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【文字起こし】大竹まこと ゴールデンラジオ! 津野佳奈美氏(2023年7月11日)

小島慶子氏
今日のゲストは著書『パワハラ上司を科学する』がちくま新書から好評販売中、神奈川県立保健福祉大学准教授、津野香奈美さんです。よろしくお願い致します。

津野香奈美氏
よろしくお願い致します。

大竹まこと氏
ようこそいらっしゃいました。今回は『パワハラ上司を科学する』というご本を紹介させて頂きます。始まる前に話してたんですけど、これの参考文献が英語の文献がたくさん書かれていますけども、これは逆にいうとこういう文献が日本には少ないというふうに考えてよろしいんですか?

津野氏
そうですね、その通りでして、やはりハラスメントの研究自体、やはり労働者を保護するという観点から行われることが多いので、その観点が強い北欧諸国が一番先に研究がスタートしまして、段々ヨーロッパにいって、で日本に入ってきたという段階で、日本ではまだまだ発展途上だと思います。

大竹氏
ヨーロッパなんだ、アメリカじゃないんだ・・・

津野氏
アメリカはですね、あんまり労働者保護の精神が強くないんですね、すぐ解雇してしまいますので・・・。

大竹氏
トランプはね、「首にしろ」って、「お前は首だ!」っていう・・・

津野氏
はい、即時解雇が可能なんで

小島氏
エンターテイメントの番組でね、やってましたね。
この本を書かれた動機の中にも書いてありましたけれども、まだ科学的に考えるということが日本ではそんなに浸透していないパワハラについて・・・ということですとか、どうだったらパワハラだと言われないで済むのか、部下からパワハラ呼ばわりされないためにはどうすればいいんだよ、生きづらい世の中になったなあというような言われ方でパワハラが語られることの方がどちらかというとまだ多いという点に非常に問題を感じていらっしゃる。法律はね変わって、事業主というのは自分の組織でそういうことが起きないようにしないといけませんよと言われているにも関わらず、なかなか働いている人の心持ちは変わらないと。

津野氏
そうですねえ、だいたい皆さん気にされるのが、どこからがパワハラになって、どこまでだったらやってOKなのかというラインでして、そこにやはり皆さんの質問が集中することがあります、研修でも。

小島氏
でも大事な観点は先ほどおっしゃったように、働いている人をどうやって守るかっていう価値観を浸透させることですね。

津野氏
そうですね、どちらかっていうと働いている人を守るというのは勿論なんですけども、労働者がきちんとモチベーション高くイキイキと働いて、生産性が高い状態になるかということが一番の目的でして、それって上司にとっても組織にとっても本来望ましい形だと思うんですね。で、その一環としてハラスメントというのがあると、やはりモチベーション下げますし、メンタルの諸症状が出ますし、離職の意志も上がるということで、どう考えてもハラスメントはない方がいいですよねというので、じゃあモチベーション高く部下を指導するためには逆にこういった方法がありますよってアプローチのしかたを話せればいいんですけれども、そこになかなか注目されないっていうのが私自身悔しいなと思っていたところでした。

小島氏
なんか科学的アプローチっていうの、読んでいておもしろかったですよね。あ、なるほどと、色々なねエビデンスというか証拠だとかデータだとか出てきて。

大竹氏
この『パワハラ上司を科学する』で、これは今までのパワハラ対策本とはどういうふうに違うところがあるんですか?

津野氏
いままでのパワハラ対策本、私も結構いろんな本を買っていまして、まだまだ私が入れる隙間があるっていう調査したことがあるんですけれども、大体が2パターンにわかれまして、一つが弁護士の法律家が書かれた裁判例を基にしてどこからがハラスメントなのかというのを論じるもの、二つめがハラスメントの相談対応者ですね、人事部門だったりコンプライアンスだったり、そういった相談窓口を経営している人がハラスメントの相談ケースはこんな分類があるというふうに経験則をまとめているもの、これに大きく分けられると。
ただ誰も科学的な知見に基づいて話してなかったということで、あっこれならば私が書かなきゃいけないなというふうに思ったと。

小島氏
なぜ起きるのかっていう発生要因とかメカニズムとか、科学的研究が進んでいるにもかかわらず、そこについては日本ではあまり充分に解説がされていない・・・っていうことですね。

津野氏
そうですね。まず、科学的知見になかなか研究者でない方が着目するというのがやはり情報のアクセスの仕方から難しいと思うんですね。
なかなか普段、私も研究者になる前に英語の論文すぐ読めといわれたらそれは出来なかったというのがありますので、それはアクセスが難しいのは翻訳者が必要だろうというふうに思っていました。で私が翻訳者となって自分自身も研究を実施するかたわら、研修をやればいいと最初思ってたんですけれども、10年間どこで研修しても、皆さんこんなこと初めて聞きましてって言われるんですね。もっと早く知りたかったですと。それを聞き続けると、あっ私一人は限界があると思いまして、私の分身として働いてくれる本を作ろうと思ったんです。で、この本を読んで、色んな人がこの本を基にこういったことが分かってるよっていうふうに、逆に伝える側になって頂ければ、もっと倍速で加速できるなと思ったんです。

小島氏
じゃ私も踏み込んで、末席で頑張ります(笑)

大竹氏
だから、今までの認識だとねえ、ハラスメントかどうかは相手が不快に思うかどうかで決まるみたいな紋切り型のがあって、ああそうなのかなあとオレもなんかちょっと思ったりするんだけども・・・、そういうことじゃないんですね?

小島氏
中にはハラスメントなんて「受けたって言ったもん勝ちだよねえ」っとか言って、「あんなのって酷くない」という人もいましたけれども、そういうことではないと・・・。

津野氏
そういうことではないんです。
一番ハラスメント対策の中で誤解が受け手によってハラスメントが決まるというところですね。で、これはマイナスの面でもプラスの面でもよく使われることがあって、よく言われるのは受け手が弱いからこれをハラスメントと思うんだという受け手を非難するやり方と、あとは別にこれを自分はハラスメントとは感じませんと、だからどんどんやってくださいって上司もそれに乗じてさらにやってしまうと・・・。

小島氏
部下の側がね

津野氏
はい、僕は大丈夫ですということで・・・

小島氏
まわりが心配しても、僕は大丈夫ですからこれはハラスメントじゃないんですよって言うと、まあ実質津野さんからご覧になったら、パワハラをしている状況であってもそれが見逃されてしまうと。

津野氏
そうです。で上司もブレーキをする理由がなくなってしまうっていうのがあるんですね。で、それを組織も認めてしまったりするんですが、もうすでにですね本人がダメージを受けていようが受けていまいが変わらなくて、その部署にパワハラが発生していること自体がその部署で働いている人間をメンタル諸相にさせやすくして、離職の意志を高めるということがもう分かっているんで・・・。

小島氏
他にもいっぱい働いてますからね、同じ場所で・・・。

津野氏
そうです。実は受けてる本人がいかに良くても、まわりの人がそれで疲弊したりするってことがよくあるんですね。なので、受け手の問題は実は受け手がどう思っているか、ほぼ関係ないんです。そこはまったくもって問題ではなくて、客観的に見てそれが指導の範囲を超えているのか、職場環境を害しているのか、ここだけに着目してそれが対処が必要なのかを判断すべきだと思っています。

大竹氏
そうか、指導の範囲を超えているっていうことが要因になるわけだ。

津野氏
そうですね。正確な定義でいうと、業務上必要かつ相当な範囲を超えていること、これがあればパワハラの一つの要素を満たしているということになります。

大竹氏
いまこれが話題になってるけど、昔からありましたよねパワハラは。なにか変遷はあるんですか、それとも量的には減ってきてるんですか増えてきてるんですか?

津野氏
これはよく質問されるんですけれども、量的に増えているかどうかは正確には言えないんですが、恐らく発生件数はそれほど減っても増えてもいないと思います。ただし、相談件数は激増しています。例えば厚生労働省が全国の労働局でパワハラに関する、或いはいじめ嫌がらせに関する相談を受けているんですね。で他の労働に関する相談の中でもダントツのトップがいじめ、嫌がらせに関する相談で、その割合は年々増えているので、明らかに問題意識は上がっている。ただし、恐らく件数としては増えているというよりも、多くの人が自分が受けていることがパワハラじゃないかと気づきやすかったことが原因だと思われます。

大竹氏
会社があります、どの層の人がこのパワハラとかっていうのを受けやすいんですか?それともしやすいんですか?

津野氏
社会全体で見たときと、組織の中で見たときとがあるんですが、社会全体で見るとやはりですね弱い立場に置かれている人、非正規職員の方、収入の低い方の方がパワハラは受けやすいことが分かっています。

大竹氏
正規と非正規だったら非正規の方・・・

津野氏
はい、非正規の方が受けやすいです。ただし、日本独自の特徴として、実は中間管理職も非正規職員と同じくらいの割合でパワハラを受けているということが分かっていまして・・・、

大竹氏
中間管理職と言うと、上がいて、・・・その上からのパワハラ・・・・。

津野氏
はい、さらに自分の上がいる管理職。もしくは役員からのパワハラですね。

大竹氏
役員!?

津野氏
はい、例えば部長であっても役員からパワハラを受けたり、役員であっても社長からパワハラを受けたりと、自分の上に人がいる限りパワハラを受けるリスクはあって、海外だとマネージャーというポジションの人は明らかにパワハラを受けるリスクが低いという結果が共通して出ているんですね。日本だけマネージャーっていうポジション、管理職になっていてもパワハラを受けているという傾向があって、これも特有です。

小島氏
新卒一括採用、年功序列でずっと年齢とともに階段上がっていって、いまや自分の上にいる人が定年退職するまでずっと社内のどこかに居続けるとかね、日本独自のというかね、日本ではいままで普通とされてきた働き方、雇用の形態というのもそこには影響している?

津野氏
そうですね、雇用、特に終身雇用ですと、他の会社を見ずにずっとその会社だけで過ごすので、独特の組織文化というのが発達しやすいんですね。その組織文化になじんでいる人はかなり快適なんですけれども、ちょっとなじめなかったりとか浮いてしまったりとかするような人は容易に攻撃対象になるということが分かっていて、途中まで良くてもちょっと会社の方針についていけなくなったとっきに攻撃の対象になってしまったりとか、上司が違う風を吹かせる人を標的にしてしまったりとかっていうのがあるので、人の入れ替わりが少ない組織ほどそういった組織風土によるハラスメント、パワハラが起こりやすいということが分かっています。

小島氏
だから中間管理職であっても永遠に上の人に気を使い続けるってことですね。
あの、興味深かったのがパワハラを引き起こす上司のタイプをいくつかに分けているという部分でしたね。3つあって、脱線型、専制型、それから放任型で、日本はこの放任型が多いということでね。

津野氏
そうですね。日本の調査といってもあくまでも地方公務員の調査ではあって、民間企業ですべて調査したわけではないんですけれども、米国などの調査と比べると放任型の上司の割合は日本は多いという結果でした。

小島氏
これ簡単に説明すると脱線型、専制方、放任型ってどういう違いがあるんですか?

津野氏
まず脱線型は、組織の中のある程度のポジションまでは順調に昇進して何も問題がなかったんですけれども、あるときから自分の利益、保身に固執するようになって、自分の存在を脅かす人を攻撃したりとか、あとは新しい文化とか何か技術を入れようとする人を攻撃したりとかっていうことで、正規の望ましいルートから脱線してしまうタイプの上司のことを脱線型と言っています。こういった人たちは新しい技術を否定しがちなので、部下が何か新しいことをしようといするほどパワハラしてしまうということで、部下をいじめたり侮辱したりすることにつながると言われています。

小島氏
専制君主の「専制」ですよね、このタイプは?

津野氏
専制君主の言葉通り、暴君ですよね、これ言っていいのかどうかわからないですけど、ロシアのプーチン大統領が代表例かなあと思いますけれども、自分の言うこと、自分のやり方以外を一切認めないというタイプです。これは昔っからこのタイプは存在したといわれていて、中国の始皇帝などもそういうタイプだと言われていますけれども、歴史的にもかなり古いんですが、たまに大きな成果を組織でですね達成してしまう場合もあるんですけれども、多くの場合は部下が疲弊して辞めていったりとかするということで、組織にもダメージを与えるリーダーシップであることが分かっています。典型的なパワハラタイプですね。

小島氏
3つ目はその日本に多い放任型の上司・・・。

津野氏
はい、放任型に私が特に着目しているんですけれども、なぜかっていうと、所謂何もしないタイプの上司っていらっしゃいますよね。ま、管理職として席には座ってらっしゃいますけれども、ちょっと何しているのか良く分からないとか、よく席からいなくなってるとかですね、そういった人って何となく何なんだろうと思われても特に害はなさそうだと思われてることがあると思うんですが、実はかなり害をもたらされるということが分かっていて、放任型だと必要な指示、あるいは指導とかないので、部下の間で責任のなすりつけ合いとか仕事の押し付け合いが発生しやすいということがわかっています。そうすると部下どうしの上下関係などによって、また先輩が後輩をいじめるとかですね、何で私がこんなことやってるのにあの人はやらないんだというような非難攻撃が始まったりということで・・・。

小島氏
いるだけで何もしないリーダーなので、みんなリーダーの下にいる人たちの中で力関係によっていじめとかそれこそハラスメントとか、仲間割れとかが起きてしまって、それも放任しちゃうわけですね。

津野氏
そうなんです。
で、そういった職場をかなり不安定な環境にしやすいということが分かっていて、そこからうつ病などの発症ももたらしやすいということが分かっています。

大竹氏
自分たちで管理職になった人が注意しなくちゃいけないことが多いと思うんですが、パワハラをしてしまう人の特徴みたいなことは列挙できるんですか?

津野氏
パワハラをする人の特徴は、列挙できます。
勿論いまのリーダーシップの形態がどれかにあてはまるというのもそうなんですけれども、パターンがありまして、自尊心が不安定に高いということですね。

小島氏
不安定に高い・・・、自尊心が不安定に高いってどういうことでしょう?

津野氏
プライドがすごく高そうに見えて実は弱い人ですね。そういう方というのは自分のプライドを傷つけまいとして他者に攻撃的になるんですね。自分が何か身を守ろうとすると攻撃することで自分はまだ安全だという基地を作るという傾向がありまして、そういった方は他者を認めることができないので、攻撃的な行為、つまりパワハラをしやすいということが分かっています。

小島氏
例えば自分は優秀だぞ、自分は仕事出来るぞっていうプライドはあるけれども、例えば人に「えっ?それ違うんじゃないですか?」とか「えっ、もう古いですよ」とか、何かネガティブなことを言われることに異常に弱いとかそういうタイプですか?

津野氏
そうですね。なので、新しいアイデアというのは歓迎できないですし、自分のやり方以外を認めたくないという思考になってしまうんです。

大竹氏
それ以外にもね、ここに他者に対する期待水準が高すぎたりするとか、感情知能が低いとか、周囲に対して厳格な親のように接するとか、気を付けなくちゃあいけない点がたくさんありますねえ。

津野氏
そうですね

大竹氏
こういうことって基本的にはヨーロッパの方が敏感だと、日本は長年年功序列と、それから会社が家族みたいな風潮っていうんですか、そういうのがある中でいまでもそういう会社のあり方って脈々と続いてきてますよね?そうすると、上司だった人がよっぽど自分で気を付けないと、なくならないということになっちゃいますねえ。

津野氏
そうですねえ、上司の人がもちろん気を付けられれば良いんですけれども、個人的にはですね、あのうー、上司の人に自分で気づいてもらうのは、もうあきらめた方がいいと思っておりまして・・・、

小島氏
気付ける人だったらやらないですもんね。

津野氏
そうです、気づける人はこういう本を自分から読んでいます。で、これも気を付けよう、これも気を付けようって、さらに良い上司の像を獲得してるんですね。

小島氏
いまこの話を聴きながら、ああ自分は違うよなあと思ってる人こそ気を付けた方がいい。

津野氏
そうなんです。気づいてもらうのはおそらく無理ですね。なので組織側が不適切なリーダーシップだったり、或いはパワハラしている人を処分したり注意することで、気づいてもらわなきゃいけないと・・・。

大竹氏
さっき列挙されたパワハラの色んな型がある人達は、自分たちはこれを気づけないということになりますよね。

津野氏
自分で気づくのは非常に難しい、気づけないことはないですけれども難しいと思います。

大竹氏
だから、いまそういう役員とかそういうのに就いてる人たちは、組織を会社自体がちゃんと点検したり、上司のあり方みたいなことを会社自体が変えていこうとしない限り、いまおっしゃったように脱線型であろうと、宣誓型であろうと、このままいっちゃうわけじゃないですか。

津野氏
そうですね、基本的にパワハラが横行している会社からよくご相談を受けることがあるんですけれども、うちに有名なパワハラ上司がいるんですと。で、全然パワハラ止めてくれないんですっていう相談がくるんですね。あっそうなんですかって、どんな懲戒処分したんですか?って聞くと、してませんって、皆さんおっしゃるんですね。

小島氏
そりゃ辞めないよねってことになるわけですね?

津野氏
そうなんです。懲戒処分してなかったら、それはだってダメって言ってないってことですよね?と。「そうなりますかねえ・・・」って感じでガクってきてしまうんですけれども・・・。

小島氏
つまり組織の側はいままでの日本型の組織だとか、日本型の忠誠、忠実なメンバーであることを組織に対して重視する、メンバーシップ性と言われたりしますけれども、こういう職場自体を変えないとパワハラはなくせないよねって発想にまず立つことから始めなくてはいけないと。

津野氏
そうなんです。
まずはきちんと組織のトップが、パワハラがいかに組織にダメージを与えるのかというのを正確に認識しないといけないんですね。で、いままでは多少パワハラがあっても、業績がその部署だったり会社としての売り上げが立っているのであれば、黙認しても良いという考え方が横行していて、それで正式な処分がされていないというケースがほとんどでした。

小島氏
いまはパワハラをする人っていうのは優秀じゃないってことですよね、いまは。

津野氏
もちろん優秀では全くないってこともそうなんですけれども、そこに気づけていないということですよね。

小島氏
そうですよね、そこの価値観を変えなくちゃいけない、優秀の基準の中に仕事の業績が高いとか、部下を引っ張っていく力があるとか従来の基準しかないから、そこに新たな基準としてハラスメントをしないということが優秀者の基準に・・・

津野氏
そうなんです、もう人事の評価基準にそこを入れなきゃいけないんですね。

大竹氏
そうだよねえ。だからさっきからおっしゃっている宣誓型とか放任型とか、私はどうか知らんけど、こいつらは直らないわけだから、黙っていたって・・・、そうすると組織自体が含んでる問題っていうことになって、さっきの相談で「うちパワハラが多いんですけどどうしましょうか」っていったら、懲戒もなにもしてないんだったら変わっていかないっていう話になっちゃいますよね。

津野氏
そうですね。

小島氏
同時に私、これね、津野さんが著書の中で挙げていらっしゃるパワハラの人の特徴5つ、
1.自尊心が不安定に高い
2.社会適応力、つまり感情知能が低い
3.想像力が乏しい
4.他者に対する期待水準が高い
5.周囲に対して厳格な親のように接する
この5要素は極端に強い人っていうのは、あっ困った人だなあっていって、アイツはって言っていうふうにね、もともと人から識別しやすいですけど、でもこの5要素ってどんな人の中にもある程度はある気もするんですよ。例えば一緒にいる相手とかおかれた環境の中でつい強く出っちゃったり、なにか親みたいな態度で接しちゃったりってことって、割とね多くの人にそういう可能性ってある気がして、だからどっかにいる特殊なパワハラ人格をもった人たちをどうにかするというよりも、いつ誰がパワハラ人格、というかパワハラ上司になってしまうかわからないという前提で考えないといけない気がするんですけれど。

津野氏
本当にその通りでして、私よく研修でも言ってるんですけれども、パワハラをするポテンシャルがあることと、実際に行動に移すことは別問題だという話をしているんですね。いまパワハラをしてしまう特徴として、自尊心が不安定に高いとか、感情知能が低いって挙げましたけれども、これはポテンシャルであって、ポテンシャルがあるからといって、直ちにその人たちがパワハラするかというと別なんですね。

小島氏
ま、そういう要素がある、イコールそういうことをする、とは限らない、けど要素は誰の中にでも・・・

津野氏
あります。
やっぱりありますし、実はだれもが自分がパワハラをするポテンシャルがあるんだと気づくことの方が大事ですね。

小島氏
しかねないぞと

津野氏
そうなんです、みんなの問題なんですよ、ってことです。

小島氏
ことによっちゃあ、やっちゃうかもしんないぞ、と。

津野氏
そうです、そうです。

大竹氏
さっき、売り上げみたいなことがよければ、不問になっていくイメージってありますよね。

津野氏
そうですねえ。そういう会社ではやっぱりパワハラが多いです。ノルマ至上主義と売り上げ至上主義のところですね。

大竹氏
でも現実に会社が動いていくのは売上を上げて、ノルマを達成して、・・・みたいなことが、だからパワハラは会社がつぶれていく要素じゃあないじゃないですか。

津野氏
はい。

大竹氏
でも、具体的にこういうい上司がいるって事実は変わらないわけじゃないですか。どこがどう変われば、なんていうんですか、会社自体が売り上げを伸ばすそういう方向性をとるのも、しかも会社の中がもっと風通しがよくなるのも両達成していける形になるんですか?

津野氏
あのですね、一つできることとしては、会社がですねパワハラをしなくても業績を上げている人を見つけ出して、その人をきちんと評価するということなんです。その人を評価すれば、あっこれが評価されるんだという基準が一つ示されるので・・・。

大竹氏
なるほど

小島氏
みんなにとって優秀な、有能な人のイメージが変わるわけですね。

津野氏
そうです。
うちの会社が今後評価する上司はこれですよ、とまず提示することなんですね。そうすると誰でも評価されるところに行きたいですよね。それで昇進されるってことが決まれば、みんなが行動を修正しようというモチベーションになるんです。なので評価の基準を決めることが大事です。

大竹氏
評価は誰が決めるんですか(笑いながら)

津野氏
勿論組織のトップができればいいんですけれども、人事などが動いて会社全体で作れば、一番いい・・・(笑い)

小島氏
あのう、さっきのお話しの中で、誰にでも状況によってはパワハラ上司になってしまうかもしれない、パワハラをしてしまうかもしれない要素がありますよと、だからそう心得た上で行動することが大事ですって・・・、大事なポイントだと思うんですけれども、では実際に自分がパワハラ上司にならないようにするためには、できることって何があるんですか、そしてこれから必要になる新しいリーダーシップ像でどういうことでしょうか?

津野氏
パワハラ上司にならないために、第一線に必要なのは、自分自身は優秀で、他者よりも優れていると思わないということからスタートですね。あのう、様々な研究で、自分が地位が高いとかですね、収入が高いと思うと、人は傲慢さを手に入れるってことが分かっていますので、まずそれを自ら手放しましょうっていうのが最初の一歩です。

小島氏
で、新しいリーダーシップっていうのはどういうものが・・・

津野氏
一つパワハラの発生を抑制することが確認されているリーダーシップとして、個別配慮型リーダーシップというのがあります。主に3つの要素がありまして、
1つめに部下の長所を伸ばすようにしていること
2つめが部下一人ひとりが違うニーズであったり、モチベーションであったり、技術であったり、キャリアの展望というものを持っていることを頭に入れて接するということですね。多様性を認めると言ってもいいかもしれないです。
で3番目は、単なる集団の一員としてではなく、個人として接するということで、個別のニーズに合わせて指導すれば、基本的にはハラスメントにはなりにくいと考えています。

小島氏
相手も自分も立場の違いがあっても対等な人間だから、人間を大事にしようっていう気持ちを・・・

津野氏
そうなんです。
たまたま上司、部下であって、人間としては対等であるということですね。人はそれぞれ違う価値観をもってっているということ、お互いにそれを認め合いましょう、ということが基本的かなというふうには思います。

小島氏
はい、まあね、ご本を読むといまお話しを頂いたことが色々詳しく述べてありますので、是非読んでいただきたいです。
『パワハラ上司を科学する』、ちくま新書から好評販売中です。最後の第5章にはパワハラ上司にならないためにはどうしたらいいのかのメソッドも詳しく解説されていますので、是非お手にとってお読みください。有難うございました。

津野氏、大竹氏
有難うございました。

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