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「鏡はなぜ左右を反転するのに上下は反転しないのか?」に対する科学的な回答
答えは極めて単純
この問題、数年前にとあるSNSでも私が回答したのですが、答えは単純「鏡はただ面対称な像を作るだけ」なのに、未だに変な回答をする人が多いですね。
「前後反転」と言う多い誤答
特に多いの変なのが「前後」を反転していると言う回答。 主観を変えただけの回答であるのに、これで満足してしまう人が意外に多い。 もちろんそれが本質ではありません。 なぜなら、鏡の正面に立てた絵などの場合、奥行きがないので、前後が反転するという方法論では説明できません。
科学者でも間違う人もいる
驚くのは数学や物理など科学を齧ったことがある人まで… 特に化学において、立体異性体・鏡像異性体・幾何異性体・構造異性体の区別は重要なんですが。 詭弁に騙されないように注意しましょう。
キラリティー
以下は、キラリティーという対称性・対掌性に関するWikipediaからの抜粋です。
キラリティー - Wikipedia
キラリティー ( 英 : chirality )は、3 次元 の 図形 や 物体 や 現象 が、その 鏡像 と重ね合わすことができない性質である。
...
対掌性 (たいしょうせい)ともいい、「対掌」とは右と左の手のひらの対を意味している。 対称性 と紛らわしいが、キラリティとは鏡像対称性の欠如であり、むしろ逆の意味になる。 幾何学 的な図形のほか、 分子 、 結晶 、 スピン 構造などについて使われる。
単純過ぎて専門的な問いにしないと理解できない?
しかし、コンピュータグラフィックスでも右手系・左手系の違うライブラリがあるし、物理学ではベクトルの共変性・反変性などこれに通じるものが頻繁に出てくるのですが、難しくしないと理解できないとか、不思議です。
本質は3次元直交座標系の性質からくるもの
私の極めて単純な回答は以下の通り。 単純な3Dデカルト座標系(カーテシアン座標系または直交座標系:Cartesian coordinate system) の幾何学の基本です。
私の回答
鏡は、左右、前後、もちろん上下だけを反転させるものではありません。 鏡は面対称の像を作るだけです。 つまり、鏡は置き方と見方を変えることで、面対称の像で、左右を反転させたり、前後を反転させたり、上下を反転させたりすることができます。 数学的に説明すると極めて単純です。 対称面となる鏡に対して座標変換した鏡像ができます。 斜めにおいてもできますがその場合はxx反転という言葉はありません。
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つまり、左右が反転して見えるのは通常、鏡を垂直に置き正面からそれを見るからで、さらに、人間が左右対称に近い生物で鏡に映った自分の姿のある空間が手前の実空間の延長だと感じることで、心理的錯覚に拍車がかかります。
結論
鏡の中の世界は面対称
鏡は置き方と見方により反転が変わります。 鏡の中の世界は、実空間の延長ではなく、左右・上下・前後という一つの方向だけを見て反転するという表現で鏡の持つ本質を表すことはできず、3次元直交座標系で考えた時の面対称の像でしかないと言うことです。
補足 : 心理学的な解説
以下は、上記の図の心理学的な解説です、本質は上記の説明で終わっています。
左右反転
鏡を垂直に置き、文字を映すと左右が反転して見えます。 上下は反転してみえません。 ZX面鏡像対称 (x, y, z) →(x, -y, z) の変換像ができます。
上下反転
鏡を床か天井に置き、上下が対称に近い生物が見ると「上下が反転している」と思います。 XY面鏡像対称 (x, y, z) →(x, y, -z) の変換像ができます。
へたくそな絵ですが下記の画像は鏡を床(または天井)に置き上下が対称に近い生物(絵)が鏡を見た画像です。鏡に映った姿は上下が反転して見えます。 もちろん、文字も上下が反転して見えます。 左右は反転して見えません。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/144470623/picture_pc_45bc74e6670801d58513c20ea357db26.png)
前後反転
YZ面鏡像対称 (x, y, z) →(-x, y, z) の変換像ができます。
前後反転で説明できるという主張もありますが、鏡は像を前後に反転しているということだけでは説明できない例を示します。
奥行きの無い絵を鏡に並行にして映せば分かります。 奥行きが無いのにも拘わらず、垂直に立てた鏡では左右が反転して見えます。 奥行きがないので、前後が反転するという方法論では説明できません。
心理的な錯覚が生み出す左右反転
なぜ左右だけが反転すると思うのか…それは鏡を立てて置き、鏡の中の世界に入って考えてしまうから。
鏡に映った右手は右手が映ったものでオリジナルの右手とも違い、左手でもありません。
パントマイムで二人が演じる鏡のジョークと同じように、鏡が透明なガラスだとして、鏡の向こうの世界に行って同じポーズを取ろうとすると、自分の左手は、鏡の前にいた右手と同じポーズにしなければなりません。 人間の脳がこれを処理してしまい、これで鏡の世界に映った右手が左手だと錯覚するのです。
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結論の再掲
鏡の中の世界は面対称
鏡は置き方と見方により反転が変わります。 鏡の中の世界は、実空間の延長ではなく、左右・上下・前後という一つの方向だけを見て反転するという表現で鏡の持つ本質を表すことはできず、3次元直交座標系で考えた時の面対称の像でしかないと言うことです。