北海道・美瑛、小麦畑をつかまえて。
北海道の田園風景といえば、たくさんの牛(馬、ひつじ)がいる牧場、そして小麦畑や、ころころ転がっている牧草ロールを思い浮かべる人も多いでしょう。
私も北海道に移住して、「北海道生活」という雑誌を通して、だんだんわかってきたことがありました。っていうか、何にも知らなかったし、あまり知られていないことが多かった!
そこで先日取材した美瑛で、わかってよかったなあと思ったことをお話しします。
「牧草ロール」というと、こんな風景を想像する方も多いかもしれません。
でもこれは「麦稈(ばっかん)ロール」といって、牛のベッドに使われるもの。
牛の冬の間のエサとなる「牧草ロール」は、ビニールに巻かれていて、白いビニール、黒いビニール、ストライプやピンクなど、こちらも見かけることが多いです。
冬の間に美味しく食べられるようにラップして牧草を熟成しているのに、「ビニール巻かれてない方が、景色がいいのになあ」と勘違いしていた私でした。(ごめんなさい)
とはいえ、実際に雑誌に掲載する風景を撮影しに行く際は、できるだけ美しい風景を狙いたいもの。
そこで7月の終わり、旭川から富良野、美瑛へとカメラマンの車で美しい田園風景を探しに行ってきました。
キラキラと黄金色に輝く小麦畑を撮りたい――お盆前には小麦の収穫があるので、夏が終わる前に撮影しなければなりません。
これも「麦秋」という言葉で勘違いしていたのですが、小麦といえば夏、ここでいう「秋」は実りの時期をさしているそうなので、「麦秋」は夏の言葉なのでした。(ごめんなさい)
小麦を追っているつもりが、なぜか、そばの畑をよく見かけるように。
かすみ草のように真っ白なそばの花は大好きなのですが、イメージ的には日本有数のそばの産地である幌加内(ほろかない)や新得(しんとく)、そして空知(そらち)地方で見かけることが多く、富良野から美瑛にかけて、意外とそばの畑が多いことにも気づかされます。
小麦畑はどこかなあと車を走らせていると……
あれ!小麦が刈り取られている!Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン(久々に絵文字)
その後まわってみましたが、そば畑、小麦畑(刈り取り済み)、そば畑、小麦畑(刈り取り済み)……と想像と違っていたのとちがいます。
たしか前に撮影した時は8月のお盆だったのに、小麦畑はどうしたんだろう……。
ここでお昼休み。「美瑛選果」の人気パン店「美瑛小麦工房」へ。
新千歳空港では行列のできる「コーンぱん」が有名ですが、ここでは食パンや黒豆パン、あんぱん、牛乳パンやチーズパンなどを販売。
マリトッツォかと思った「びえいの牛乳ぱん」は生クリームでなく、ミルククリームがたっぷりでした。
こちらで地元の方と待ち合わせをして、「北海道生活」秋号を取材。
子やぎさんにごあいさつ、夏日でちょっと暑がっていました。
地元の方に連れて行っていただいたのは、「マイルドセブンの丘」。
美瑛の風景は日本中のどこにもないほど美しく、タバコや車のCM、ポスターやパッケージなどで、あっというまに有名になってしまいました。
しかし、いくら美しい風景でも、ここは農家さんの働く場所で住んでいる場所。近年は心ない方がカメラを持って農地に侵入したり、車を停めて撮影するせいで農作業のコンバイン車などが通れなくなったり、農家の人たちを困らせるようになってしまいます。
有名だった木を切らざるをえなかったニュースがあったのは、その結果だったのです。みんながマナーを守っていたら、今でも名所として残っていたのに残念ですね。
「マイルドセブンの丘」はタバコのパッケージで2カ所が撮影され、うち1カ所が「ここからなら撮影していいですよ」と看板を立てて、ご厚意で見せてもらっている場所。
この日もまさにそばの花が満開で、とってもきれいでした。
美瑛では農家さんや地元の方が相談して、「ここは農家さんの畑だから入らないで」とか「ここは撮影していいですよ」と看板でわかるようにしています。
観光協会でもHPでわかりやすく解説しているので、訪れる方はぜひご覧ください。
「そういえば、そば畑ばかりで、小麦は刈り取られてしまいましたね」と地元の方にお話ししたところ、温暖化などで収穫期が昔よりは早まっているようですが、だいたい例年どおりとのこと。
「麦稈ロールも、畑に置いておくと観光客が集まってきてしまうので、ロールをつくったらすぐに片づけてしまうようになりました」。そうか、ここでも観光客がご迷惑をかけていたのですね。
富士山を撮影しようと迷惑をかけている外国人のニュースを覚えていたので、「外国人観光客ですか」と聞くと、「マナーのいい外国人もいますし、マナーの悪い日本人もいますよ」。
そうでした、今の朝ドラ「虎に翼」で「国籍は関係ないでしょう?」という主人公のセリフを思い出し、反省しました。
美瑛といえばパッチワークの田園風景が知られていますが、これは農家さんたちが苦労して様々な作物を植えてきたから。
道も車がぎりぎり行きかうくらいの細い道が多く、農家さんの大きなトラックやコンバインが通る際には1台でいっぱいになります。ドライブしていて見かけたら、すぐにコースを変えて道を譲りましょう。
すると地元の方に「小麦畑はまだありますよ」と連れて行ってもらうことに。
あった! 一面の小麦畑。もちろん畑には一歩も踏み入れず、外側からそっと撮影しました。
小麦には大きく分けて、
秋にタネをまいて一冬越し、7月終わりに刈り取る「秋まき小麦」と、
春にタネをまいて、8月頭頃に刈り取る「春まき小麦」があります。
農家さんたちの刈り取りのスケジュールによって、まだ刈り取る前の畑も残っていたというわけです。
北海道の小麦の多くは秋まき小麦で、主にうどんに使われる「きたほなみ」やパン用の「ゆめちから」があり、春まき小麦にはパン用の「春よ恋」などがあります。
ちなみにパンに使われる小麦は、麦の穂に長いヒゲのようなものが付いているのがポイントだそうです。
そういうお話をうかがいながら、「お米だったら品種とかこだわって買っているのに、小麦について何にも知らなかったなあ」と反省しきり。
これから秋の収穫期まで、北海道ではいろんな作物の畑を見ることができます。
農家さんに迷惑をかけず、そっと眺めて、育てていただいた作物に感謝しながら、収穫の秋と食欲の秋を楽しみに待ちたいなあと思っています。
(「北海道生活」編集長)