人生を狂わす「人生を狂わす名著」
これは、三宅香帆氏の罪を告発し、相応の罰を求めるものであります。
わたくしは、氏に人生を狂わされました。氏の言葉は無防備なわたくしの心に深く突き刺さり、それは酷い傷を負わせました。これはれっきとした傷害であります。
しかも、あろうことかその凶器として、どうしたって否定も反論も存在の抹消もできない、名著だとか古典だとかを利用しました。これを悪質と言わず、何を悪と言うのでしょうか。
なぜ氏の言葉がこれほどまでにスルスルと刺さるのか、それは図星だからであります。畜生め。もっとも、氏がこんなにも正確にわたくしのことを分かっているのは、わたくしをストーキングしていたからに決まっています。調べてみて下さい、きっとストーカー規制法に抵触している証拠が見つかるでしょう。そうでなければおかしい。
また、氏ほど、反社会的勢力という言葉にふさわしい人物はいないでしょう。暴力による秩序よりも、古典や名著の方がよほど社会に反しているのは明らかであります。だから「図書館戦争」では本が狩られるのです。
氏は、あらゆる反社会的勢力より危険です。どれくらい危険かは、読めばすぐに分かります。もっとも、ぺらぺらと数ページめくるくらいではその尻尾は掴めないので、必ず最後までお読みになって下さい。
氏は、「善人」あるいは「良識ある知識人」もしくは「知性ある教養人」それとも「品格あるカッコいい大人」はたまた「クソ真面目な優等生」のいずれか又はすべての皮を被った悪魔です。その証拠に、以下のような文を引用するのですから。
「自己嫌悪の強い人というのは、自分の悪いところを客観的にみつめる良心的な人間であると自分では思いがちだけれども、実際には自分を客観的に見られない偽善者である」--岸田秀『ものぐさ精神分析』(本文より)
このような想像を絶する凶器を使用されては、止血しても止血しても、流血が止まりません。止血しようと押さえるほど、深くくい込んでいくようです。だのに、氏はこのような凶器を振り回すことを生業にしているというではありませんか!間違いありません、そのうちきっと、犠牲者が出ます。空に魅入られ、空に消えた「人間の大地」の作者のように。
憧れや空と同じく、本も致死量のある危険な薬物です。正常な人間が服用していいモノではありません。「ただしい」のはまっとうとも思わずにまっとうに生きる人びと。「世界は美しく、人間は素晴らしい。」それで良いのです。だのに、氏は「世界は思い込み、人間は壊れたラジオだ。」なんて言うのですからまったくけしからん。氏だって、人間であり、世界であるのに、ですよ。そうして、数多の人の人生を狂わせていくのでしょう。しかも氏は読者がどうなっても責任はとらないし、それどころか責任を取ってくれと詰め寄ろうものなら「それならこれを読め!」と新たな本を差し出すでしょう。とんだ悪徳商法であります。
このような超危険人物である氏の暴走を止め、世界に今までどおりの仮初で生ぬるいベタ甘の見え透いた偽装秩序を取り戻し、氏の罪を徹底的に断罪するためには、氏が論拠と言って挙げている本を片っ端から読まなくてはならない、と思うと夜も眠れません。わたくしには、常識を疑うという重要な為事(*)があるというのに。もはやこれは公務執行妨害です。
氏についての罪状を挙げればキリがありませんので、詳しく知りたい方は本書を読んでいただきたいのですが、最後に一つだけ、これだけはどうしても言わせて下さい。氏の最狂最悪の罪は、「氏に罪があるかどうか分からなくした」ことであります。果たしてわたくしは本当に傷ついたのでしょうか。もともと刺さっていたものを抜かれただけなのでしょうか。
氏はわたくしたちをそのような混乱に陥れ、自らの罪をうやむやにしたその上で、なにやら「人間と自分を愛せるようになったような気持ち」にさせるのです。まったく許してはならない才能であります。
この才能にほだされたため執行猶予付きを認めますが、しかし猶予期間に1冊でも本を読もうものなら、即、「その生命の続く限り孤独に本と戦い、その模様を発信し続ける」刑での、無期懲役を希求いたします。
--
「世の中には、現実を忘れさせる本があるけれど、同時に、現実をより深く突きつけて、その見方を変える本もある」(本文より)
本書が、そんな本のうちの一冊であることは間違いありません。
神無月の終わりに、愛を込めて ほかる
*常識を疑うことについては、以下の記事をご覧ください。