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北海道のむかし話48 斜里の老狐

斜里(しゃり)の老狐(ろうこ)

昔、斜里に一匹の歳をとった狐が住んでおった。老狐はいつも、漁場の蔵の屋根の上で昼寝をしていた。

アイヌの人々は、この老狐を神様として敬うやまい、誰も悪戯をする者はいなかった。
ところがある日、漁場吟味(ぎょばぎんみ)の役人が見廻りにきた時、蔵の屋根で寝ている狐を見つけると、自慢の鉄砲で打ち取ろうとしたので、アイヌ達は驚いて、あれは狐の神様だから、打つのは止めた方がええ。
といって止めたが、役人はいうことをきかず狙いをつけたが、火縄の火が消えてしまった。腹を立てた役人は火を付けなおして、また狙ったが、やはり火は消えてしまった。

ある日、いつものように蔵の屋根で寝ている老狐に忍び寄り棍棒(こんぼう)でなぐりつけた。狐は急所を打たれ、くるくると廻って屋根を転がり落ちると、パッと一羽の鳥になっていづこかえ飛んでいってしまった。
それを見た役人は急におそろしくなり、家に帰ってしまったが、その晩からは、身の毛のよだつ何物かにおびえるようになった。

それからは、何をしても悪いことが続き、とうとう漁場吟味の役もおろされてしまった。
それから、ある日鉄砲で鳥をうったら、その弾がとんでもない方に飛び、人に当たってしまい、あやうく死罪になるところだったが、相手の傷が思ったより浅かったので許されたということです。
これも老狐の祟(たたり)といわれている。

                                                                            更科源蔵 アイヌの伝説より


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