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北海道のむかし話39 アイヌの祖先伝説

アイヌの祖先伝説


平取町



むかし、日高海岸に一艘の小舟が漂ながれ着いた。
その舟は何処の国からきたのかわからなかったが、一人の若くて美しい女神が乗っておった。
その小舟は漂れ着いた時、岩にぶつかり壊れてしまったが、舟の中には多くの黄金や、衣類が積んであった。

女神は舟から降り、人家はないかと辺りを探したが、雨露しのぐ場所ところさえなかった。
仕方なく舟に積んであった食料で時を過ごし衣を頭からかぶり寝ていると、どこからともなく一匹の狼(ホロケウ)がやってきて、女神に近づき、嬉しそうに尾を振り、着物の裾すそをくわえて、何処かえ連れて行こうとした。


スズラン公園

女神は、曳かれるままについていくと沙流川(さるがわ)の上流の洞穴(ブユンチシ)の中に入っていった。
それから狼は女神と寝宿ねとまりを一緒にして護(まもり)、時々山の中へ行ってくると木の実や果物を取ってきて、女神に食べさせたり、また谷川や、清水(しみず)のある所へも案内して水を飲ませたりもした。

女神もこの狼を頼りに暮らし始め、月日を送っているうちに、いつしか身籠ることになって、ちょうど十月十日目に男の子と女の子の二人を産んだ。
それからは舟から持ってきた衣類で子供二人の衣類をつくり、優しく強く育はぐんだ。
子供達もやがて成長して、この二人の間に子供が産まれ、子孫をつくり、産まれてアイヌの祖先が栄えたといわれている。

                                                                            更科源蔵 アイヌ伝説より


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