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癖のある利用者さんが好きな保健師 黒井

今日はひとり暮らしの女性、由紀子さんのお話。
由紀子さん、最初は大橋先輩の担当さんだった。
由紀子さんは気になることがあるとすぐに電話で確認したいという性格。
電話の回数も必然的に多く、大橋先輩が不在の時に由紀子さんの対応をすることも多かった。
また、逆に由紀子さんも職員事情に妙に詳しかった。
大橋先輩の様子を見ていて、由紀子さんの対応は大変そうだな、と他人事のように思っていた。

が、その大橋先輩が異動することになり、なんと黒井が新担当になってしまった。
由紀子さん、電話の回数も多いし、訪問すると話も長い。
正直言うと、最初のころはちょっと嫌だった。
忙しいのにな…。こないだも言ったのにな…。そんなことを考えてしまっていた。

でも、時間がたつにつれて、由紀子さんのキャラがつかめて、面白くなってきた。
そんな由紀子さんとのエピソードをいくつかご紹介。

①由紀子さんとヘルパーさん

由紀子さんは糖尿病の診断があった。
しかし、自宅にはパンやカップ麺が大量に置かれており、 ヘルパーさんが来るたびに叱られていた。
黒井が訪問すると由紀子さんは「またヘルパーさんに叱られた」と話してくれる。
そんな由紀子さんの言い分はこうだ。
「パンだって一度に一袋は食べないようにしているし、たまにはお味噌汁作って野菜を食べるようにしているし、食事には気を付けているのにね」
(パンに関しては、一度には一袋食べないが、一日に何度も食べている。日に計3袋以上は食べている様子なのはさておいて。)
なるほど、由紀子さんとしては食事に気を付けていたのだ。これは新たな発見。
由紀子さんはこう続ける。
「体が重くて動かんわってヘルパーさんに言ったの。そしたらヘルパーさんも最近太っちゃったから一緒にダイエット頑張りましょうって言われてね。あのヘルパーさん、面白いよね」
ヘルパーさんに叱られると言いつつも、とても信頼している様子。
さすがヘルパーさん、上手に由紀子さんに指導されてるなぁと感心した黒井であった。

②由紀子さんとデイサービス

一時期、体調を崩してしまった由紀子さん。身体が大きいこともあり、車いすが必要に。 デイサービスで借りることができるので問題ないのだが、由紀子さんは心配になる。
毎週デイサービスに来る前日夕方と当日早朝の2回に電話が来る。
認知機能は低下しておらず、しっかりしている由紀子さん。
毎回「昨日も言ったんだけどね、伝わってるか心配になって」と最初に言いながらも、同じ質問を繰り返す心配性の由紀子さんだった。
そんな由紀子さん、色々と気になりすぎてしまう。
例えば、体が大きめの由紀子さん、自覚はあるが、他人から指摘を受けると気にしてしまう 。
(誰でもそうだとは思うけれど)
前のデイサービスで由紀子さんの近くに座った利用者さんが 「あんた、太ってるなぁ。」と利用するたびに由紀子さんに話しかけてきた。
結局デイサービスを変わることにしたが、変わってからもことあるたびに、ずっとそのエピソードを話していた。
体型を指摘され、とても深く心が傷ついた様子の由紀子さんだった。

③由紀子さんと職員さん

今利用しているデイサービスが好きな由紀子さん。
他の利用者さんとの交流ももちろんだけど、お気に入りの職員さんがいる。
基本的にはちょっとやんちゃそうな若い男性職員がお気に入り。 「〇〇さんの顔がみたい。ちょっとでもいいから時間のあるときに来てくれるよう伝えてほしい」と呼び出す。
お気に入りの職員さんが来るととっても嬉しそうな由紀子さん。職員さんも「由紀子さん、今日も来てくれてありがとうね」と上手に由紀子さんとお話しされる。
あれ、ここはキャバクラやホストかな?と思う黒井であった。
(でも、由紀子さんに限らず、お気に入りの職員さんに会えるのが楽しみで来ている方、結構いますよね。)

そんな由紀子さんだったが、他人への気遣いの言葉がとても多い。
色んな職員さんに対して「あんた、がんばっとるなぁ。ありがとうな」とほめてくれる。

ちょっとだけわがままなところもあるけれど、心配性で、気遣い屋さんで、いつもおおらかな由紀子さんのことがとても好きになってきた。訪問の時間も次第に楽しみになってきた黒井であった。
包括新人の頃は、ひと癖も二癖もある利用者さんは大変だ、面倒だ、と思ってしまいがち。
それを、「面白い人だなぁ」と興味を持つことができるようになってきたらきっと1人前。この頃には、包括の仕事がとても楽しくなってくる。

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