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次の道へ進むにあたって書き残しておきたいこと
こんにちは、ほかり(@k_hokari_biz)です。2024年2月29日をもって約4年間勤めた株式会社radikoを退職しました。20代後半のほとんどを過ごすこととなったラジコでの日々と、その末に退職という決断をした経緯を、10年後、20年後、50年後の自分のために書き残しておこうと思います。
ラジコに入社
ラジコには、友人の紹介でプロダクトやデータ周りを担当する人として入社しました。
当時からラジコは社員数が少ない組織で、結果的には1人目のプロダクトマネージャーとして参画することになります。以前に勤めていた会社では、新卒入社後にPMを2年ほど勤めた経験がありましたが、当時の自分を振り返るととても1人目PMを勤められるような実力があったとは思えない、というのが本音です。そんな状態でしたので、最初は1人目PMとして何から着手すべきか、それ以前に、協業する方々からどう信頼を勝ち取って業務を進めていくべきか、を冷や汗かきながら模索していたように思います。
アプリの大幅リニューアル
そんな中で、アプリを大幅リニューアルするというプロジェクトが動き出します。MAUでで数百万のユーザーを抱え、約10年運用されてきたアプリを全面リニューアルするということは、想定通り想定外のことが大量に発生します。あれ?これってうまくいかなくない?と気付いてから、夜も眠れない問題に捉われ、このままだとメンタルがまずいと思って、なぜか土砂降りの中ソロキャンプに行き、風邪を引いてより自分を追い込むことになる、というよく分からない困難にも見舞われました。(まじでなんでキャンプ行ったんですかねこの時…)
それでも外部パートナーの皆様や、社内の開発メンバー全員が諦めずに強い気持ちで厳しい意思決定をし続けたと思います。コロナ禍リモートワークという外部環境的な逆境の中でも、社内外問わず一丸となったチームで難題を乗り越えていけたことは、人生という単位でも忘れられない出来事の1つとなっています。私が偉そうに言う立場ではないですが、本当に素晴らしい方々と仕事をしていたのだなと思います。
リニューアルに伴ってアプリを支えるシステムはモダンな技術構成に生まれ変わり、figmaでデザインシステムが構築され、ユーザー行動分析のためのイベントログも精緻化されました。リニューアルの大目的であった新規ユーザーの定着という観点でも、NdayRRが向上していることを確認することができました。
ちなみに、figmaを利用したデザインシステムの構築に関しては、本プロジェクトにも参画いただいていた沢田俊介さんの著書である「Figma for デザインシステム デザインを中心としたプロダクト開発の仕組み作り」をご覧いただくと、その有用性を理解することができます。
※2024年4月5日発売予定
一方で今までのラジコに使い慣れていた方々からは厳しい声をいただいたことや、リリース直後ではいくつか不具合を発生させてしまったことも事実です。様々な反省点と学びを得る事ができたプロジェクトであったと思います。
なお、リニューアルの経緯などについてはプレイド社主催のkarte cx conference 2023に登壇させていただいた際、レポートにまとめていただいたものがあるので興味があればご参照ください。
また、このプロジェクトにはプロダクト開発におけるプロフェッショナルな方々が協業メンバーとして多数参画されており、彼らのノウハウを傍で見ているだけでとても勉強になりました。とても貴重な経験だったと感じています。
開発チームの内製化
当たり前ですが、webサービスは大幅リニューアルを行ったからしばらくは手をつけなくて良い、というものではありません。継続的に改善を進めていく必要があります。特に、配信基盤などのインフラレイヤーと比較して、ネイティブアプリなどのフロントサイドは、日々発生するユーザーニーズや急速に変化する外部環境に迅速に対応していく必要があります。いわゆる開発チームのアジリティ(敏捷性)を高めるために、アプリ開発を内製化することにしました。もちろん世の中では外部パートナーと協業してアジリティを高める手法も盛んに模索されていますが、中長期的な観点からも内製化することの重要性は高いと考えたためです。
とはいえこれも人を入れ替えれば良いというわけではなく、元々存在していた開発ノウハウを明文化して内製チームがキャッチアップできるようにする必要がありますし、スムーズにチームが立ち上がるように一定のルールを策定する必要がありました。(ここでは詳しく書きませんが、ウォーターフォールからアジャイルへ開発体制を変革していく過程は非常に興味深いもので、別でいつかまとめておきたい経験の1つです。) 業務委託の方の採用なども含め、この立ち上げを半年足らずで実行できたことに関しても、社内各位や外部パートナーのご理解と多大なご協力のおかげであったと思います。最高にエキサイティングな組織立ち上げができたことに、本当に感謝しています。
ラジコでの日々まとめ
ラジコでの日々はとても豊かエキサイティングなものでした。未熟であるにも関わらず、色々なことを任せていただき、お陰で大きく成長することができたと感じています。また今の自分に何が足りないのかも明確にすることができました。20代後半の大事な時期をここで過ごすことができて本当に良かったと、心から思う次第です。
退職することにした理由
今まで書いてきたように素晴らしい経験をさせていただいていた関わらず、なぜ今退職することにしたのか?という話についても書いておくことにします。理由は以下の2つです。
外部環境が大きく転換するのを目の当たりにして、チャレンジしたい領域ができた
プロダクトや組織をほぼゼロの状態からつくり上げてみたい、という欲求が高まった
1つ目の理由については、具体的には生成AIの台頭を指します。まずプロダクトやサービスという観点では、これから生成AIを中心にしたプロダクトが多く登場するとされる一方、まだ生成AIと人を繋げる最適なユーザー体験が生まれているわけではないと考えています。これをいち早く発見してプロダクトやサービスに落とし込むことで何が起こるのか、自分の手で確かめてみたくなりました。またキャリアという観点では、これから数年後の未来において、生成AIを利用できる人とそうでない人との間で、10倍、100倍という生産性の差が発生するとされています。となるとシンプルに、生成AIを利用できる人でありたいし、そのためには生成AIにフルコミットできる環境に身を置くべき、という考えに至りました。
2つ目の理由については、ラジコで経験したことが影響しています。先述した通り、ラジコでは主にサービスのリニューアルや開発チームの内製化を経験しました。これらは、既存のサービスや仕組みを別のものに置き換える、というプロジェクトです。となるとやはり、既存の土台の上での変革には「本当はこうすべきだと思うができない」というもどかしさがあったのも事実です。もっと根本的なところから変革したいと思っても、深く打たれた基礎はそう簡単に掘り返せるものではないという現実があります。その中で、まだ基礎も打たれていないような場所でゼロから建物を作り上げてみたいという気持ちが湧いてきました。
最後に、ラジオって良いよねという話
2020年5月22日掲載のラジコの広告に以下のようなコピーがあります。
暗いニュースや批判的なコメントばかりに触れていると、 心がつい疲れてしまう。もしそう感じることがあれば、 ラジオをつけてみてください。
このコピーが表現しているように、私もラジオをつけると心が楽になることがあります。家や職場、学校とは違う癒しの場所で、自分だけの楽しみがある秘密基地のような、そんな感覚がラジオというメディアには存在すると思います。これはテレビや新聞、雑誌といったマスメディアや、SNSやweb記事といったwebメディアのどれでも表現できない特有のラジオの良さです。
特に最近ではアテンションエコノミーという言葉でも表現されるように、接触した瞬間にパッと興味を引くことに重点が置かれたコンテンツが大量に消費されています。アテンションを目的にすることが悪いということではないのですが、そのようなコンテンツ消費には一定の連続的な快感が伴うため、気付かぬ間に時間を浪費して疲れてしまうことがあるでしょう。また、アテンションを重視するコンテンツの表現は過激であることが多いと思います。計らずして直感的に嫌悪感を抱くようなコンテンツに接触してしまうことも多く、心にダメージが溜まってしまうこともあるでしょう。
ラジオはアテンションエコノミーとは距離を置いたメディアです。意識的にそうしているというよりは、そもそも最初の数秒の音声だけでアテンションすることは難しいので、結果的にそのようになっていると言えます。また、アテンションが目的ではないということで、何かが省略されてしまうことも少なく、過激な言葉や表現に対してもその文脈を含めて聴くことができます。「Aさんが過激なボケをして、でもBさんがツッコミを入れて謝罪をする」というような文脈も含めた情報に接触することで、人は直感的な嫌悪感を消化して1つの冗談として受け入れることができるようになるでしょう。
私はそんな独特な良さを持ったラジオというメディアがとても好きです。ラジオって良いよね、って思います。自分がラジコで何を経験できたのか、何をやり残したのか、ということを考えることも重要です。が、やはり何よりも、このような価値を届けるメディアないしプロダクトに携わることができたことは、1人の人間としてとても誇りに感じています。これからもラジコのような、素晴らしい価値を届けるプロダクトに携わっていけたら幸せです。
なお、次の道に進むにあたって考えていることや具体的なアクションについては、改めて別でまとめられればと思っています。
ここまで読んでくださった皆さま、最後までお付き合いいただきありがとうございました。