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外国人患者・医療者双方の安心・安全な医療連携を支える国際室【#在宅医療研究会レポート(2019/7/10①)】

7月度の在宅医療研究会が開催され、4つのテーマで講演が行われました。

■講演①
演題「NTT東日本関東病院における外国人受診受入れの現状について」
演者:NTT東日本関東病院 国際室副室長・外国人向け医療コーディネーター 海老原 功先生
 
■講演②
演題「NTT東日本関東病院における患者支援とリソースナースの紹介」
演者:NTT東日本関東病院 総合相談室 宗川 千恵子先生
 
■講演③
演題「糖尿病看護認定看護師の活動について」
演者:NTT東日本関東病院 糖尿病看護認定看護師・糖尿病療養指導士 天野由梨先生
 
■講演④
演題「精神看護専門看護師のお仕事」
演者:NTT東日本関東病院 リエゾン専門看護師 山本 沙織先生
 
※今回は講演1についてレポートさせて頂きます。

テーマは「関東病院における外国人受診受入れの現状について」

登壇して頂いたのは、NTT東日本関東病院の国際室副室長・外国人向け医療コーディネーターである海老原功先生です。

NTT東日本関東病院は、NTTの職域病院として開設し昭和61年に一般開放された、保険診療を始めて38年目となる地域の中核病院です。
一日約1,800人の外来患者、年間で約15,000人の入院患者を抱えるNTT東日本関東病院。外国人に関する制度や施設認定として「国際病院評価機構(JCI)認定」「JMIP(外国人患者受け入れ医療機関認証制度)認証」「JIH(ジャパン・インターナショナル・ホスピタルズ)推奨」を取得しています。
 
外国人患者対応の沿革として、2005年から近隣中等諸国大使館と連携、2012年に電子カルテに国籍情報入力を開始、2016年には訪日外国人旅行者受け入れ医療機関登録(観光庁)、JMIP認証(厚労省)を取得、地域における外国人患者受入れ拠点病院(厚労省)となっています。また同年、非居住外国人患者の診療点数を日本人の倍となる1点20円化に設定しています。これは言葉や文化の違いから説明や治療にかかる医療者の負担が大きくなることや、日本の保険診療の4割が公的な資金から賄われていることから納税をしていないことから行われた外国人の負担の引き上げです。また、本人確認が難しい外国人患者の身分証確認の徹底を行い、国籍情報登録や確認に努めています。
 
NTT東日本関東病院は品川区の北辺にあり、品川駅がある港区とも隣接しています。ターミナル駅である品川駅・羽田空港などから近く、品川周辺にはホテルも数多くあることから近隣エリアにはインバウンドの外国人が多く宿泊・滞在しています。その影響で、NTT東日本関東病院には訪日外国人の外来受診者や救急搬送者も多いそうです。
 
病院の近隣の区(港区・品川区・目黒区・大田区・渋谷区)の在留外国人の比率は平均3.97%で、中国人が最も多く韓国人・米国人・フィリピン人などが多く滞在しています。また、訪日外国人の人数は年々右肩上がりで増加しており、2018年には前年比8.7%増で3,119万人の外国人が訪日。うち1,377万人が東京都内を訪れています。
 
そんな現状の中、訪日外国人旅行者の旅行中の怪我・病気は全体の約6%、そのうち医療機関を受診する必要を感じた人は26%。旅行者(調査対象者)全体で見ると1.5%が訪日旅行中に怪我や病気になり、医療機関に行く必要性を感じていたということになります。
 
NTT東日本関東病院には年間約6,000人の外国人外来患者が受診、国籍で見ると中国・韓国・アメリカなどが多く、ペインコントロール目的で通院される方が多いそうです。入院患者は年間で約160人、診療科目は産婦人科が最も多く、出産や産後の婦人科系疾患などで入院されるケースが多いそうです。

NTT東日本関東病院の「国際室」

NTT東日本関東病院ではそんな外国人患者に対応するため「国際室」を設置。英国医師免許を持つ佐々江医師(室長代理)をはじめ、英語医療コーディネーターである海老原先生(副室長)など、英語・中国語で通訳できるスタッフが在籍しています。
 
国際室では、院内での通訳全般、連携医療機関・外資系企業・アシスタンス企業・メディカルツーリズム企業などからの受け入れ要請対応、海外からの問い合わせ対応、翻訳業者や通訳業者の対応、国際関連の病院認証対応、国際化委員会の事務局、院内勉強会の企画など幅広い業務を行っています。
 
厚生労働省で行われている「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」から、今後「外国人患者受入れ医療コーディネーター」を強化していく方針が発表されています。外国人患者受入れ医療コーディネーターは、外国人患者が医療機関を訪れた際に当該医療機関内における一連の手続きをサポートし、必要に応じて他の医療機関を紹介する等、円滑な医療提供体制を支える潤滑油的役割を担う調整役。医療機関での院内の手続き、院外機関との連携など、外国人患者がスムーズに入退院・手続きなどを行えるようサポートを行っています。

外国人患者の3つの分類

さて、外国人患者には3つの分類があり、①在留者、②短期滞在者、③治療/検診目的の渡航者に分類されます。

①在留者(対応・注意点)

在留者は90日を超えて滞在(住民として生活)している人で、日本人と同じく保険診療となります。
そんな在留者に対する対応では、日本語での日常会話はできていても読み書きができない場合があります。また、家族や知人が通訳となる場合のプライバシーの問題や、子供を通訳にすることによる学校登校や誤訳の問題なども起こってきます。さらに、文化の違いなどから医師の指示よりも自分の希望(特定の検査や処方)の要求、健診と診療の違いを理解しておらず健診時に治療や処方を求めるなどの問題、保険証の貸し借りによる患者取り違いのリスクなどもあります。外国人同士では割引券の感覚で保険証を貸し借りしてしまうケースもあり、NTT東日本関東病院では名前・誕生日などを各部署で何度も確認し、患者取り違いの回避に努めています。

②短期滞在者(対応・注意点)

短期滞在者は、観光や仕事などが目的の90日以内の滞在者です。
保険証を所持していないため自費診療となります。ほとんどの場合は軽症ですが、重症事例では対応が困難となり、発展途上国の短期滞在者では治療費の未収リスクが高まります。
短期滞在者の対応では、急な傷病による救急要請が増えること、日本医療や文化への理解が乏しいこと、保証人がいないこと、旅行保険に加入していても高額な医療費となると立て替え払いが困難となること、夜間救急でも英文診断書を希望されること、滞在期限があり治療計画に制限がかかることなどの問題があり、どこまで治療するべきかの判断が求められます。
また、短期滞在者ではないものの駐留米軍や外交・公用滞在者(大使やその家族など)は、短期滞在者扱いでの治療適応となるそうです。

③治療/検診目的の渡航者

自国の医療レベルが低い・治療費が高いなどの理由で日本の医療を選択する渡航者です(メディカルツーリズム)。
本来は身元保証機関を通じて医療ビザの手配や前払いなど事前準備を経て入国するため問題がないことが多いですが、友人・知人の案内により観光ビザで入国し受診しようとするケースがあるそうです。その場合、医療ビザや診療情報の準備がなく手続きに時間がかかったり、予想外の医療費による未収問題などが発生します。
 
こうした多様な外国人への対応・トラブル回避のために、NTT東日本関東病院では院内外国語サイン等の充実・指さし会話集の活用・夜間休日の遠隔通訳やテレビ電話通訳の活用などを行っています。
 
また、訴訟リスクの回避のため「診療申込時の個人情報取り扱い同意」「診療申込時の包括同意(研修医の診療行為、宗教・文化、誤訳時の裁判権管轄権、準拠法など)」への同意・サインを徹底しているそうです。
 
支払いに関してはキャッシュレス決済を拡充し、救急センターや夜間休日もモバイル決済やクレジット決済に対応しています。

最後に

海老原先生は最後に、今年のラグビーW杯、2020年のオリンピックを踏まえ、これから増加する外国人観光客の方々・入管難民法改正により増加する共に日本を支える方々にも、安心・安全な医療を提供していきたいと考えていることを語ってくれました。
 
講義を通して、NTT東日本関東病院・国際室が長年外国人患者の対応のためにたくさんの工夫や体制整備を続けていることがしっかりと伝わってきました。
 
海老原先生、ありがとうございました。


●今後の開催予定

今後の予定につきましては下記リンクよりご確認ください。
医療職・介護職・福祉職の方であればどなたでもご参加いただけます。お気軽にお越しください。


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