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新人保健師黒井が傾聴を覚えた話

地域包括支援センター界隈は濃いキャラ多数。
職員、介護事業所スタッフ、ご本人、ご家族など…
それはもう至るところに。

今回は、私が入職してすぐに出会った三木さんという方のお話。

それは、業務も終わりかけの夕方。
プルルル…と鳴る電話に私は出た。

黒井「 こんにちは。よつば地域包括支援センター、保健師黒井です。」
三木「 黒井さんですか。新しい人ですか。可愛い声ですね。」
え、ちょっと怖いのですが?どうすれば…?と返事に困る私。

そんな空気を察してかどうかはわからないが、三木さんは続ける。
三木「私は三木といいまして。さみしいので話を聞いてください」
黒井「 もちろん大丈夫ですよ。どうされました?」
三木「 わたしはひとり暮らしで、結婚もしていないので、無性にさみしくなるんです。定年前に病気で休職してからそのまま働かず、年金だけで生活しています。」

相槌を打ちながら話を聞く。
自分の生い立ちから今の様子まで、ずっとお話しをする三木さん。

5分ほど話を聞いていた頃だろうか。
先輩たちが私の方をチラチラ見ている。
隣の席の大橋先輩がメモで指示を出す。
「 三木さん?切り上げてOK!」と。

そのメモをみて、私は三木さんに話しかけてみた。
黒井「 すみません、そろそろ電話を切っても大丈夫ですか?」
三木「 あぁ、もう時間ですね。ありがとう
ガチャ。そう言って三木さんは電話を切った。

ずっと話してた割には随分あっさりと切ったような?
もしかして常連さん??と頭に疑問符が浮かぶ私。

大橋先輩が教えてくれた。
三木さんは、黒井が働き始める2か月ほど前から、
毎日、地域包括支援センターに電話をかけてくる方。
最初のころは、毎日30分以上話していて、
職員の業務も滞り、電話回線も塞がってしまう状況で、
ちょっと困っていた。
そこで三木さんとも話あって、新しくルールを作ることになった。
それは、【電話は1回3分まで、1日に3回かけてもOK】
というルール。

なるほど、三木さん自身、ちゃんとルールに納得して、
守ってくださるのも、職員との信頼関係の賜物なのだろうなぁ。
と学ぶ新人保健師の黒井だった。

その後も三木さんから毎日、1日3回の電話はかかってきた。
しかし、しばらくすると、私は気づいてしまった。
先輩たち、電話番号が三木さんだと、電話出ない時があるということを…。

まぁ、忙しい先輩たちよりも、
手が空いている新人の黒井が電話に出るべきですよね!と、
頑張って電話に出ていたんです。

でもね、頑張っていた私に三木さんはこう言ったんです。
「また黒井さんですか…他の人は忙しいですかね」と。
ため息をつきながらチェンジ要求されたときの悲しみといったら…!

相手に話を真剣に聞いていないと思われてしまっては専門職失格ですね。
その後は二度とチェンジ要求されないように(?)
全力で傾聴スキルを磨いた黒井でした。

【傾聴、受容、共感】
これって、看護学生時代から大事だよって指導されるけれど、
なかなか一朝一夕にはうまくできない。
立派な専門職のスキルだよなぁと思う今日この頃です。


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