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北海道のむかし話4 ヌッパの沢の竜神さま ー三笠市ー


三笠市の中心から半里(二キロメートル)ほどのところに、ヌッパの沢(抜羽の沢)という、きれいな水のたえない沢があります。
かつて空知集治監の囚人や周辺集落の飲料用に使われていたという水源地で、水道管を通して飲み水を引く工事が進められ水が供給されました。

ヌッパの沢の竜神さま

むかし、村の人びとは、この沢の水を引いて飲み水にしたり水田揚水にして使っていました。

ある年のことでした。
お貞という村の働き者が沢づたいに入り、おいしそうな、大きなフキやウドをたくさんとり、やっこらさと背負ってもどってきました。

そして、大きなカツラの木の下でひと休みして、「さて、汗もひいたし、はよう帰ろうか」と、立ちあがって、びっくりしました。

大きなヘビが、道に長くねそべっているのです。
「あっ!」
とさけび、立ちすくむと、ヘビは、ずるずるとカツラの木にのぼっていきます。そのカツラの木の枝にも、小さなヘビがからみあって、巻きついているのです。
お貞は、恐ろしくて恐ろしくて、もう、声がでませんが、ヘビは竜神さまに違いないと思い、目をつむっていっしんに、「竜神さま、竜神さま」と、拝みました。

どのくらいたったのでしょう。
お貞は、大へびの声を聞いたのです。

「お貞よ。われは、ヌッパの沢の主である。ことしは、大変な日でりの年まわりとなった。どの沢も、どの川も水がかれ、畑も水田も不作となろう。
しかし、村びとがわれを信じ、われをまつるなら、ヌッパの沢水は、たゆるくことなく流れるであろう。お貞。わすれるなよ」

お貞が、おそるおそる目をあけてみますと、もう、ヘビの姿は見えません。
お貞は、はうようにして家に帰りました。
村びとたちは、お貞の話しにしたがって、さっそく、カツラの大木にしめ縄をはり、祠をたて、鳥居を寄進して、竜神様を祀りました。
夏になると、お告げのとおり雨の降らない日が続き、今までにない大干ばつになりました。
村びとは、祠のまえに集まり、お祭りをし、太鼓を打ってお祈りをしたところ、この付近いったいに雨が降り、どうやら、平年作になりました。

いまでも、干ばつにはお祭りをし、太鼓を打つとかならず雨が降るといわれ、大きな貯水池がつくられ、この地方の大切な用水源となっています。



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