北海道のむかし話18 死んだ馬が草くう
死んだ馬が草くう
ハアハア息をきらしてかけてきた繁次郎、出合い頭の男をつかまえて、大声で「おい、死んだ馬、草くってるぞ」
男、驚いて、「ばかなことを。死んだ馬、草くってたまるか」
繁次郎、「ほんとだてば。うそだと思うならかけるか」
男、「よし、かけをする」
こうして、二人のあとに、大勢の人がぞろぞろとついて、馬の死んでいる草原にやってきました。
見ると、馬の死がいはもうくさっていて、そのにおいは、あたり一面にただよっています。
男、思わずはなをつまんで、
「この馬、くさんって、くさくって、たまらない」
と言うのを聞いた繁次郎、
「おまえ、いまなんと言った」
男、「この死んだ馬、くさくって、くさくって」と言いかけると、
すかさず繁次郎、
「そーらみろ。おまえ二度まで、『この死んだ馬、草くって、草くって』
と言ったろう。このかけは、おれの勝ちだ。さあ出せ出せ」