『在宅の現場での薬と薬剤師の役割』【#在宅医療研究会 オンライン|6月度開催レポート】
第36回の在宅医療研究会オンラインは、「在宅の現場での薬と薬剤師の役割」とのテーマで、アイセイ薬局福生店薬剤師の山本真敬先生にお話しいただきます。山本先生は2011年から調剤薬局にて在宅医療を中心に従事しておられ、薬剤師会西多摩支部の理事や学術委員もされています。
ご紹介いただきました山本真敬です。本日は、「在宅の現場での薬と薬剤師の役割」についてお話をいたします。本日は、普段の業務を通して介護士や看護師の方達と連携して良かったこと、また現場の悩みなども共有できればと考えています。
まず、アイセイ薬局福生店の在宅業務についてご紹介します。1ヶ月に180名程度の個人の患者さんを訪問させていただいています。また新規の患者さんが毎月20名ほどおられます。その他、複数の医療機関や訪問看護ステーションと連携しています。
患者さんはその大半が高齢者ですが、在宅専任の薬剤師がいることから、訪問の時間が柔軟に対応できること、また無菌調剤が可能なこともあり、がんや、臓器不全等の人生の最終段階にある方や、神経難病等の医療的なケアをより必要とする方も多く訪問していることが特徴です。また最近は医療的ケア児にも対応させていただいています。
本日のお話は主に以下です。
1. 調剤薬局の在宅業務
まず、薬局における在宅療養管理指導における在宅患者訪問薬剤管理指導は、在宅での療養を行っている患者であり、かつ通院が困難な方に行うことができます。
また算定には医師あるいは歯科医師の訪問指示が必要で、介護認定のある方は介護保険での適応が優先されます。ただし介護認定されていない方でも、状態によっては医療保険を適応して、在宅訪問を行うことができます。訪問の頻度は、がん末期および中心静脈栄養をしている方であれば、週2回、かつ月8回までが可能です。それ以外は、週1回が上限です。
在宅医療における薬剤師の主な役割ですが、
a.患者への医薬品・衛生材料の供給
b.患者の状態に応じた調剤(一包化、簡易懸濁法、無菌調剤等)
c.薬剤服薬歴管理(薬の飲み合わせ等の確認)、服薬指導・支援
d.服薬状況と副作用等のモニタリング
e.残薬の管理
f.医療用麻薬の管理(廃棄を含む)
g.在宅担当医への処方提案等
h.ケアマネージャー等の医療福祉関係者との連携・情報共有
などが挙げられます。
少し整理しますと、主に在宅医療で利用する医薬品・衛生材料をお届けすること、また残薬の整理をするだけでなく、残薬が出ない工夫をすることも在宅に関わる薬剤師の役割です。
また日めくりカレンダーや服薬支援の機械を使った服薬管理をすることももちろんですが、単に管理することに焦点を当ててしまうと、患者さんによっては薬を飲まされていると感じる方もおられますので、個々の患者さんの理解や状況に合わせて、自主的に薬を飲んでいただけるような関わりもしています。
今回少し掘り下げて説明させていただきたいのは、多職種連携です。
例えば、がん患者さんなどでは、医師や看護師とのミーティングにも積極的に参加させていただいています。
またベッドサイドでの服薬指導をさせていただきますが、その際に薬剤師に薬に対する不安を打ち明けられる方もおられます。さらに訪問時には、薬剤師の視点からのフィジカルアセスメントもさせていただいています。
例えば食事の量が低下している患者さんでは、ステロイドによるカンジダ食道炎の可能性や薬剤による口渇が原因になっている可能性がありますが、患者さんの評価をさせていただき、これらの情報を医師や看護師に共有することもあります。
薬局による在宅管理に至る流れです。
ひとつは入院中の患者さんが退院される際、入院中の医療機関からの提案に基づくもの。この場合は、退院時カンファレンスから薬局の薬剤師が参加させていただくことがあります。
また、地域の訪問看護師やケアマネージャーからの提案によるものもあります。この場合、薬局に直接相談がくることもあれば、在宅訪問医を経由して薬剤師の訪問について指示をいただくこともあります。
さらには、薬局の窓口で家族や患者さんから相談があり、調剤薬局から訪問看護師やケアマネージャー、在宅訪問医に訪問薬剤管理指導について提案することもあります。
なお調剤薬局が訪問業務を始める場合には、医師の指示がなくては始められません。
2. 高齢者と薬/ポリファーマシーと残薬問題
高齢者に要する医療費、特に薬剤費の増加が医療財政を圧迫していることは、周知の事実かと思います。
また高齢者の薬によるリスクですが、高齢者では薬物有害事象が若年者より起きやすいと考えて良いと思われます。高齢者の緊急入院の3~6%は、薬剤に起因するとも言われていますし、薬物による有害事象は、長期入院のリスクを倍増するとも報告されています。
高齢者においては、多くの因子が薬物有害作用の増加に関連していますが、重要なのが薬物動態の加齢変化に基づく薬物感受性の増大と、服用薬剤数の増加と考えます。
ときに10年間も飲み続けているので問題はないと考えられている薬剤であっても、本人が高齢化していることにより、薬物動態が変化し、薬は変わらないのに薬剤感受性が変化することが生じ得ます。
高齢者では腎機能、肝機能、循環機能、筋肉量、水分等、多くの要因が変化していますが、小腸における吸収能力は、あまり変化していません。
これらの変化は、薬物の人体への影響の変化の要因になります。
特に腎機能、肝機能の変化に対する薬物の効果には注意が必要になります。腎機能が低下すると薬が体内に長く排泄されずにいるため、連用により血中濃度が増加し、副作用のリスクが増加したり、効果が過剰に現れたりします。
高齢者において、薬剤の効果が増強されることによる有害事象の代表例をご紹介します。
◎降圧薬では・・・・・低血圧
◎利尿剤では・・・・・脱水/電解質異常
◎経口抗凝血薬では・・出血
◎糖尿病薬では・・・・低血糖
◎非ステロイド性抗炎症薬では・・・消化器症状
◎中枢神経移行性降圧薬では・・・・認知機能障害/運動機能障害
◎抗うつ薬では・・・・抗コリン作用による便秘/口渇/排尿障害
などが知られています。
また、老化現象として身体機能が低下する状態(老年症候群)とは異なり、薬を飲むことが原因となって老化が進み、身体や認知機能が低下する薬剤起因性老年症候群と呼ばれる状態もあります。
様々な症状が薬剤によって起こりますが、なかでも睡眠薬は、ふらつきや転倒、認知機能障害、せん妄、便秘や排尿障害を起こすこともある、薬剤起因性老年症候群を起こす代表的な薬剤のひとつです。
ここで問題のひとつは、老年症候群と薬剤起因性老年症候群の区別がつきにくいことです。
多くの場合、老化現象として考えられがちな身体や認知の機能低下も、もしかしたら薬剤が原因になっているかもしれません。長期服用している薬剤でも、加齢による体内動態の変化によって有害事象が起こりやすくなります。薬剤師に限らず、医師、看護師も注意してみる必要があると考えています。
次にポリファーマシーについてご説明します。
ポリファーマシーとは、多剤服用のなかでも健康やQOL、しいては社会的に害をなす可能性があるものとされています。単に服用する薬剤が多いことではなく、関連して増加する薬物による有害事象のリスクや服薬過誤、また服薬アドヒアランスの低下などの問題につながる状態です。
ここで事例を紹介します。
69歳の女性。要介護2、パーキンソン病を患っておられますが、認知機能の低下はありません。この患者さんは12種類の薬剤を内服しておられました。内服薬の内訳を見ると、パーキンソン病の運動症状に対する治療薬が6種類、さらにパーキンソン病に起因する幻覚や便秘に対する治療薬が2種類ありました。このように12種類の薬を飲んでおられても、その大半は治療に必要な薬であり、内服の結果、健康やQOLの悪化をきたしているわけではありませんでした。この場合、ポリファーマシーというわけではありません。
別の事例、85歳の男性です。要介護3で、高血圧、糖尿病、多発性脳梗塞、軽度認知症、変形性頸椎症、慢性気管支炎など、多くの疾患を抱えておられる方です。
また本人から、「薬が多くて、どんな薬を飲んでいるかわからない」「治療費も安いに越したことはない」との声も聞かれていました。この方の内服薬を見ると、6種類もの便秘薬を飲んでおられることがわかりました。合計で13種類の薬を飲んでおられましたが、排便の状況や食事の摂取状況を訪問看護師と確認をし、便秘薬の減量を医師に提案しました。最終的に5種類の便秘薬を減量しましたが、薬を減らすことで終わるのではなく、その後薬を減らしたことで不都合が生じていないかを確認をしていきます。このように、単に薬を減らすことを目的とするのではなく、患者さんがトータルに良い状態になるようにすることが、ポリファーマシーの解決には重要です。
ポリファーマシーの問題点を挙げましたが、ポリファーマシーを意識するあまり、必要な処方さえも削減してしまう過小処方(アンダーユース)には注意が必要です。アンダーユースは慢性心不全や心房細動、骨粗鬆症、慢性閉塞性肺疾患や悪性腫瘍に多いと言われています。単に薬が多いから減らすと考えるのではなく、必要な薬は減らさないように注意をしなければいけません。
続けて残薬について説明します。
日本薬剤師会の調査では、年間475億円に相当する残薬があると言われています。
ただし正確な数字はなかなか出せませんので、実際は1,000億円以上と分析する専門家もいます。
残薬のきっかけには、さまざまな理由があります。医療者側は、患者さんが飲むべき薬を飲まなかったことが原因であり、患者さん側に原因があると考えがちですが、例えば薬の種類が多いために飲むべき薬を間違えてしまい、そのために残りの薬が合わなくなった、服用回数が多いために飲み忘れてしまったなど、処方する側に改善すべき点がある場合もあります。
また事例をご紹介します。
膵臓がん末期の患者さんです。外来通院で化学療法を続けてこられましたが、余命数週間となり、治療継続困難と判断され、在宅医療に切り替えています。初回訪問時に大量の残薬を確認しました。この方の場合、膵消化酵素補充薬や低アルブミン血症改善薬が多量に処方されており、それに紛れて医療用麻薬であるオキシコドンが飲まれていませんでした。どの薬が必要で、どの薬を飲まなくて良いかが整理されていなかったことが、残薬を生じた原因と考えられました。
別の方で便秘薬として酸化マグネシウム適宜調節と処方されていた事例もあります。この場合も適宜調節とされても患者さんはどのように飲めば良いのかわからず、結果的に残薬につながり、便秘薬の残薬が契機となり、そのほかの循環器系の薬の残薬も増えてしまった方でした。
また70歳女性のアルツハイマー型認知症、要介護2で独居の事例では、元々の内服薬は2剤しかなく、決して多くはありませんでした。この方がある日リウマチ性多発筋痛症との診断を受け、プレドニゾロンの内服を開始されました。このステロイドを減量する際、非常に細かい指示が出されており、指示通りの内服ができなくなり、最終的に残薬につながってしまいました。
3. 在宅緩和ケアにおける薬剤師の役割/医療用麻薬と注射調剤
私たちの薬局では、がん患者さんの在宅緩和ケアにも関わらせていただいております。
在宅緩和ケアにおける薬剤師の役割ですが、麻薬処方箋への対応、医療麻薬の管理や廃棄、薬学的なアセスメントがあります。
麻薬の処方箋については、せっかく医師から麻薬の処方箋を出してもらったのに、どこの薬局が対応できるのか、週末や祝日に対応してくれる薬局はどこかわからない、という悩みをお持ちの患者さんがおられます。そのような方たちの悩みを解決できるように対応しています。
医療麻薬の管理は、2008年の診療報酬改定で「残薬状況の確認」が薬剤師の役割として明記されるようになったこともあり、薬剤師の方でしっかりと対応するようにしています。
これらを踏まえた上で、薬剤師の視点で薬学的なアセスメントを行うことも大切な役割です。
また在宅緩和ケアにおける薬剤師にとって、多職種の連携は重要です。薬剤は適切なタイミングで届ける必要があります。24時間いつでも薬が揃うわけではありませんので、徐々に悪化しているような患者さんでは、その経過を把握し、可能な限り事前に準備をすることが必要です。そのためには、医療機関との連携がとても重要です。
また薬剤師にもadvanced care planning (ACP)に配慮した連携が求められます。看取りの経験が豊富な薬剤師は限られています。本人や家族の医療用麻薬に対する受け止め方は異なりますので、生活に対する希望を確認しながら対応をしています。
痛みのアセスメントの共有も大切です。
患者さんの望みに応じて、患者さんと医師と看護師の間では痛みの改善に対する目標を立て、綿密に連携しておられるかと思います。そこに薬剤師が加わり、しっかりと理解をしながら対応することで、目標とされる痛みの緩和を達成するために薬剤師ができる役割を果たすことができるようになります。
続けて薬局での無菌調整についてご説明します。
無菌調整は、無菌状態で注射液の調剤ができる設備ですが、この無菌調整ができる薬局は、2年ほど前のデータでは国内に1,199施設、都内では132施設しかありません。
注射液の特徴には、速効性があり、効果が確実だが副作用が現れやすい、直接体内に入るために無菌性が保たれなければいけない、品質管理を厳密しなければいけない、などがあります。また在宅で扱う場合、個々の患者さんの生活状況に対する調整が必要になりますし、多くの医療従事者や家族を介した使用も必要となる特徴があります。
薬局で無菌調整を行う注射薬には、高カロリー輸液製剤(TPN)があります。無菌調整を行うことで、ご自宅の冷蔵庫で1週間ほど保存ができるようになりますので、在宅で続けて治療を希望される方には、無菌調整ができる薬局があることは、とても大切なことだと言えます。他に無菌調整を行う注射薬には、PCAポンプを活用した各種疼痛治療薬などがあります。また対応できる施設は少数ですが、抗がん剤を扱う薬局もあります。
ここで事例をまた1つご紹介します。
40歳代の女性。S状結腸がんの末期で、肝臓と肺への転移があり、播種性イレウスも認められます。実家で療養されていますが、主たる介護者は実の父親。夫は介護に積極的ですが、仕事があるため日中は不在です。小学生になる2人のお子さんがおられます。
この方は、消化管の閉塞があるため禁飲食でしたので、中心静脈栄養を継続して退院されています。
入院中はオキファストの持続皮下注射、イレウスに対してオクトレオチド持続皮下注射をされていましたが、退院時にはオキファストはフェンタニル貼付剤に変更し、オクトレオチドは終了しています。
この方が退院されたのは、コロナ禍の最中であったこともあり、在宅の関係者との十分な情報共有が事前になされずに退院されました。
ひとつ良かったことは、担当となった在宅医が経験豊富な方でしたので、患者さんをみてすぐに、訪問薬剤管理指導の介入を決めてくださったことです。
すぐに薬剤師が入って痛みのアセスメントを行いました。訪問は医師、看護師、ケアマネージャーも同席しています。その結果、退院時はフェンタニル貼付剤のみでご帰宅されていますが、疼痛アセスメントに基づき医師からオーダーを出してもらい、退院当日の夕方には、オキシファストの持続静注とフェントステープによる疼痛コントロールを開始することができました。
また痛みが強い時には、オキシファストをレスキュー的に静注するようにしました。
なお持続注射は、病院でポンプを使うことが一般的ですが、在宅ではディスポーザブルのポンプを利用します。
この患者さんに対し、疼痛への対応は迅速にできたのですが、本人やご家族の医療用麻薬に対する認識を十分に把握できずに使用を開始してしまいました。入院中は医師や看護師が行う疼痛管理に任せておられました。帰宅後、自分たちで疼痛管理を行うようになり、痛みに対し、医療用麻薬をレスキュー的に頻回に使うことに危険を感じられてしまいました。その結果、痛みが強くなっても麻薬をレスキュー的に使用することを控えておられました。
訪問看護のアセスメントで医療用麻薬の使用を控えておられることが発覚したため、薬局薬剤師に連絡があり、対応いたしました。
医療用麻薬に対し、患者さんや家族はさまざまな気持ちを抱えておられます。
例えば、身体的・精神的に依存してしまうのではないか、中毒になるのではないか、などの不安。使うようになればもうおしまいだ、との諦めの気持ち。また寿命が縮むのではないかと誤解をしておられる方、このような方々はまだまだ多くおられます。
不安なお気持ちに対し、医師、看護師、薬剤師はそれぞれの立場で安心を提供しています。それぞれの職種が連携しながら、患者さんが安心して医療用麻薬を使うことができるよう支援をしています。
4. 薬剤の経管投与における薬剤師の役割
現在多くの経管栄養剤が利用できますが、多くは医薬品として半消化態栄養剤を利用しておられるのではないかと思います。
医薬品としての半消化態栄養剤には6種類の製剤があります。それぞれ特徴がありますが、この特徴を踏まえながら、患者さんの状態に応じ、医師と薬剤師が相談しながら使用する製剤を選択することで、患者さんに生じるトラブルを最小限にすることができるのではないかと考えています。例えばハイネックスイーゲルは、食物繊維としてペクチンを使用した液体の濃厚流動食品です。
胃のなかで胃酸によりpHが低下することで液体からゲル状に変化し、食道への逆流を起こしにくくなる特徴があります。この場合、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカー、制酸剤である酸化マグネシウムを使用すると、ゲル化が十分に起こらず、期待した効果が得られない可能性があり、注意が必要です。
また経管栄養によって起こる合併症には、カテーテルに関連する合併症、消化管に関連する合併症、また代謝に関連する合併症があります。
カテーテルに関連する合併症では、閉塞や破損、事故抜去があります。
胃瘻ではスキントラブルなども生じます。消化管に関する合併症では、胃食道逆流症、誤嚥性肺炎、また下痢や便秘が起こりえます。
代謝に関する合併症では、refeeding syndrome、高血糖や低血糖、また微量栄養素欠乏症なども生じ得ます。
こういった合併症には、単に薬を増やすのではなく、経管栄養の方法を工夫することで対処することもできます。
例えば経管栄養による下痢では、投与スピードが速い、栄養剤の浸透圧が高いことが原因ともなります。その他一緒に使用している薬剤も下痢の原因となり得ます。
このような対処は、薬剤師が関与することで解決策を共に考えることができることができるかもしれません。
ここ数年、経腸栄養製品のコネクタが国際規格ISO80369-3に合わせて変更されました。これは輸液等の誤投与を防ぐための変更ですが、新しいコネクタが小さくなったため、薬液を吸いとることが困難になった、栄養剤の投与時の汚染が気になるなどの問題が生じています。これに対し、薬剤師が対応すると、採液ノズルや懸濁ボトルを使用することで、問題の解決につながる可能性があります。
簡易懸濁についてご説明します。
簡易懸濁とは、錠剤やカプセルを粉砕したり、開封したりしないで温湯に入れ、崩壊懸濁させてから経管投与する方法です。55℃のお湯を用意し、処方薬を注射器にいれた状態でお湯を吸い込み静置、5~10分ほど攪拌して崩壊・懸濁させます。そしてその注射器を栄養チューブの先端に取り付けて注入し、注入後は水でフラッシュします。これには処方薬が簡易懸濁に適しているか、添付文書などを確認することが必要ですし、懸濁後は適切な時間内で投与するなど留意点がいくつかあります。
注意が必要な薬剤の例として、
ランソプラゾール(タケプロン®)OD錠をご紹介します。このランソプラゾールの製剤には、マクロゴール6000という凝固点が51~61℃の添加物が含有されています。簡易懸濁すると小さな粒ができてしまいますが、この小さな粒をうまく入れるには多少のコツが必要です。
また凝固点が高い温度ですので、高温のお湯で懸濁すると塊ができてしまい、経管チューブが閉塞する原因となってしまいます。
在宅での経管投与において薬剤師が注意していることは、ポリファーマシーや薬剤によるチューブの閉塞を防ぐために、普段から医師や看護師と連携を図っておくこと、また患者本人や家族の状態に応じて、適切な栄養剤や薬剤を提案したり、家族の薬剤投与をサポートしたりすることです。
また事例をご紹介します。
70歳代でパーキンソン病の方です。要介護5、認知症、誤嚥性肺炎があり、寝たきりの状態です。訪問診療・看護を利用しておられましたが、レスパイト目的で入院した病院で誤嚥性肺炎を起こしてしまいました。その後も肺炎を起こす可能性が高いことが懸念されたため、
胃瘻が造設されて退院することになりました。退院時カンファレンスに、薬局薬剤師も参加させていただきました。
在宅医と脳神経外科からの処方がありましたが、処方薬を見ると、配合変化をする可能性がある酸化マグネシウムとレボドパが含まれていました。この場合、薬剤を変更するのではなく、投与タイミングを調整することで、配合変化を避けることができました。
その他にもデイサービスを利用するので、経管栄養の時間を調整できないか、と相談を受けた事例もあります。
投与間隔を短くすると、吸収しきらない状態で栄養剤を追加投与することになり、下痢や胃食道逆流症など合併症が生じるリスクが高くなります。
この事例では、消化の状況をご家族などからヒアリングをし、どのような間隔で投与することで問題を回避できるか、具体的に提案することができました。最終的には医師の了承を得て、経管栄養の使用方法を修正しました。
5. まとめ
薬剤師の在宅医療における連携ですが、残薬の整理やポリファーマシー対応では、多職種の連携が鍵になります。
在宅での生活を継続するために、薬がボトルネックにならないようにサポートすること、これも薬剤師の役割であると考えています。
以上、ご清聴ありがとうございました。
Q & A
今後の予定につきましては下記リンクよりご確認ください。
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