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永久凍土に封じ込められた数万年前のウイルスや菌を全く恐れなくていい理由
ドイツやロシアの研究チームはシベリアの永久凍土に封じ込められた4万6000年前の線虫を蘇生させることに成功しました。
これを受けて、ネット上ではこの線虫が人類に害を及ぼさないか、地球温暖化で永久凍土が解けることで危険なウイルスや菌が解放されて人類が滅亡するほどの惨事になるのではないかと話題になっています。
B級SFにありがちなシリアスな展開ですが、グレタみたいな連中が温暖化の恐怖を煽るロビー活動に利用しそうなネタでもあります。
結論から言うと永久凍土に閉じ込められたウイルスや菌で人類が滅亡することはありえません。
それどころかウイルスや菌が出てきてることにすら誰も気づかないでしょう。
この記事では永久凍土に閉じ込められたウイルスや菌を全く恐れなくていい理由を生物学科出身の専門家の視点から、一般の人にもわかるようにパソコンのウイルスにたとえて解説します。
押入れの奥から出てきた謎のフロッピー
あなたは今部屋の整理をしています。
学生の頃に押し入れの奥に詰めたダンボールを開封し、図工の時に描いた絵などを見て思い出にふけっていると1枚のフロッピーを見つけました。
フロッピーが何かわからない人のために念のため説明すると、2000年代初期まで使われていた💾このような形の記録メディアです。
ラベルには何も書いておらず、中身が何なのかわかりません。
いつ、どのような経緯でフロッピーをここに入れたのか、あなたは一生懸命に記憶を思い巡らせます。
思い起こせば20年以上前、Windows98がまだ現役だった時代に、趣味で撮影した写真や自作の小説を入れたものでした。
しかし当時アイラブユーというウイルスが世界中で猛威を振るっていて自分のパソコンも感染し、このフロッピーが感染源として疑われたため捨てようと思っていました。
しかし捨てると写真や小説も失ってしまうため捨てるに捨てられず、無造作にダンボールに入れてあったのでした。
そして同じ箱の中を見渡すと、フロッピーを読み込む機械があることに気づきます。
これを使うとフロッピーの中身を見ることができる。しかし今使ってるパソコン(Windows11)にアイラブユーが感染してしまうかもしれない!
さあどうする?
Windows11にアイラブユーは感染しない!
Windows11には確か標準でアンチウイルスソフトが入ってたはずだし、OSレベルで色々対応されてるはずだから大丈夫だろう、と思ってエイヤーとUSBにフロッピードライブを突き刺します。
ガコッ…シューガガガガガガ…
懐かしい音とともに20数年ぶりにフロッピーが動き出します。
一瞬ウイルスを検知して削除したというポップアップが出ましたが、何の問題もなくフロッピーのデータが読み込まれて写真や小説を閲覧することができました。
念のためシステム全体をスキャンしましたが、一切の異常は見つかりませんでした。
結果として大丈夫だろうという見立ては正しかったのです。
古いウイルス、それは進化から取り残された化石でしかない
パソコンのウイルスにせよ、人間のウイルスにせよ、ウイルスと宿主の間では常にイタチごっこが繰り広げられています。
ウイルスは脆弱性を利用して中に侵入します。アイラブユーの場合はメールソフトの脆弱性であったり、また見知らぬ人からラブレターが来たらついつい開封したくなるという人間の心理の脆弱性をも突いていました。
新型コロナウイルスの場合はACE2という、ホルモン分子を変換する役割を持ったタンパク質が誤作動を起こして異物であるウイルスを細胞内に取り込ませてしまうという脆弱性を突いています。
これらの脆弱性はウイルスに発見されるやいなや攻撃対象となりますが、やがて対応されて塞がれていきます。
アイラブユーはVBScriptで書かれてますが、Windows11はそれが標準で実行できず、実行できるように設定を変えたとしてもかつてウイルスに散々利用された教訓からその動作には多くの制限がかかっていて、感染なんかとてもできません。
人類の場合はやがてACE2がスパイクタンパク質と結合しないように進化していくと考えられます。
免疫系のバグである重症化も修正されていくでしょう。
数万年前のウイルスであれば今は存在しないような脆弱性を突いていたと考えられますし、そんなウイルスが出てきたところでどうせ何もできないのは目に見えています。
新型コロナウイルスも含めて、現存するウイルスは宿主が対応すればそれを突破するために次の脆弱性を見つけたりウイルス自らが宿主にバックドアを仕組むことで生き残ってきました。
ウイルスと宿主は鍵(と言うより不正解錠ツール?)と鍵穴の関係であると言えます。
変化しなければ淘汰されるのみで、運良く永久凍土に閉じ込められたところでお前はもう死んでいるも同然なのです。
数万年もの眠りから醒めたウイルスが待ち受ける運命は、宿主を見つけて感染しようにも設計上標的としている脆弱性を持った生物がどこにもおらず、そうこうしているうちに無情にも失活して感染力を失っていくのみです。
細菌の場合も結果は同じ
これがウイルスではなく細菌でも結果は同じです。
細菌も他の生物と競争し、常に変化しながら生き残ってるわけで、数万年前の浦島太郎が解放されたところで今いる細菌に駆逐されて終わりです。
こちらの場合は自分の子孫にやられるという、より無情な結果が待ってそうです。
危険なのは不必要なワクチンを作ろうとした場合
永久凍土が解凍されて出てくる古いウイルスは無害だから心配しなくていいと解説しましたが、ひとつだけ危険な結末を招くシナリオがあることを付け加えておきます。
それは必要ないにもかかわらずワクチンを作った場合です。
永久凍土からわざわざウイルスを発掘し、為政者がプロパガンダのために危険な殺人ウイルスだと喧伝し、これを打てば大丈夫だという触れ込みでワクチンを作ったらどうなるでしょうか。
そもそもワクチンを作るには感染力を持たせなければなりませんので、人為的に変異を起こしたり、現存するウイルスとかけ合わせる必要があります。
つまり、氷の中で進化が止まっていたウイルスを人間がわざわざ進化させてしまうということです。
このようなことだけは絶対にあってはなりません。
「永久凍土から出てきて猛威を振るう前に先手を打ってワクチン開発!」なんて言い出す人が出てきたら全力で叩かなければなりません。
そのウイルスが強毒性で非常に危険であるというデータが出たとすれば、それは全くの捏造であるか、あるいはそういうデータを出すためにわざと強毒性のウイルスが作られたことを意味します。
今後そのような話がマスメディアやネットに流れてきた時、皆様が当記事に目を通して頂くことを願います。