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北海道のむかし話19 家宝のハラワン
江差の繁次郎
家宝のハラワン
暮れもおしせまって、借金の取りたてがきびしくなってくると、ふだんのらりくらりの繁次郎もだんだん心配になってきた。
ことに、「おれの家には先祖から伝わった宝物-家宝ーがあるから、いくら借りてもだいじょうぶだ。心配するな」と、けむにまいていただけに、どうやって借金取りを追い払うかと四苦八苦。
首をひねっ考えたすえ、ポンと手をうって、
「これは迷案、名案」
さて大晦日。
ふだんえらそうな口をきいている繁次郎を、今日こそとっちめてやろうと、のりこんだ借金取り、
「繁次郎、いるか」
と戸をあけると、頭にはちまきをし、着物の前をひろげて、腹をつき出して繁次郎がすわっている。
よく見るとへその上におわんを一つのっけているではないか。
「借金はどうしてくれる。家宝はどこだ」
とさけぶと、
「これだ、これだよ」
という。
「これとはなんだ」
と聞くと、
「これ、腹の上のわん。ハラワン、ハラワン。借金はハラワンという家宝だ」
矢代旅館祖母伝 文・梁瀬伊兵衛