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何もしていない休日、色々やった休日
12月に入ったばかりの日曜日の14時、「今日は何もしていない」と落ち込む。
でも私の「何もしていない」というのはたいてい嘘で、不思議なことにすでに何かしらした後のことが多い。
自分で書いていても不思議なのだけど、「今日はいろいろやったな」と思えない「やったこと」が、自分の中にはいろいろあるらしい。
こんにちは、豊穣です。
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「今日は何もしていないけど、何もやる気が出ない。」
昼に貰い物のコストコのスープカレーを食べて、胃が落ち着く。
冬の始まり、午後には日差しも落ちついてきてる。ついでに心が落ち込む。
生理2日目だしね。でも休日だもの、何かしなきゃと思ってしまう性分はずっと変わらない。
いや実際には、朝10時には部屋の掃除をして、書類を整理して、スーパーで安かった野菜を下処理して冷凍して、お昼ご飯を温めて、できあがった洗濯物をクローゼットに戻して、机の上も片付けたけれど、そのうえで「今日は何もしていない」って思っている。
結構やっているのにね。
ここまでの一連の作業はノンストップ。
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ためしに、本日2杯目のコーヒーを飲む。
「楽しむ」のではなくて、「やる気を出す」ためにコーヒーを飲む癖が20歳を超えてからついてしまっている。
なんだか、ちょっぴり自分の行く末が不安になる。
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こういう日は、いつも気にならないところに目が行く。
今日は「紅茶が家にありすぎること」がわかって、気になる。
いつもだったったらどうってことないことが、気になる。
紅茶は意外と減らないからね、たくさんありすぎるときは整理が大変。でも私のポリシー的にもただ捨てるのはもったいないなと思ってしまう。
どうにか、楽しく、効率的に紅茶を整理できないかと思案する。
こういうところが、私の頑固なところだなともう。
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気晴らしに、電車に乗ってお散歩する。
今日は上野に行く。
ひとまず紅茶の整理できるように、収納を100円ショップで2つで買う。
東京都美術館で無料の展示があると、駅前の掲示板で知る。
川瀬巴水のポスターだ。
川瀬巴水の版画の青は好きだなと思ったことがあったと思い出す。
年パスを持っている国立西洋美術館とどちらにいくか少し悩み、東京都美術館に向かう。
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展示は、ノスタルジーをテーマにしたもので、版画や絵画や写真が一部屋にみちっと詰まっていた。
高校の現代文の時間で「ノスタルジー、意味は理解できるけど感覚は全然わからん」と思ったこともあったけど、今は外在化され絵画や写真として映し出されているノスタルジーに共感できるぐらいに自分も人生を重ねたのだなとちょっと実感する。
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この美術館には、名作椅子で休憩できる部屋(ラウンジ)があると知る。
ラウンジが紹介されているパンフレットを見る。
フィン・ユールの椅子?
ギリギリ聞いたことあるような、ないような。
ラウンジに移動してさっそく名作椅子にぼんやりと座る。
「高い椅子に座っている」というだけで、私はちょっと元気になるタイプの人間だとわかる。
ここの美術館は大きいので図書室(美術情報室)があるらしく、ついでに初めて入ってみる。
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美術情報室の先客は1人。
美術関連の書籍や雑誌がたくさんある中で、先客の邪魔をしないように部屋を一周する。
雑誌に目が行く。ユリイカ12月号。今月の特集は「お笑いと批評」。
椅子に座ってドカドカと読み進める。
面白い。
…
雑誌を1/3ほど読んで、急に我に帰る。
『なんで私は日曜に上野の美術館の図書館でお笑い芸人のエッセイを読んでニヤニヤしている?』
ちょっと元気が戻っていることに気づく。
寒いので小走りで帰る。
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帰宅する。部屋を暖かくして加湿器に水をドバドバと入れる。
やる気が出たので、ルイボスティーをポットに作る。
羊羹を菓子切りで食べて、飲んで、ぼーっとする。
甘味処のように、黒皿と菓子切りを使って和菓子を食べるのは小さな儀式みたいで、結構好きだ。
気持ちがそこに向かうのが分かる。心が落ち着く。
「今日は色々したな」と、今日初めて思う。
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ここまで何も考えずに書いたけど、「今日は色々やった」つまり「充実したか」と思えるかは、作業の総数ではなくて「心が動いたか」なのかもしれない。
なんだそれ。
よくある、若干つまらない自己啓発本のオチみたいになってしまった。
でも2024年12月の豊穣はそう思ったのだし、それで納得したし、それが分かったほうが気持ちが楽だなと思う。
自分の理解が進んでよし!今日は充実!
自分の理解が進んだ今日も、「いろいろした日」になるみたいだ。
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おしまい