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ラジオが大好き

 きっかけは、今から半世紀以上も昔、小学五年生の時に作ったゲルマニウムラジオだった。

 色々な電子部品を『はんだ付け』し、最後に電線と釘で作ったアースを窓の外から垂らして地面に刺した途端、イヤホンから飛び込んできたアナウンサーの声を今でも鮮明に記憶している。

 それは、NHKの気象情報だった。

 男性アナウンサーの発する「ミリバール」という単語の響きが心地よかった。

 感度の良くないそのラジオで色々な番組を聴くようになった。

 中学生になると、ポケット型のトランジスターラジオを布団の中に持ち込んで聴くようになった。

 高校生になるとFM放送を聴くようになった。

 良く聴いたのは、平日午後六時からの「こんばんわ、田中…正美です」のナレーションで始まり、次いでポール・マッカートニーの『ママ・ミス・アメリカ』が流れるFM大阪の「ビート・オン・プラザ」。

 余計なトークを一切排除して最新かつ最先端のLPレコードを選んで、A面もB面もきっちり放送してくれた。

 LPレコード盤が高価で買えない私にとって貴重な番組だった。

 そして夜は、城達也さんのナレーションで有名な「ジェットストリーム」。

 城さんの声と『ミスター・ロンリー』のストリングスが大好きだった。

 この二つの番組は、私の思春期から青春時代を彩ってくれている。

 社会人になってからは、平日の朝は通勤時にAM放送を聴き、夜と休日はFM放送を掛けっぱなしにしていた。

 定年退職の日、明日から通勤時にラジオを聴けないと思うと寂しかった。

 退隠した今では日中はFM、夜は寝ながらAM放送を聴いている。

 ずっと、ラジオが傍にいてくれた。

 そして、これからも…。
                 <了>