やぎさん取材日記|巻頭特集より 函館の酒場を訪ねて
よく「雑誌の取材先はどうやって見つけるんですか?」と聞かれますが、「ほぼ自力」です。
テレビ局やインターネットの会社であれば専門のリサーチャーがいると聞いてますが、こんなミニマムな編集部にそういう人はなく、昔から「ほぼほぼ歩いて稼ぐ」でやってます。
そこで、大事なのは「地元の人」なのです! 縁あって仕事が終わったら一緒に飲んだりごはんを食べたりして、それが取材につながることもあります。
「北海道生活」春号ご紹介のブログでもちらっと書いたように、この「仏壇」とあるお店も、地元の人に連れていかれて出会った一軒です。
元仏壇店の建物が、道南の酒を飲める素敵なお店に。
始めてこの店を訪れたのは、昨年2023年の4月。あまりにも衝撃的な外観に、とりあえず自分のスマホでパチリ。
「今度来るときには、取材としてプロのカメラマンを連れてきて、きれいに撮ってもらおう」と誓った瞬間でした。
くらべてみると一目瞭然ですが、撮影はプロのカメラマンに撮ってもらう、これも雑誌の写真の鉄則です。
仏壇屋さんだった建物を「道南のワインやお酒を楽しむお店」に生まれ変わらせたのが、この「函館魚販」というお店でした。
なにしろ、めったにお目にかかれない「ド・モンティーユ&北海道」のワインがいきなりグラスワインで飲めてしまうという。
このワイナリーも取材に行ったところ、現地ではすでに商品がなく、「しまった!函館魚販で撮っておけばよかった」と思ったほど、ラインナップが充実しておりました。
道南には小さなワイナリーが増えていて、なかなか手に入らないワインも多いのです。小さなレストランや飲食店とつながっていて、直接卸しているところで飲めたりすることもあります。
今回の特集では小さなレストランを紹介したので「農楽蔵」の割合が高かったですね~。
ワインに合わせるのは、同じく道南のチーズ工房でつくられたチーズ。
その日によってラインナップが変わる盛り合わせでは、「え!こんなチーズが手に入るの!」というチーズとの出会いがあってたまりませんでした。
日本酒の品ぞろえもすごい!
道南には長らく酒蔵がなかったのですが、函館市、隣の七飯町に、2軒の酒蔵が誕生しました。この辺の話はさらに長くなるので本誌(「北海道生活」春号)で読んでいただくとして……。
日本酒のアテも、ダシ巻き卵にブロッコリーとカニがのっていて、なかなかのまさる(飲んでしまう、の北海道弁)ものが揃っています。
後日、取材した際に飲食する時間がなく「帰りにどうぞ」といただいたのは、松前町の岩海苔のおにぎり。
これが食べたくて飲みに行くというファンもいるほど、美味しいおにぎりなんです。
自分で実際に食べたり飲んだりしているお店は、どんなに上手な文章よりも説得力が勝るのではと思っています。
取材も酒場、取材の後も酒場。
「酒場を取材しているのは楽しそう」と思われがちですが、ほとんどのお店は営業前にお邪魔するので、日中にお酒も飲まず、おいしそうな料理とお酒を撮影するのは「飲みたい!」気持ちを押さえながらで大変なんです。
たまに「営業中に来てほしい」と言われることもありますが、そちらの方がもっと大変で、お客さんがお酒を飲んでいる中での撮影はなかなかのカオスです。
撮影は事前にわかっているのでみなさん人懐っこくて、優しく「そのカメラ持ってあげるから、飲めばー?」と言ってくれたりするのですが、プロのカメラや機材は数十万円以上するものが多く、「大丈夫です~」とお気持ちだけありがたく、内心ヒヤヒヤしているカメラマン。
吉田類さんの番組のイメージで、飲みながら取材というのは滅多にできるものではないのです。
やはり、酒場は仕事終わりに飲みに行くのが楽しいです。
地元の人に連れていかれるお店は、取材のきっかけになることもありますし、あまり当たりはずれは考えずに楽しむようにしています。
とある居酒屋さんでは、鹿部(しかべ)町の特産・たらこの焼き加減が素晴らしくて感動しました。
そして「取材だったら美味しいものばかり食べてるでしょう」と言われがちで、たとえば北海道といえばカニ、函館といえばイカ刺しをガンガン食べているように思われておりますが、私もふつうのサラリーマン、仕事終わりは安い居酒屋か焼き鳥屋が多いです。
といっても焼き鳥は大好物で、北海道の焼き鳥のスタンダードは、玉ねぎをはさんだ「鳥精」。まずはこれを頼み、ビールを飲んだ瞬間に仕事モードがオフになります。
取材したお店に、再びお客さんとして行くこともあります。
昨年取材したときには地元の人でいっぱいだった焼き鳥屋さんが、自分で行ったときには観光シーズンで周りの席が外国人だらけだった時がありました。
注文しようと店主の方と目が合ったとたん、「Where are you from?(どこの国から来たの)」と聞かれて、「日本人!しかもこの前取材に来ましたよ!」「え!すいませーん‼」と大爆笑になりました。
そんなわけで地元の人に連れて行ってもらう店は、函館だから海鮮、という観光客パターンではない店が多いです。
昨年の4月に行ったときは、ちょうど函館市長選が行なわれており、カウンターで酔っ払っていたら目の前に大泉潤さん(のチラシ)がいました。
まさかその後、市長になられ、その数か月後にご本人にインタビューすることになるとは思いもよらなかった夜なのでした……。
函館は何度も行っておりますが、今回ほど地元密着の酒場に行ったことはなく、行けば行くほどハマります。
みなさんも函館にお越しの際は、「北海道生活」を見て、地元ならではのお店に行ってみてくださいね。
(「北海道生活」編集長)
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