ニーズへの対応についてといったところで、現状・課題と基本的な考え方・方向性についてお示ししてございます。現状・課題のところにございますが、難治性のてんかん治療薬については、日本以外の諸国、G7諸国において既に承認をされている。ほかに、麻薬単一条約上においても医療上の有用性が認められている位置づけと大麻は変わってございます。そういったことも踏まえまして、日本においても国内治験の実施に向けた申請がなされている状況でございます。
 他方、現行法におきましては、大麻から製造された医薬品の施用などが禁止されてございまして、仮に薬機法に基づく承認がなされたとしましても、医療現場において活用するということは困難でございます。治験においては現行法でも可能でございますが、実際承認を受けた医薬品を医療現場で使うということは、現行法では厳しい。
 そういったことを踏まえまして、基本的な考え方・方向性としまして、国際整合性を図り、医療ニーズに対応する観点から、大麻から製造された医薬品の施用等を禁止している大麻取締法の関係条項を改正する。それとともに、麻薬及び向精神薬取締法に基づく免許制度等の流通管理の仕組みを導入し、大麻から製造される医薬品の製造及び施用を可能とするという方向で検討してはどうかということとしています。
 2点目、薬物乱用への対応についてでございます。現状・課題は、先ほど議題1のほうでも申し上げましたので、あまり繰り返しませんが、全体としては大麻事犯が増えている。生涯経験率は、諸外国と比較して全体としては違法薬物に関して低いと。その中でも大麻に関しては、ほかの薬物と比べても最も高い状況であるということ。若年層における大麻乱用が拡大している。
 また、大麻使用罪に関する認識を見ますと、使用罪がないということは、一定割合使用へのハードルを下げており、使用の経験にもつながっているという評価ができるのではないかと考えています。
 (2)大麻に含まれる有害成分でございますが、こちらはTHCが有害作用をもたらすということが示されておりまして、一方、現行法の中では部位規制を課していますが、実態としても規制部位か否かを判断する際には、THCの検出の有無に着目して取締りを行ってございます。また、麻向法においては、既に化学合成されたTHCについて麻薬としての規制を課しているといった点がございます。
 3点目は、再乱用防止と社会復帰支援、麻薬中毒制度でございます。薬物乱用防止五か年戦略とか再犯防止推進計画に基づきまして、薬物乱用は犯罪であるのですが、一方で、薬物依存症という病気であるという場合があるということを十分に認識しまして、関係省庁による連携の下で、社会復帰や治療のための環境整備など、社会資源を十分に活用した上での再乱用防止施策を進めている。
 一方、覚醒剤に関しては再犯者も高く、民間支援団体を含めた関係機関の連携が十分ではないのではないか。また、治療・支援の継続に向けた動機づけといったものもまだ十分ではないのではないかといった指摘、課題もあろうかと思っています。
 麻薬中毒者制度については、先ほど御紹介いたしましたが、実務上はもう既に機能してございません。また、精神保健福祉法に基づく薬物依存症への対応といったところでの措置も併せて可能にはなっているという状況でございます。
 そういったもろもろの現状・課題を踏まえまして、5ページ目以降に移っていただきたいのですが、基本的な考え方・方向性としまして、大麻の施用に関してでございます。若年層を中心として大麻事犯が増加しているという状況で、使用罪がないということが大麻使用へのハードルを下げていること等を踏まえつつ、薬物の生涯経験率が低い我が国の特徴を維持・改善していく必要があるのではないかということでございます。
 大麻の乱用によります短期的な有害作用、若年期からの乱用によりまして、より強い精神依存を形成するなど、精神・身体依存形成を引き起こす危険性があるといったことから、乱用防止に向けた効果的な施策が必要ではないか。
 そのため、麻向法に基づきます麻薬に係る取扱いと整合性を図るという観点から、医薬品としての施用を除きまして、大麻の施用を禁止(いわゆる「使用罪」を創設)する方向で検討してはどうかとしています。ただ、その際に罰則の在り方についてさらに検討を行う必要があるのではないかと考えているのと、大麻使用の立証に関して科学的見地からの検討も必要ではないかと思っておりまして、こちらについては次回以降御議論いただくように準備したいと思っています。
 2点目の成分に着目した規制の導入についてでございますが、基本的には従来の部位による規制に代わりまして、成分に着目した規制を導入する必要があるのではないかと考えています。
 その際には、現状成分規制を導入しております麻向法の枠組みを活用するということを念頭に、他の麻薬成分と同様に、医療上必要な医薬品としての規制を明確化し、それと併せまして、麻薬として施用等を禁止する対象となる成分を法令上明確化する方向で検討してはどうかと考えています。
 また、それ以外の成分であって、有害性が指摘されるような、例えば先般のHHCといったようなものについては、科学的な知見の集積に基づきまして、麻向法ないし薬機法の物質規制のプロセスで指定薬物、麻薬などとして指定をしまして、規制をしていくべきではないかということで考えてございます。
 3点目は再乱用防止と社会復帰支援についてでございます。これは前回の検討会でも御議論いただいていたかと思っていますが、一方で、大麻に限らず薬物依存者に対する治療や社会復帰の機会を確保していく必要がある。そのために、薬物使用犯罪を経験した者が偏見や差別を受けない診療体制や社会復帰の道筋をつくるために、関係省庁が一体となって支援をしていくきではないかと考えています。
 2点目、麻薬中毒者制度は、実務上も含めましてもう機能していないということで、これは法改正事項でございますが、麻向法を改正しまして、同制度を廃止する方向で検討してはどうかということでお示ししてございます。
 今回、基本的な考え方、方向性についてお示ししまして、また委員の皆様から御議論いただきまして、最終的にさらにブラッシュアップしていきたい。その上で、取りまとめのほうに議論をさらに進めていきたいと考えてございます。
 今回はまず基本的な考え方と方向性ということで御説明をさせていただきました。
 以上でございます。

○合田委員長 ありがとうございます。
 それでは、この議題のナンバー順に議論していくのが一番いいのではないかと思います。まず、1ポツの医療ニーズへの対応の件に関しまして、御意見、御質問等ございますでしょうか。これは非常にもっともなことが言われていると思いますが、この方向性に反対される方はいらっしゃらないのではないですかね。皆さん、この方向性ということでよろしいですか。よろしいですね。
(委員肯首)

○合田委員長 では、これは御了解。
 中島先生、どうぞ。

○中島委員 こちらについて特に異論はないのですけれども、資料の中で麻向法に基づく免許制度等の仕組みの導入について触れられておりまして、これが自治体の業務に影響が出てくるかと思いますので、進める際にはスケジュールとか内容等をお早めに示していただけるとありがたく思います。また、制度を詰める中で自治体の意見を聞いていただけるとありがたいと思います。よろしくお願いします。

○合田委員長 ありがとうございます。もっともな御意見だと思いますし、今、課長のほうもうなずいておりましたので、そのとおりになるのではないかと思います。
 それでは、1ポツの部分については、皆さん、御了解をいただいたということにしたいと思います。
 その次、2の薬物乱用への対応についてということで、基本的な考え方・方向性のところで順番に議論したほうがよろしいですね。まず、(1)大麻の施用についてというところを中心に御質問、御意見をいただければと思います。
 すみません。ここは次回以降議論の予定になっていますね。私が間違いました。
 現状・課題のところの(1)大麻事犯の増加というのは、ここに書かれていることはもっともなのですね。そのまま事実が書かれていて、有害成分のところも書かれまして、その次も実態のことについて書かれていまして、それで対応を取るというところでいきますと、ここのところはまとめていないですが、成分規制の導入をどうするかという議論にしましょうか。そこを中心として御質問等ございますか。橋爪先生、どうぞ。

○橋爪委員 橋爪です。
 大麻に含まれる有害成分のところで一応問題になるのは、規制部位かどうかというところでは、今、THCの検出があるかどうかで判別されています。麻向法においては、化学合成されたTHCについては麻薬としての規制になっています。今後部位規制がなくなって成分規制にした場合は、大麻由来のTHCも全ていわゆる成分で、麻向法で規制すると。そういう理解でよろしいのですね。

○合田委員長 事務局、いいですか。

○麻薬対策企画官 基本的には御指摘のとおりでございまして、そういう方向でしてはどうかと考えています。

○橋爪委員 現状、例えばTHCが大麻由来なのか、化学合成なのかという判別は、現実それを見ただけではできないですね。

○合田委員長 それはできないですね。だから、言葉ではこう書かれていますけれども、実際にはTHCが検出されたタイミングで、1つは、大麻ということが分かっていれば大麻でいきますが、これはTHCということで、麻向法で取り締まるということもあり得ると。そういう考え方でよろしいですね。

○麻薬対策企画官 はい。

○合田委員長 ですから、大麻の法律の部分で、一部どういう具合にレギュレーションをかけるかという部分を、今回より適切な医療用の製法も含めて変えていくという、そういう話だと思っています。

○橋爪委員 承知しました。

○合田委員長 そのほかにございますか。
 私、1つだけ最初に言っておいたほうがいいかなと思った件がございます。大麻の法律というのは、「カンナビス・サティバ・エル」と書いてあるのです。これは科学的にはおかしくて、これは昔から言われているのですけれども、「エル」は、リンネのエルなのです。普通にサイエンスで読むときには、それを「エル」と読む人はいなくて、実際にはリンネの略称で「L.」と書かれているのです。昔々法律に出たときに、なぜかそこをそのとおり和訳で読んで「エル」という具合に書かれてしまっているけれども、サイエンスとしてはおかしいので、ぜひこの法律を変えられるときには、何か言われるときも、「カンナビス・サティバ」まではいいのですが、「エル」を外していただくのが多分一番適切かなと。要するに、命名者の名前をもしも言うのであれば、リンネと言わなければいけないことになりますが、命名者の名前を言う必要は基本的にはないと思いますので、「カンナビス・サティバ」という形で法律を何かつくっていただくのが一番よろしいのではないかなと思っております。ちょっと本題とは離れましたけれども。
 皆さん、特に成分規制のところについて御質問等ございますか。天然物とか合成とかということを問わず、化合物のところで規制をしていきましょうと。今の麻向法の部分も具体的には化合物で規制されていますが、今の大麻の規制の部分をそちらのほうにシフトしていこうということだろうと思っています。その方向性で皆さん、御異論がないということでよろしいですか。
(委員首肯)

○合田委員長 よろしいですね。
 では、その次、使用罪の在り方というところがございます。使用罪の在り方というのは、先ほど松本先生からその部分についてどうするのかという御発表がございましたし、もう一つ、小林先生のほうから、実際にはこのものはゲートウェイドラッグになるということがあるので、何らかの形でそういう規制を入れる方向性もあるのだろうと。ただ、そのことについては、患者さんの具体的な回復がうまくいくかどうかということを考慮しながらそういう規制を入れていくべきだろうと。そういう御発言があったと思っております。
 この方向性についてどうするかということで、特に御意見がある方はいらっしゃいますか。松本先生、どうぞ。

○松本参考人 参考人なのですけれども、このことに関して一言申し上げておきたいと思います。先ほど小林委員のほうから何らかのサンクションが必要だというふうにあったので、残念なことではありますが、おそらく今後この委員会の中ではこの方向で議論が進むのでしょう。であれば、使用罪とか犯罪化がやむを得ないとして、ぜひこの機会に真剣に議論していただきたいことが1つあります。それは、例えば著名人とか、あるいは有名企業の社員とか、あるいは医師とか弁護士とか、そういう立場がある方たちが逮捕されたときに、被疑者の段階からなぜかメディアに情報がリークされたり、逮捕直前・直後の映像がなぜかニュースで報じられたりしています。それから、起訴された後、裁判で犯罪事実が確定していない被告人の段階からどんどんマスメディアが報道しています。恐らく捜査機関側が情報を何らかの形でリークしているのではないかと推測していますけれども、こういうことの結果、それなりに立場があった方たちが社会復帰する際に深刻な阻害要因となるのです。変な話ですが、清掃の仕事やコンビニエンスストアのレジ打ちの仕事にすら就けなくなります。デジタルタトゥーとしてネット上にずっとずっと残り続けてしまっているからです。
 さらに、本人が犯罪事実を認めないなら別ですけれども、認めたのだったら、身柄を勾留せずに在宅でということも検討すべきです。いきなり20日間も身柄を拘束されたりすると、どんな会社も首になります。だから、社会復帰ということもきちんと考えて、社会の中で居場所があることこそがこの人の回復を支援するのだということも考慮して、そこで捜査関係者の守秘義務遵守を徹底してほしいです。例えば警察から検察庁に行くときに、ワンボックスのカーテンの真ん中がなぜか開けられていて、薬で捕まった著名人の顔をみんなで撮れるようになっていたりします。「サンクション」などと軽々しく言うならば、こういったことにもっともっと注意を払ってほしいと思います。

○合田委員長 松本先生、どうもありがとうございます。
 本件につきまして、特に御質問等はございますか。関野先生。

○関野委員 今回からの参加で、昨年度の議論は存じ上げないのですけれども、やはりいきなり使用罪というのを設定するのはどうなのかなと。どういう形で刑罰をつけるのかということもよく分からないのですが、使用罪というのは具体的にはどういう刑罰を考えておられるか。例えば指定薬物であれば、流通をさせないとかそういうことが目的で使用を限定しようという目的があったのですけれども、この場合ですと、例えば海外で使用してしまったとか、そういうことも日本の国内で取り締まるような形になっていくのとか、「使用」というものの定義ですね。知らないで吸わされてしまったとか、知らないで飲んでしまったような場合はどうするのかとか、細かいところの議論はどういうところでされるのかというところも教えていただきたいなと思っています。

○合田委員長 これは事務局、お答えをお願いします。具体的に方向性が決まってからの話になるのかもしれないですけれども、何かございますか。

○麻薬対策企画官 例えば成分規制となった場合、仮に麻向法のほうで規制体系を一本化するということになれば、麻向法は、究極的には違法な薬物の乱用を防止することによる保健衛生上の危害の発生を防止していくという法目的がございますので、それに照らした規制という位置づけになろうかと思っています。
 2点目の知らない場合とかもろもろについては、基本的に行政刑罰を設定する際の構成要件として、行為とか違法性の認識とか、そういったものをどう位置づけられるのか。これは今回のこの大麻に限らない話だと認識していまして、最終的には構成要件にどう該当していくのかという整理になろうかと思いますし、法律上で整理できることはそれを明確化していくことだと思います。もう一点、実際の運用のレベルになりますと、最終的には裁判例などの積み重ねとか実務の話になってくるかと思っていますので、法律上はどういった行為が禁止をされ、刑罰の対象になるのかというのを条文上として明確にしていくという作業かと思います。それをまず基本的な方向感としてこちらの小委員会のほうで御議論いただくということになろうかと思っています。

○関野委員 そうしますと、今の理解が間違っていたら御指摘いただきたいのですが、例えば今までの成分で規制していく形になりますと、今ある既存の法律によって規制を受ける形になりますね。そうなると、大麻に対して特別に使用罪ということを設定するということとは違う形になりますか。これを見ていきますと、大麻に関してわざわざ使用罪みたいなものを設定していくかどうかの議論というふうに見てしまったので、成分で分けるとすれば、大麻に対する使用罪の話はまた違う議論になるのかと思ったので、それで質問しているのですけれども、そこの整理が私自身ができないものですから、ちょっと教えていただきたいなと思いました。

○監視指導・麻薬対策課長 ちょっと補足をさせていただきますが、現状の薬物規制で、言ってみれば麻向法に入っている成分については、所持も使用もいずれも刑罰が科せられる形になっています。大麻については、仮に成分規制に移行した場合ということですけれども、その場合、今の麻向法と同じような体系の中でいわゆる使用と所持と両方が規制されるという形になることを想定して議論しております。
 先ほど指定薬物の話もあったのですが、指定薬物も最初の制度をつくったときには、販売と受渡しとか、そういうものに対しては罰則があったのですが、途中で所持と使用についても刑罰がつく形で法律を改正していまして、現状では所持、使用についても取締りをしております。大麻のところは、ほかの薬物四法の中で比較したときも、所持はちゃんと今でも罪に問われます。ただ、使用というポイントだけが穴が開いているというところがほかの法律と違って、要するに、薬物対策という観点から見たときも並びが悪いというのが現状でありまして、大麻について所持も販売・受渡しも全く規制されていないというものではないので、そこをちょっと誤解されないようにお願いしたいと思います。

○関野委員 ありがとうございます。整理できました。ここだけぽこっと抜けた形になっているということになるということですね。逆に言えば、ほかの使用罪に対しての議論なしに、大麻の使用罪だけが取り沙汰されたような形になっているということではないということで、理解いたしました。ありがとうございました。

○合田委員長 THCの場合に基本的には麻向法で規制をされていまして、THCそのものは今の段階では医療用途があるわけではないのです。ですから、現実的にはTHCを規制すれば、そこで使用ということについて罰則規定があれば、大麻であろうが何であろうが、THCが検出がされれば、使用罪の対応に入ると。今は大麻からであればしないということ。そこは罰しないというのです。そういう状況の法律の構成になっているのだろうと私は考えているのですけれども、先生、よろしいですか。

○太田委員 誤解しないでいただきたいと思うのですけれども、大麻取締法上、所持罪が設けられているということの立法趣旨や保護法益は何かということです。なぜ所持を禁止しているかというと、所持を認めると、それを目で奏でて楽しむ人が増えてしまうから、それで所持を禁止しているわけでは全くなくて、使用を禁止するために所持を規制しているわけでありますので、これまでも使用罪はありませんでしたが、大麻の使用というのが法的に自由な領域だったと考えるのは全くの誤解でございます。
 しかも、立法の経緯を詳しく調べてみましたが、大麻取締規則の制定当時は大麻の乱用という問題が全くありませんでしたので、立法当局として使用罪をつくるのを失念してしまったというのがまず間違いない事実のようであります。後に平成二十何年でしたか、国会で使用罪がない説明をされているあれは、立法当時の立法趣旨を説明したものではなくて、後づけの理由として説明されたものなのです。いずれにしても、所持罪があるということは、事実上使用させないための所持罪という形でつくられているということは、御理解いただいたほうがいいのではないかなという気がいたします。
 ただ、先ほどの先生の御質問にあったことなのですけれども、もし成分規制にするという場合でも、難しいと思うのは、大麻取締法をどのように改正するのか、麻向法をどういうふうに改正するのかということです。いろいろな立法の仕方があり得ると思うのですが、現在は合成THCは麻向法で麻薬として規制し、そこには大麻由来のものは含まないということになっていますけれども、その制限を取り除いて、大麻由来のTHCも麻薬に指定するということにしますと、これは使用罪も含め全ての麻向法の罰条が自動的に適用されるということになります。それも一つの方法かと思うのですが、大麻に当たる植物、乾燥大麻を所持したり使用した場合、これをTHCとして扱うということになりますと、罪がかなり重くなります。現在、例えば使用罪でも麻薬は7年以下の懲役なのです。今度から拘禁刑というふうに変わりますので7年以下の拘禁刑でありますが、これまで大麻の所持は5年以下の懲役だったのにかかわらず、それもTHCに含めてしまうと、自動的に7年になってしまうというのは、立法的には問題であると思います。
 ただし、大麻由来のTHCに着目した場合には、例えば今の大麻リキッドみたいにTHC濃度がすごく高いもの、極めて危険性が高いものがありますので、それは麻薬として7年以下の拘禁刑というのでもおかしくはないかなと思うのですけれども、原料植物である大麻や乾燥大麻まで含めてしまうのがいいのかどうかという問題です。例えばあへん系の麻薬に関しては、あへんからつくった麻薬については麻向法で規制していますけれども、けしという植物は麻薬原料植物には含めず、あへん法のほうで規制していますので、大麻も同様に大麻取締法で所持や使用等を規制することも考えられます。THC成分自体は麻向法に移しても、大麻や乾燥大麻についての所持は禁止されていますし、使用罪を設けるとしても、どの法律でどのように規制するかということは、立法技術としてはかなり検討しなければいけない問題でしょう。大麻取締法の中で所持罪等を残し、さらには使用罪もつくるのか等、立法方法としてはいろいろ考えなければいけないところがあるので、こういうところは先生方と一緒に議論していければと考えております。

○合田委員長 ありがとうございます。
 ほかにございますか。ウェブの先生方、よろしいですか。今、議論になっているところは、1つは量刑をどうするかということがございます。それから、今、言ったように成分の具体的な濃度も含めて法律的にどうコントロールするかという問題がございます。これは非常にテクニカルな問題になってきて、法律の先生方と細かく議論をしないといけないので、ここの委員会では、まずはこういう論点があるということを皆さんに御確認いただいた形で今日は締めたいと思いますが、それでよろしいですか。技術的にどれが可能かというのは、細かく議論してみないとその話はできないのではないかと思います。
 もう一つ、麻薬中毒云々というところの話は今、出てきたのですかね。名前をどうしますかというような話はございますか。先ほどのところで麻薬中毒者制度についてはというところがございました。「精神障害者福祉に関する法律における精神障害者の定義に薬物依存症も対象とされ」と。4ページ目の最後のところ、依存症者に対する医療に関してどうしますかという部分について御意見がございましたら。要するに、今は麻薬中毒者制度というのが具体的に利用されている、そういう状態で患者さんが入られているということはないという状況がございまして、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律における精神障害者の定義で薬物依存症。そちらのほうで療養されていると。そういう話になっています。この部分について今回の法改正で触っていくかどうかという議論が今、残されていると思いますけれども。太田先生、どうぞ。

○太田委員 これは前回の検討会でもほぼ全員の合意が得られたと思うのですが、麻薬中毒者制度というのはほとんど機能しておりませんし、実際に精神保健福祉法が改正されて、物質依存のほうはそちらのほうで対応することが可能になっておりますし、麻薬中毒者の場合、その後の監督制度は法制度的にも少しまずい部分がありますので、そういうことも含めて麻薬中毒者制度というものは廃止していく方向が望ましいのではないかと思っております。

○合田委員長 今の観点につきまして、よろしいですか。ほかの御意見。小林先生、お願いします。

○小林委員 これは臨床現場においても実際使われていない法制度ですし、実際に他の精神障害者と同様に精神保健福祉法に基づく治療で十分対応できると考えます。

○合田委員長 ありがとうございます。
 中島先生、よろしくお願いします。

○中島委員 制度の廃止につきましては特に異論はないのですけれども、この中で麻薬中毒者相談員につきまして、何らかの形で残していただけるとありがたいと考えております。都では相談員を任命しておりまして、薬物問題を抱えている御本人、御家族を含めてお話を聞いたり、回復に向けて非常に地道な活動を実施しております。ですので、名称は別の形でもよいので、薬物問題を抱える人の相談員を設置できるような規定があると大変ありがたいと考えております。御検討よろしくお願いします。

○合田委員長 ありがとうございます。
 事務局、そういう方向性でよろしいですか。

○麻薬対策企画官 今、御指摘いただいたポイントは、制度的にどういった対応が可能なのか、もしくは実務レベルでどういった対応が可能なのかといった点も含めて整理させていただきたいと思っております。
 先ほど太田先生から御指摘いただいたポイントも、まさに使用罪の設定に当たっての重要なポイントでございますので、次回以降、法規制の在り方そのものを今回大きく見直す必要があるというふうにも考えてございますので、またその辺について詳しい論点をお示しして、御議論いただければと思っております。

○合田委員長 関野先生。

○関野委員 この問題は相談員という制度が非常に必要で、あと、地域の薬局の在り方とか。例えば大麻の問題だけではなく、処方薬に対する依存症とかそういうのもありますので、地域の密着型の相談できる窓口の制度をもう少し充実することは。逆にこれを廃止しましたというよりは、この一部分、民間の力とか近所の目とか、地域の薬剤師会とかの取組、中毒患者さんに対する取組をどうするかというのを地域で議論されているところもありますので、むしろそちらを充実させるような形にしていっていただきたいというのがお願いしたいことです。

○合田委員長 ありがとうございます。
 前回の検討会のほうでは、今、伺いましたところ、麻薬中毒関係の措置入院の廃止、その辺のところは方向性が出ているということで、この委員会でもその方向性は継続をするということで皆さん、御同意いただけますか。橋爪先生も今、うなずかれました。皆さん、反論がないということでよろしいですね。
(委員首肯)

○合田委員長 ありがとうございます。
 今、説明があったところについて私なりにまとめて、意見を聴取したつもりなのですが、今、監視指導・麻薬対策課から示された話について御意見、発言をされたい方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいですか。神村先生、お願いします。

○神村委員 ただいまの関野委員の御意見で、地域の薬局を活用という方向のお話だと思いますけれども、こういう有害なもの、違法ドラッグ、中毒性のあるようなものに関してはかなり専門性が必要だったりするものですから、安易に地域の薬局に期待するところができるかどうか。ちょっと難しいところがあるのではないか。これは富永委員の御意見も伺いたいと思います。

○合田委員長 富永先生、御意見をいただけますか。

○富永委員 富永です。
 実は学校薬剤師という制度がありまして、薬物乱用防止教育というのをやっているのですけれども、厚労省のほうから年に1回やるようにと御指導いただいて、その健康教育に携わっている立場から言うと、使用する前の正しい知識の伝達をするということで薬剤師も取り組んでおります。薬局でも健康相談等をやっておりますし、先ほど松本先生がおっしゃったように、一般用医薬品の乱用について非常に危機感を持っております。私どもはきちんと1箱ずつ売っても、いろんな店で買いつなぐというような青少年のこともありますし、ぜひ医薬品に関しては地域の薬局を利用して、そういう相談窓口となっていたいと思いますので、その辺は皆さん、御検討ください。

○合田委員長 ありがとうございます。
 小林先生、お願いします。

○小林委員 臨床現場から一言だけ言わせていただくと、制度上そういった相談員というのをただつくったとしても、きちんと依存症のハイリスク、例えば青少年の精神病理、心の在り方、コミュニケーションの取り方、そういったことの理解なしに、ただ一方的にこんなに体に悪いのだよという害の知識を提供しただけでは何ら薬物乱用防止の効果がないという海外のエビデンスもありますので、ただ箱だけ、肩書だけつくって終わりにするということはぜひ避けていただきたい。もし何らかのそういった支援の幅を広げたいのであれば、正確な理解とコミュニケーションの取り方、関わり方ということも大事なコンポーネントとして考えていただければと考えます。

○合田委員長 ありがとうございます。
 神村先生、もう一度手を挙げていらっしゃいますけれども、どうぞ。

○神村委員 地域の薬局を活用して予防的なお話をする、あるいは学校で予防的な教育をするというレベルであればよろしいと思いますが、私も小林先生と同じように、それと依存症の対策とかそういう問題を抱えた方に対応するというのはちょっとレベルが違うのではないかと思いますので、安易にはできないと思っております。

○富永委員 私どもは、そういう患者さんといいますか、経験上分かりますので、そういうのは受診勧告等を通じて、あと保健所相談について、相談窓口を提供するという形になると思います。そこで私どもが実際に治療とかそういう相談をするわけではありません。だから、そういう人たちが広く相談していただくような窓口をつくるという意味で薬局を利用していただきたいということでございます。

○合田委員長 ありがとうございます。
 ほかに。松本先生、お願いします。

○松本参考人 先ほどの富永委員の市販薬のことに少し関連して意見があります。今回のこの委員会の趣旨とは全く異なるとは思うのですが、今日の発表の中で少し市販薬のことも触れさせていただきました。この場は厚生労働省の会議であるので言っておくと、これまでどちらかというと厚生労働省は市販薬を推進してきたかと思います。処方薬からOTCへのスイッチングの促進とか、インターネットにおける販売の緩和であるとか、あるいはセルフメディケーション税制とかもあります。さらに最近ではコンビニエンスストアで売るということを考えているということも仄聞しております。そういうのもこの機会に関係者の方たちは頭の片隅に置いておいていただければと思います。これはちょっと見直さなければいけないのではないか、政策として妥当であったのか、ということを投げかけておきたいと思います。

○合田委員長 ありがとうございます。
 ほかにございますか。
 時間がもう25分過ぎまして、司会の不手際がございましてここまで延びてしまいました。
 今日求められている話題については議論をしてきたので、ここで終わることは可能なのではないかと思っておりますけれども、本日いただきました意見、それから御質問等もございましたので、事務局で整理をさせていただいて、次回提出をさせていただきたいと思っております。
 本日予定された議題は以上になりますが、最後、事務局から何かございますか。

○事務局 次回以降の日程等につきましては、正式に決まり次第、また事務局から御連絡を差し上げますので、よろしくお願いいたします。

○合田委員長 それでは、以上をもちまして第1回「厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会」を閉会いたします。円滑な議事の進行に御協力いただきまして誠にありがとうございました。
 以上でございます。

(了)

医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課
直通:03-3595-2436

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