保険ショップ1店舗あたりの売上・利益
私は、街中にたくさんある保険ショップが、どれくらいの売上や利益を上げているのかとても気になります。
正直、お客様で混雑しているような保険ショップをあまり見かけたことがなく、「どうして、こんなに空いているのに、やっていけてるのだろう…」と純粋に思うことがあったからです。(特に平日のショッピングモールの中の保険ショップは、ほとんどのブースが空いているようなお店が多い気がします…。)
ただ、保険の場合、買っておしまいとなる消費財とは異なり、長期に渡って保険料の払い込みを続け、LTV(ライフタイムバリュー)が高い商品となるため、一人の顧客から得られる利益が大きいはずです。
そのため、一見空いているような保険ショップでも、ある程度の売上があることが想像できます。
今回は、ホームページや決算公告に掲載されている情報から、保険ショップ1店舗あたりの売上・利益を考えてみたいと思います。
※想定のため、実際の1店舗あたりの売上・利益ではありません。
大手保険ショップの売上・利益
まず、大手3大保険ショップとも言える「ほけんの窓口」「保険見直し本舗」「保険クリニック」を調べてみたいと思います。
ほけんの窓口
運営会社:ほけんの窓口グループ株式会社
ほけんの窓口が毎年発行している「VALUE REPORT」という会社案内のパンフレットによると、2023年6月期は、売上高:約424億円、経常利益:78億円、店舗数は780店舗でした。
売上高には、パートナー企業と呼ばれるフランチャイズ店舗のロイヤリティに類するものが含まれていると思われますが、その構成までは公表されていませんでした。経常利益率を計算してみると約18.4%なので、とても高収益な企業であることがわかりました。
資料内のほけんの窓口の店舗数には、パートナー企業が運営する店舗も含まれていますが、生命保険協会のホームページ内にあったほけんの窓口の紹介ページには「全国に466店舗(パートナー企業を除く)を展開しています。」と記載されているので、全体の約60%が直営店舗であることがわかりました。
単純計算にはなりますが、売上高:約424億円を店舗数:780店舗で割ってみると、1店舗あたりの売上は「5,435万円」でした。私がイメージする保険ショップの1店舗あたりの売上高のイメージに近く、業界最大手なので一つの目安になりそうです。なお、1店舗あたりの利益は「約1,003万円」でした。
ただし、ほけんの窓口の場合、業界最大手ですし、パートナー企業のことを考えると、実際の1店舗あたりの売上・利益は、もっと高いことが想像できます。
保険見直し本舗
運営会社:株式会社保険見直し本舗グループ(旧:株式会社NFCホールディングス)
保険見直し本舗は、光通信グループで上場企業であったNFCホールディングス傘下の企業が運営していましたが、NFCホールディングスは2022年7月に上場廃止し、2024年7月には「保険見直し本舗グループ」に社名を変更しています。
そのため、少し前の情報にはなりますが、上場していた頃の決算説明資料を確認してみました。
2022年3月期の保険代理店関連事業は、売上高:約224億円、営業利益:約35億円、店舗数:337店舗でした。営業利益率は、約15.5%と高いことがわかります。
保険見直し本舗には、一部フランチャイズ店舗もあるようですが、多くの店舗は直営店舗であることから、売上高:約224億円を店舗数:337店舗で割ってみると、1店舗あたりの売上高は「6,651万円」でした。1店舗あたりの利益は「約1,033万円」でした。(単純比較にはなりますが、ほけんの窓口とかなり近い数字でした。)
保険クリニック
運営会社:株式会社アイリックコーポレーション
保険クリニックを運営するアイリックコーポレーションは、2018年9月に東証グロース市場に上場しているので、決算説明書に詳しい売上が記載されていました。(上場企業だと、細かい情報が開示してくれて保険ショップマニアとしてはうれしい!)
2023年6月期は、売上高:約60億円、営業利益:約1.8億円でした。営業利益率は3%と低めなのですが、積極的な採用と広告宣伝費の増加が要因のようです。
アイリックコーポレーションは、「保険クリニック」の運営の他に、保険代理店向けのシステム開発やソリューション提供の事業もあるため、売上高:約60億円のうち、直営店である62店舗の売上は、約25億円でした。
直営店部門売上:約25億円を直営店舗数:62店舗で割ると、1店舗あたりの売上高は「4,032万円」でした。1店舗あたりの利益は「約303万円」でした。(ほけんの窓口、保険見直し本舗と比べると、1/3程度と低い水準です。)
大手以外の保険ショップの売上・利益
せっかくなので、3大保険ショップ以外の100店舗前後の店舗を展開している中規模の保険ショップも調べてみたいと思います。
決算公告(官報)や各運営会社が転職サイトなどに掲載している募集案内ページに載せている売上・利益や店舗数を確認しました。
ほけん百科
運営会社:いずみライフデザイナーズ株式会社
ほけん百花を運営するのは、住友生命グループのいずみライフデザイナーズです。住友生命の100%子会社でありながらも、乗合代理店として複数社を取り扱う保険ショップを運営しているのは興味深いです。
個人的には、親会社の住友生命のマーケティングや商品開発にも活用されているのかが気になるところです。
ほけん百花は、全国展開ではなく、関東・関西を中心に店舗を展開していて、新規開業するような商業施設にオープン時より入居していることが多い印象があります。
売上高:約33億円、当期純利益:約3.5億円、店舗数:82店舗でした。全店舗直営店舗で、1店舗あたりの売上は「約4,042万円」、利益は「約425万円」でした。
保険ほっとライン
運営会社:マイコミュニケーション株式会社
保険ほっとラインは、愛知県でアフラックの保険代理店として始まった保険ショップで、今では、愛知をはじめ、関東・関西を中心に直営店を77店舗を展開しています。
保険ほっとラインの店舗には、巨大なアフラックのアヒルのぬいぐるみが店頭に鎮座しているので、結構インパクト強めです。(私もアフラックダックのぬいぐるみが欲しいです。できればコンパクトなサイズを…笑)
余談ですが、アフラック公式サイトによると、テレビCMでお馴染みのこのアヒルは「アフラックダック」いう名前で、「アフラック!」しか話せないそうです。ちなみに、嫌いな食べ物は「北京ダック」みたいで、結構リアル目な設定でした。
さて、保険ほっとラインは、売上高:約41億円、純利益:約7億円、直営店舗数:77店舗でした。1店舗あたりの売上は「約5,324万円」、利益は「約909万円」でした。
ほけんの110番
運営会社:株式会社ほけんの110番
ほけんの110番は、福岡県に本社があり、九州・沖縄をはじめ、全国に129店舗展開している保険ショップです。
2017年に日本生命グループとなり、保険ショップの店舗数がやや飽和状態と言われる昨今においても、ニッセイの強力なバックボーンを活かして、今も毎年、店舗数を増やしているようです。(すごい!)
情報としては少し古いのですが、2022年3月期は、売上高:約40億円、当期純利益:約4億円、店舗数:129店舗でした。1店舗あたりの売上は「約3,155万円」、純利益は「約303万円」でした。
店舗の約半数にあたる61店舗は九州・沖縄にあるため、世帯年収の地域差などから他の保険ショップに比べると、1店舗あたりの売上や利益が少ないのかもしれません。
余談ですが、ほけんの110番は、日本生命の100%子会社である「株式会社LHL」のグループ会社で、このLHL社には、全国に約45店舗の保険ショップを展開している「ライフサロン」もグループ会社としてあったり、保険ショップ検索・予約サイト「ニアエル」を運営していたりと、日本最大の保険会社である日本生命も、保険ショップ業界へのアンテナはしっかり張っていることが見て取れます。
【結果】保険ショップ1店舗あたりの売上・利益
今回は、大手3社と中堅3社(計6社)の保険ショップの財務情報や店舗数から、保険ショップ1店舗あたりの売上・利益を想定してみました。
今回調べた6社を平均してみると、1店舗あたりの売上が「5,371万円」、利益が「873万円」でした。利益率は「16.3%」でした。
これは、あくまでも平均なので、店舗がある都道府県、規模や立地(駅前、商業施設内、路面店等)、そして、店舗の看板(ブランド)によっても異なり、挙績の少ない店舗もあれば、もっと成績のいい店舗もあると思います。
おまけ:保険ショップの販管費
1店舗あたりの平均的な売上「5,371万円」から利益「873万円」を引くと、保険ショップ1店舗あたりの販管費は「4,498万円」かかっていることがわかります。
これらの情報をもとに、ChatGPTに「販管費についてシミュレーションしてみて!」と言ってみたところ、下記の回答が来ましたので、参考までに載せておきます。
今回、保険ショップ1店舗あたりの売上や利益を想定してみて、調べる前に私が予想していた金額感と、そこまでのズレはありませんでした。(1店舗あたり売上:4,000~5000万円、利益:500~1,000万円くらいと予想してました)
ただ、利益に関しては、利益の少ない店舗と多い店舗では、3倍以上の差があり、経営方針や広宣費の考え方など、保険ショップの運営会社によって大きく違いが出ていることがわかりました。