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粒子性と波動性 〜超弦理論まで

はじめに

粒子性をネットで調べても、「粒としてそこにある性質である」のような禅問答のような回答が多く、これでは言葉遊びしかなっていないと思いました。

「粒子性」と対峙する言葉に「波動性」があります。 この両者の違いについて、その性質を示し、明確にしないとご質問に応えることができないでしょう。
あくまで私見ですが、以下のように考察しました。
後ろの方では、素粒子の標準理論と超弦理論に言及します。

粒子性とは

(p1) 明確な境界がある。 空間的広がりが小さく、少なくともその境界が比較的はっきりしている。

(p2) 移動に関して、指向性を持つ。 等方性はない。

(p3) 部分が存在しない。常に、一つの粒子全体としての属性で語ることができる。

(p4) 加えて、素粒子と呼ばれるものは、(p3)の属性が同じなら、個々の粒が同じ性質を持つ。 離散的である。 最小単位がある。

(p5) 上記の性質から、相互作用に於ける物理的性質として、衝突があり、二体の衝突は、二体問題として解くことができる。 玉突きのような、弾性散乱、柔らかい球の衝突ような非弾性散乱がある。

(p6) エネルギーや運動量は、その速度の二乗あるいは速度に比例する。 (p5)の性質も加味すると、(光電効果など)明確な閾値のある反応が存在する。

(p7) スピン(自転)がある。

これに対して、

波動性とは

(w1) 明確な境界がない。 空間的広がりが大きい、境界があってもそれがどこであるか決め難い。

(w2) 移動に関して、指向性がある場合があるが、特に波源の近くでは等方性の波もある。

(w3) 部分が存在する。 あるいは、部分が存在するような挙動を示す。 同じ波であっても、属性値に分布があり、部分によって異なる。

(w4) 個々の波は、空間的にも時間的にも連続的な属性の違いを持つことができる。 最小単位がない。

(w5) 相互作用として干渉、回折がある。

(w6) 一般的に、エネルギーは振幅の二乗に比例する。 ※光のエネルギーは振幅ではなく、振動数に比例する。

(w7) スピンはない。 そのかわり、位相があり、群速度、位相速度がある。 位相反転して重ね合わせすれば、一瞬、消えたように見える。(干渉の性質)。 また縦波・横波があり、横波の場合は、波面の回転角がある。

共通の性質

取り敢えず思いついたのは以下のようなものです。

(c1)エネルギーや運動量を伝えることができる。

(c2)有限の速度を持つ。

以上のことから、たとえば「具体的にどのような事実が実験で観測されたらそのように見えるのか?」の問いに対しては、様々な実験を通して、上記に掲げた(p*)と(w*)の項目の比較で判定することになります。

光、電磁波に関して言うと

・コンプトン散乱は、まさに、(p4)、(p5)の性質を示し、その粒子性を示す良い実例です。

・さらに、光電効果は、(p6)の性質も示し、(w6)についても、エネルギーが振動数に比例するなど通常の波動とは異なる観点から、粒子性を示す実験として紹介されます。 

しかし、光速度不変で、質量ゼロから(p6)の$${E=pc}$$ で、運動量$${p}$$が、

$$
p=\cfrac{νh}{c} = \cfrac{h}{λ}
$$

$$
ν:振動数、h:プランク定数、λ:波長
$$

と考えざるを得なくなります。

一方、光を光子として捉えるのではなく、電磁波として波のエネルギーを問うとき、(w6)の性質、振幅の二乗に比例すると扱いますので、注意が必要です。

波のエネルギー

・ヤングの干渉実験は、(w6)を示したもので、スリットを通過する時点では波として考えるしか理解できない結果を示しています。

・今は、直接的に、一つの光子を撮影できていますので、粒子性を否定できないと思いますが

産総研:光子一つが見える「光子顕微鏡」を世界で初めて開発

こう言うのもありますので


ところで、光の粒子性や電子の波動性に抵抗を示す人がいます。 自然や科学を素直に受け入れられない、二元論が好きな人たちにとっては、とっても気味が悪いのでしょう。 彼らはどちらか一つに決めないと気が済まないようです。

ふたたび波動

量子力学は量子と言う波動性を持った粒子の挙動、粒子性を持った波動について統一したモデルを記述することに成功しましたが、多くの素粒子が発見されるにつれ、再度、これらを統一する理論の必要性が出てきました。 また、相互作用を担うゲージ粒子に関しても重力と統一した理論も未解決です。 そこで出てきたのが、ふたたび波動です。 大きさのない粒子ではなく、ヒモが奏でる振動(波動)によって粒子の素性が定まると言うものです。 ※光速を超えるタキオン凝縮というアノマリーを生じさせないようにするにはもう少し複雑。


素粒子の標準理論

粒子としての性質は(p1)で大きさや範囲があると述べましたが、素粒子の場合は少し違い、標準理論では(p3)の性質はそのままで、構造を持たない大きさのない点として扱います。 つまり、量子力学では、素粒子を点として扱いますが、その位置や運動量は確率として表わすことにしたのです。 ※実際には、そのサイズが0ではないが0と扱っても問題ないと言うことです。

そのように扱っても、量子力学を使って行われる第一原理計算では、超高精度で量子の挙動が正確に計算でき、様々な最先端技術(半導体、医療、宇宙工学、etc)に応用され、我々はその恩恵を受けています。

現在、素粒子として17個の素粒子が発見されています。 
物質粒子としての6個のクォークや6個のレプトン、3種4個のゲージ粒子、それとヒッグス場に伴うヒッグス粒子です。

  • クォーク
    アップ,ダウン,チャーム,ストレンジ,トップ,ボトム

  • レプトン
    eニュートリノ,μニュートリノ,τニュートリノ,電子,ミューオン,タウ

  • ゲージ粒子(力を伝える粒子)
    グルーオン,Wボゾン,Zボゾン,光子

  • ヒッグス粒子

重力子(グラビトン)

ここで、問題となるのが重力の扱いなのです。 重力は重力子と言うゲージ粒子が介在していると言われますが、発見されておらず、標準理論の素粒子の中に入っていません。 重力は既にその正しさが認識されている一般相対性理論の要請から絶対的な長さと言う概念が必要です。 しかし、大きさのない点では、上手く説明できないのです。

超弦理論

そこで、物質の最小構成単位を点ではなくヒモと考えたら、比較的上手く説明できると言うのが超弦理論です。 素粒子を点ではなく振動する弦だと言う考えは、先の量子力学の波動関数に似た印象を受けますが、それより遥かに難しく、数学(群論・位相幾何・微分幾何)、物理学の理論(量子力学・解析力学・相対性理論・場の理論・共形場理論・超対称性理論・弦理論)などの前提知識が必要です。

しかし、今の超弦理論でも、10〜11次元が必要であり、現実の3次元+1次元(時間軸)に適切にコンパクト化できないと言う欠点?があります。

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