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推敲とは

小説を書いていて一番の天敵は「推敲」だなって思うときがある。

終わらない推敲。時間の経過と共にちょこちょこ書き直しをしたり、書いている途中でも、ふと気づいて執筆した文字を遡り推敲することもある。

推敲とは、ただの文字修正ではない。物語の進行上で、可笑しな点に気付くときに行われるものである。

エブリスタという小説投稿サイトに公開した作品「魔法少女**」がスター50個獲得という結果通知を最近受けた。現代ファンタジーを初めて書いた作品であり、執筆期間は2週間半ほど、推敲には3週間ほど掛かっている。本編を書いた期間よりも、推敲した時間が長い。

推敲でみるポイント

たとえば、キャラクターの言動。好きなもの、嫌いなもの、奇妙だと感じるもの、微妙だと思うもの、前々から知っていた知識や情報など。序盤でキャラクターの発言した言動や行動が、執筆を重ねていくと、物語の中盤や後半で違和感を持つことがある。

「これは後付けだな」と感じることは、しばしばある。後半における説明過多になりがちな展開を見つけたときだ。特に物語の真相に迫るタイミングで、読者視点で初めて知る情報があまりにも多いとき、てんこ盛りすぎて後付けに感じる、これが違和感になる。違和感を解消するには、何が説明過多にあたるのかを見つけて、情報を一度整理して、ストーリーと構成の段階まで遡り修正を加えるほかない。

「魔法少女**」は、最初の2週間で書き上げた時点で、少なくとも説明過多になる箇所は3か所くらいあったため、推敲を行ったときに説明過多になる3か所をすべて書き直した。序盤に遡り、キャラクターが発言するセリフを書き換えたり、中盤で新たな展開を盛り込む加筆を行ったり、後半の展開を改めて修正を加えたりなど。

推敲で違和感を見つけるには、声に出して読んでみるか人に読んでもらい指摘を受けるか、あるいはアマチュア作品を多く読んでみると結構気づくことがある。その作業をひたすら繰り返して推敲と向き合うほかない。

新鮮味がないとは

今このタイミングで明かされても、「新鮮味がない」と受け取られることも少なくはないと思う。
人が、または自分が「新鮮味がない」と感じるのは、既に体験したことを再度受けたときだろう。

つまり新鮮味を感じる小説を書くには、世の中で体験したことのない着眼点に、まず気づかなければいけない。しかし新しいものは次々に生み出されるもので全てに目を通していくことは困難である。よって、どこかで既に感じたことが周りにありふれているのならば、むしろ、どの角度からの視点であれば新鮮味を感じるのか考えてみるも重要である。

「君の名は」という新海誠監督作の長編アニメがある。入れ替わりの代表作だが、第12回 野性時代新人賞を受賞した作品「君の顔では泣けない」も入れ替わりをベースにした小説である。前者は元に戻って出会うことを目的にしているが、小説は入れ替わって元に戻らなかった展開として描かれている。元に戻らないパターンで書くという大胆さは確かにこれまであまりみない。これも入れ替わりという既にある市場で、新鮮味を感じる着眼点から見つけ出した作者が書いたからこそ。

新鮮味のある作品を作るには

自分でも新しい発想で作品を常に書きたいとは思っている。ただし。私が「シンデレラ」や「金太郎」などの展開やストーリー、キャラクター等で同じものを書いて発表しても、世の中の多くの人は既に知っているわけで発表した時点で非難されるだろう。むしろ「パクリを書いて楽しいですか?」と指摘を受けるかもしれない。賞レースの小説の選考でも世の中の作品を読んでなさすぎると判断された場合、選考段階で即落ちると判断されることもある。選評で「まず読書を多くなさってください」と書かれている作者を見かけることは多々ある。それは新しい発想や着眼点に気づくためには、必要なことだからである。新人賞界隈の作品もそうだが、読書を重ねるしかない。

最後に。
推敲でイマイチなストーリーも良くなるのか

ときどき、キャラクター造形も構成も素晴らしいのに、ストーリー性がイマイチという場合がある。物語への没入感を感じられない作品に起きることで、この現象は短編で顕著に表れると思う。短い話でも面白かったという作品は童話などで感じることができると思う。起承転結がハッキリしている。次のページをめくるたびに、話の展開が変わっていく。しかし3ページ、5ページ、10ページと読み進めるとき、展開の変化が薄かったり、話がキャラクター心情ばかりを綴っていて話が進まなかったりすると、読者が飽きて読むことを諦めるパターンが生まれることもある。キャラクター心情もストーリー展開も読者視点でバランスをみられるとき、人を感動させられるかが問われるため、だからこそ短編でムリなく表現するにはかなり難しいといわれる。

自分の作る作品においては、80枚~300枚を想定した長編になる作品を昔から考えている。「魔法少女**」は、執筆が脱稿した直後は2万5千文字。推敲を経て、2万7千文字となり原稿用紙の約70枚という内容だった。

エブリスタでみられる応募の条件には、大体2万文字以上、あるいは、8千文字までとする規定がある。原稿用紙でいう、2万文字以上は50枚以上にあたり、8千文字までとする原稿は20枚にあたる。

「ピンク色の兎が最初に教える魔法の言葉」という作品は原稿用紙20枚分にあたる内容で最近エブリスタに投稿した。この作品の場合は、最初の執筆において2~3日で書いて、推敲に2~3日を要した。執筆と推敲は同じくらいの期間をかけているが、執筆が終わった直後は原稿用紙21枚分を書いていた。

 「ピンク色の兎が最初に教える魔法の言葉」は、推敲段階で1枚分を減らすことが、かなり大変だった。削る箇所を見つけることよりも、いかに短く話をまとめるべきか、面白さをさらに引き出すには、どこを書き直すかだ。

推敲で書き直す具体的なポイント

いつも推敲で気を付けているポイントがある。誤字脱字の「てにおは」、い抜き言葉、ら抜き言葉など正しい日本語が使えているか、キャラクターの発言する「僕・俺・私」が使い分けられているのか、年齢にあった言葉遣いなのかを確認していく。その過程で、キャラクターのセリフは、どのタイミングで発言させるのが本当は有効なのかも一緒に見直す。キャラクターのセリフや行動にはいわゆる伏線も含まれているためで、可笑しいと終盤で情報過多となりやすくなる。またストーリーの流れや構成は本当に正しいといえるのか、キャラクターの子供時代から大人になるまでの過程には何があるのか、登場人物の相関図は初期スタートと終盤のタイミングではどう変化していくのか、といったことが組み立てられるときに齟齬がないかが非常に重要となる。

主人公がいるならば、敵役や脇役も当然にいる。敵役と脇役の視点においては、どのような心情があり変化していくのか、ポイントは主人公とどれぐらい温度差があるのか比較すると面白いかもしれない。

宝城亘



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