北海道のむかし話58 石狩川の河童
石狩川の河童(かっぱ)
ある日の夕暮れ、石狩川に聞きなれない掛け声が聞えてきた。
「ヘーイ、チョチョ。ヘーイ、チョチョ」 と聞こえてくる。
旅人は不思議に思い、川の中ほどに伸びている木に登り、声の方を見ると、頭の禿げた子供みたいなのが、大勢で舟を漕いでいるのが見えた。
きれいな満月の夜だったので、木の上の旅人の姿が川面かわもに映っておった。それを船首へさきで漕いでいた一人が見つけると大騒ぎとなり、舟を漕ぐ手をやめて川面に映っている旅人を捕まえようと、川へ飛び込み始めた。
飛び込んでは影をかかえて上がってくるが何もない。また水中にもぐって捕ろうとすると、またいない。
こんなことを朝方までやっていたが、東の空が明けはじめると、いっせいにどこか消えていった。
石狩川で河童のことをミントチと呼ぶ。
更科源蔵 アイヌ伝説より