二重整形したら、幸せか?
※ライティング講座最後の投稿記事です。こちらも掲載OKでした。
過去の実体験をもとに書きましたが、結構頭を使いました。
時系列の表現に手こずりましたが、気持ちが伝わればいいなという一心で書きました。
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小学生の頃、わたしはモーニング娘。が大好きだった。
「わたしもこんな風になりたいな」
なんの疑いもなく思っていた日々。
彼女たちの可愛さはそれぞれで、全員が素敵な魅力を持っていた。
わたしは、鏡を見つめて考える。
「可愛いってなんだろう?」
鏡に映っている「自分」は、決して自分の思う可愛い顔ではなかった。
比べれば、違いはどんどん見つかる。
みんな二重で、鼻がスーッと通っている。
歯並びもキレイで、肌が白い。
デビューしてから、どんどん垢抜けて、
「整形か?」と言われる子もチラホラいたほどだ。
「そりゃあアイドルだもの」
そう言ってしまえばそれまでだが、
当時のわたしにとって、
「目の前でどんどんキレイになる女の子たち」を見過ごせるわけもなく、
劣等感、嫉妬心は募るばかりだった。
何もできないまま、
自分の本来の姿から目を背け続けていた。
そんな中で、最初の挫折を味わうこととなる。
中学校卒業を機に、地元を離れ、隣の市の高校に入学した。
人数も部活数も何もかもが多く、
今までの生活からは考えられない規模になった。
いざ、憧れの高校生活をはじめてみると、
アイドル並みの可愛い女の子がわんさかいた。
美意識が高く、
前から見ても、横から見ても、後ろから見ても素敵な子ばかりだった。
「嘘でしょ……」
夢から覚めた気分だった。
わたしはこれからこの顔で戦っていかなければいけない。
この顔で生きていくんだ。
でも、戦えるだろうか。
生きていけるだろうか。
無力感が押し寄せた。
そのときのわたしは、狭い視野で、人は見た目が10割と信じきっていた。
SNSやインターネットが普及していなかった時代、メイクのテクニックや二重整形の実例などの情報は全然なかった。
どうにかしなければと、雑誌の特集などを読みあさって、
唯一見つけた方法が、「アイプチ」だった。
ひとえまぶたを、アイプチで二重にした。
学校、部活、彼氏の前では常にアイプチをして過ごした。
どんな時もすっぴんでいられる子が羨ましくて、
そうなりたいけどなれないもどかしさに、
顔が歪んでいた気がする。
当時は、「デカ目」が大ブーム。
それに乗っかって、アイプチやつけまつげ、カラコンなどをどんどん使い、メイクという名の仮面を被った。
しかし、流行は終わる。
流れは変わる。
「デカ目」特集は、
「ナチュラルメイク」特集に挿し代わり、
つけまつ毛は、
まつ毛エクステへと変化。
「ナチュラル可愛い」が求められる時代になった。
ひたすら濃いメイクを極めたわたし。
このままではいられない。
そんな焦りから、20代前半に美容整形クリニックを予約した。
ここで、2回目の挫折を味わうことになる。
無料カウンセリングに行くと、
ホームページに載っていた医師とは違う、おじいちゃん先生がわたしのまぶたを見ながらこう言った。
「あなたね〜
こんな腫れぼったい目だと脂肪取らないと無理だね。
脂肪吸引に数十万はかかるよ? それでもいいの?」
当時、簡単で手頃にできる美容整形として「埋没法」という施術があった。
糸でまぶたを留める方法で、切開もしないため、リスクが少ないと言われていた。
わたしはその埋没法を希望したが、
「あなたのまぶたじゃ、無理だよ」と言われてしまった。
その上、脂肪吸引までしないといけないほど、わたしのまぶたは厚かったのだ。
高額な手術代。
なおかつ、やりたい方法ではできないことに、絶望した。
脂肪吸引と聞き、デブだと言われてる気さえした。
すっぴんで、街を泣きながら帰宅したのを覚えている。
それからわたしは、この気持ちに蓋をし、
今までの濃いメイクを続けていくことにした。
幸いなことに、
すっぴんをさらけ出せる友人もいたし、結婚もできた。
わざわざ蓋を開けなくても、生きていける。
そう自分に言い聞かせていた。
しかし、20代後半に差し掛かり、子供も生まれた。
自分のメイク、そもそもの生き方、考え方を変えるときだと察した。
(なんて、かっこよさげに言っているが、
子育て中のメイクが面倒になったのが最大の決め手である)
わたしは、地元の形成外科を受診した。
今度はきちんと話を聞こう。
なにを言われても大丈夫。
わたしは二重になる! という強い意志で向かった。
すると、思いもよらない言葉が返ってきた。
「まぶたが下がって、瞳にかかりそうになっています」
ドキ
「は、はい」
「これは、眼瞼下垂といって、保険適用で手術を行えます。
垂れ下がったまぶたの筋を引き上げて、
それにあわせて二重の処置をします」
「え……?」
眼瞼下垂(がんけんかすい)。
長年の、コンタクトとアイプチ生活。
目をこする癖などにより、まぶたが垂れ下がる症状。
わたしは眼瞼下垂症と診断された。
そして、美容整形で行うと何十万もするまぶたの切開が、保険適用により数万で行えるとの事だった。
突然の展開に、心臓がバクバクしていた。
「本当に信じていいのだろうか」
不安も押し寄せていた。
「でも、こんな転機は二度とない!」
そんな気がしていた。
ちなみに、眼瞼下垂手術は美容整形のように、希望の二重ラインに必ずできるというわけではない。
あくまで医療的観点からの手術である。
わたしは、早々に手術を決意。
そして3時間に及ぶ手術は、無事終了した。
まぶただけに麻酔を打った為、意識ははっきりしていたが、あまり怖くなかった。
抜糸までは、フランケンシュタインのようなまぶたで過ごした。
赤く腫れ、まともに目を閉じられなかった。
手術から1ヶ月後、
わたしは、憧れの二重を手に入れた。
そのときの感動は、今でもよく覚えている。
ずっと鏡を見ては、変わった自分に喜んだ。
それからわたしは、今までのメイクを一新し、
「アイプチ」「つけまつ毛」をゴミ箱に捨てた。
仮面をするためのメイクではない、
楽しむためにメイクができている。
子供とプールや海に行っても化粧の心配がなくなった。
なにより、準備が早く済むから楽ちんになった!
長年の夢が叶い、
今までの辛い思い出が、スーッと浄化されたようだった。
幼心に、アイドルに感じた劣等感、
同級生に抱いた嫉妬心、
大人になってから、打ち砕かれた希望。
すべてはこのときのための出来事だったのか。
と、今なら思える。
念のため伝えておくが、
決して、整形をしろというわけではない。
誰にでも外見にコンプレックスがある。
整形をしなくても、
見方を変えればチャームポイントにだってなる。
ただひとつ言えるのは、
「自分に嘘をつかない選択をしてほしい」
ということだ。
自分に正直に生きれば、幸せになれる。
わたしはこの経験を通して実感した。
あなたも、
固く蓋をした自分の気持ちを
いま一度見つめてみるのはどうだろうか。
思いがけない未来が、待っているかもしれない。
(終わり)