保険ショップの共同募集
「共同募集」という言葉は、まさに保険用語の一つかと思います。
共同募集は、1つの保険契約を複数の保険代理店で分担して募集業務を行うもので、保険会社から支払われる保険代理店手数料も複数の保険代理店で分け合う仕組みです。
共同募集自体は、かなり昔からある仕組みのようで、保険業界では盛んに使われてきたものみたいなのですが、ここ最近、共同募集の取り組みが保険ショップでも増えてきているように見受けられるのでご紹介したいと思います。
Web×保険のパイオニア「保険市場」は共同募集の老舗
日本最大級の保険情報サイト「保険市場」
検索サイトでは、保険に関連あらゆるキーワードで上位表示をしているまさにWeb×保険の雄的な存在。
「価格.com 保険」も上位に表示されていますが、両社の売上高を比べてみると、「保険市場」は、「価格.com 保険」の約4倍近い売上があります。
「価格.com 保険」は、自動車保険の一括見積もりやネットで見積りや申込みができる生命保険など、流石IT企業だけあって、ネット上で保険選びが完結するようにサイトが作られているように感じます。
一方で、「保険市場」は、ネット上で見積りや申込みができるのはもちろんこと、オンラインや店舗、訪問での相談の他、最近ではアバター相談など、自分で保険を選べない人に向けたサービスも豊富に用意されています。
また、取扱保険会社数も95社と圧倒的に多く、取り扱っていない保険種類はほぼないのではないかと思えるくらい、まさに日本最大級の保険情報サイトと言えるでしょう。
「保険市場」と「価格.com 保険」で、売上高にここまで差が出る要因の一つには、保険の選び方の進め方(見積りから契約までのプロセス)に大きな違いがあると私は考えています。
「価格.com 保険」は、保障内容がシンプルでユーザーが自身で保障を選び、そのままネット契約するような商品が中心のため、おそらく、保険料としては比較的割安になる傾向があると思います。
価格.comなだけあって、保険料で比較するユーザーも多いでしょうし、保険料が割安な保険は、当然ながら、保険会社から受け取る代理店手数料も相対的に下がるので、価格.comが得意とするSEOで、保険関連のあらゆるキーワードで上位表示して、とにかく契約数を増やすことが重要な戦略になってくるように感じます。
一方で、「保険市場」で保険商品を調べてみると、ネットで加入できない商品も数多く表示されます。特に、生命保険においては、対面販売が必要とされている商品がまだまだ多くあるため、こうした商品を契約を希望する場合は、必ず保険相談を利用することになります。
「保険市場」の強みは目に見えるサイトだけでなく、この保険相談へ進めるプロセスにあると私は考えています。
保険をネット上でサクサクと自分で選べる人は、保険についてもWebについても正直リテラシーの高い人物だと思います。しかし、Webについて詳しくても、保険について詳しい方はどれくらいいるでしょうか。
保険ショップがこれだけ街に増えたのも、多くの人が保険について詳しくない背景があってのことだと思いますし「保険市場」はそのことをよく理解してビジネスを作っていると思います。
「保険市場」のサイトを見てみると、店舗や対面、オンラインでの「保険相談」へそのまま進むこともできる一方で、商品を検索して、そこから、保険相談を申込むこともできます。
さらに「保険市場」には、資料請求をしたユーザーにも電話で案内をする体制が備わっているので、あらゆる導線から入ってきたユーザーをスムーズに保険相談へつなげていくプロセスが出来上がっているのです。これが「保険市場」をここまで大きくした要因だと考えています。
私も、過去に、保険市場で火災保険の資料請求をしたことがあるのですが、資料請求した後、すぐに電話があり、詳しい商品の説明を受けるため対面相談の案内を受けた経験があり、あまりのスピーディーさに驚いた記憶があります。(ちなみに、その後、案内いただいた提携代理店で火災保険を契約しました。やはりこちらも共同募集でした。)
さて、ここでようやく、今回のテーマである「共同募集」についてお話ししていきたいと思います。
「保険市場」は日本最大級の保険情報サイトなので、アクセスも日本全国から集まってきているはずです。
ただ、対面での保険相談となると、ユーザーの居住地まで募集人が出向かないとならないため、全国に募集人を抱えるのはコスト面を考えても非現実的です。(それこそ、大手の保険会社はまさにそうやって運営していますが…)
「保険市場」は、全国733店舗(2024年8月9日時点)で保険相談することができるとサイト上で謳っています。733店舗というと保険ショップの最大手である「ほけんの窓口」の店舗数に近い数になりますが、「保険市場」は、他社が運営する保険ショップと共同募集する形で、ここまでの店舗数を有しています。
そのため、全国733店舗のうち、「保険市場」が自社で運営する直営店は、大都市圏にある11店に留まり、それ以外の722店舗はすべて協力店という扱いになっています。
実際に「保険市場」の保険相談ができる店舗の一覧ページを見てみると、「保険見直し本舗」「保険クリニック」、「ほけん百花」「保険ほっとライン」など、街で見かけたことのある保険ショップを次々と確認することできました。
そして、各協力店を紹介しているページには「保険市場」の協力店であり共同募集となることがちゃんと明記されています。
すごく余談ですが、保険ショップマニアの私は、今から20年くらい前に、「保険市場」が全国43都道府県に約200店舗の保険ショップを運営していたことも知っています。(その時代は今でこそ店舗数No.1の「ほけんの窓口」も20店舗そこそこだったようなので、「保険市場」は時代の先端を走っていたのだと思います。)
「保険市場」は、圧倒的なラインナップの保険に関わる情報と、オペレーターや保険ショップなどの巧みな連携プレー、つまり、オンラインとオフラインの垣根をなくすような取り組みによって、ここまで成長してきたことがわかりました。
協力店として提携する保険ショップにとっても、「保険市場」は巨大なマーケットホルダーなので、共同募集という形になって代理店手数料が仮に折半になったとしても、新規契約を獲得することができるので、まさにWin-Winの関係なんだろうと思いました。
一見、保険のリーズにも似ているように思えますが、リーズの場合、多くが契約の有無を問わず、面談1件でいくらという価格設定であるのに対して、共同募集の場合は、契約がとれたら保険代理店手数料を分け合う形なので、固定費や先行での費用がかからず、費用対効果の高い取り組みだと感じました。
※店舗の成約率によっては、共同募集よりもリーズ買取の方がいいというパターンもあるかもしれませんが…。
「保険市場」にとって、共同募集は、重要なビジネスの一つであって、提携している各保険ショップにとっても、合理的な集客手段になっているのだと思います。もはや保険ショップにとっては、「保険市場」がなくてはならない存在、保険のインフラ的な存在にまでなっているのかもしれません。
保険市場以外でも、保険ショップ同士で共同募集
保険ショップ業界の共同募集というと、上で取り上げた「保険市場」と各保険ショップが提携している取り組みが有名だとは思いますが、最近、保険ショップ同士でも共同募集をしていることを見つけました。
北海道・関東・関西で「保険相談サロンFLP」「ほけんの扉」という2つのブランドの保険ショップを約30店舗運営している「株式会社F.L.P」のサイトを見てみると、「あれ、北海道・関東・関西以外の店舗も載っている?東北に中部、中国、四国、九州、沖縄!」と驚いたのです。
店舗がないはずの都道府県の店舗一覧を開いてみると、「保険見直し本舗」や
「保険ほっとライン」など、他社の保険ショップがずらずらと…。
他社の保険ショップを紹介しているページ内には「2社による共同募集となります。」と明記されているので、どうやら、これも「保険市場」の取り組みと同様に、見込み客の集客と実際の面談や契約を分担している「共同募集」のようです。
本来、ライバル関係であるはずの保険ショップのサイト内に、他社の保険ショップが紹介されていることに驚きましたが、保険ショップの場合、各店舗の商圏がそこまで広くはなさそうなので、自分たちの店舗がないエリアのお客様を取り逃がすくらいなら、他社の店舗へ行ってもらってでも、契約にとった方がいいという戦略なのでしょうか…。
ただ、保険ショップのサイトの場合、「保険市場」とは違って、正直、保険に関する情報はそこまで多くは掲載されていないので、どれくらいの見込み客が保険ショップのサイトに集まっているかは未知数ですが、保険ショップマニアとしては保険ショップ同士の共同募集の取り組みを今後も興味深くウォッチしていきたいと思います。
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