「自分である」ということ
お久しぶりです。
ベトナム語専攻OBの新です。ついにOBという肩書を使ってしまいました。
卒業してから一回しか季節は変わっていませんが、学生生活はずっと前のような気がしてきます。つまり、体感での時の流れはまだ加速していないということ。これが速くなってくるといよいよヤバいらしいです。何がとは言いませんが。
私は現在ECサイト関連の会社で働いていて、大阪からとある海の綺麗な街に配属となりました。独特な方言を持つ方々と緩いビジネスライフを送っているところです。
さて、OBとして記事を依頼されたからには、それなりにちゃんとしたことを書かないといけませんね。頑張ろうと思います。
思い返せば、私がベトナム語専攻を志望した理由の一つに「何か珍しいことをやってみたい」というものがありました。大学入学から遡ること数年、とある事情でアイデンティティ・クライシスのような状況に陥ってしまい、何者でもない自分への焦り?恐怖?のようなものが心の中で暴れる時期があったのです。その結果、「確かな自分を作る→何か珍しいことをやってみる→受験英語が少しできたので珍しい外国語を志望→東南アジアという神秘性からベトナム語」という考えにたどり着きました(なぜベトナム語なのかという最重要の問いに関しては、実は全く記憶にありません。入学当初は付け焼刃の知識で「チュノムを研究したい」とか言ってました)。
結果から言うと、ベトナム語専攻には「何か珍しいこと」が無数にありました。オリエンテーション時に机に置かれていた巨大辞書から始まり、ベト語共同研究室(旧箕面キャンパス)のカオスな雰囲気、全く未知のベトナム昔話をどんどん読み進める授業、ベトナム人と交流できる場(しゃべしゃべクラブ)など、一年生前期からエンジン全開で様々な経験をすることができました。そして夏に行ったベトナム研修旅行がその集大成のような存在です。
経験という点で言えばサークルや休みの日も同じでした。学生新聞を作るサークルに所属していたので、取材、記事の執筆、校閲、危ないレベルの徹夜等々……。体力だけはあったので、あまり後先考えずに色々やっていました。休みの日も……と書こうとしたけれど、よく考えたら珍しい行動をした記憶はあまり無いですね。
その後に行った留学を契機として、さらに多種多様な経験をする機会に恵まれました。東京のベトナム語スピーチコンテストに出場し、高校生たちの前でベトナムに関する紹介を任され、日本×ベトナムのチャリティーコンサートで司会(通訳?)で登壇し、さらにオープンキャンパスやイベント事の動画制作にも関わらせていただきました。三年生で受けた、ベトナムの大衆文学作品を自分で翻訳して小説を作るという授業も印象的でしたね。そして卒論。細かく書くとキリが無いので端折りますが、それぞれが唯一無二の経験です。月並みな言い方ですが、楽しかったことも大変だったことも自分にとってはいい思い出です。
留学中、最も楽しかった頃の筆者
さて、翻って最初に戻りますが、念願だった「何か珍しいことをやってみる」という私の目標は十分すぎるほど叶いました。キャンパスライフとしてはこれ以上ない、素晴らしい思い出がたくさん出来ました。ただ、肝心のアイデンティティ云々に関する話を、私はいつの間にかさっぱり忘れていたのです。ただ学生生活をエンジョイしただけで、「自分とは何か」という命題もいつの間にか気にしなくなっていました。大学に入る前は何やら崇高な目標を掲げて、大きなことを成し遂げるつもりで受験に臨んだはずだったのに、蓋を開けてみれば新しい環境という激流に揉まれてそんなことを意識する余裕すらありませんでした。
ただ、後になって思い返せばそれはそれでよかったんじゃないかと思います。余計なことは頭から追い出して、楽しむべきところは全力で楽しむ。結局それが「自分」を表現する一番自然な方法なのではないでしょうか。アイデンティティの獲得とよく言いますが、それは獲得というより自然に身に付く物なのかもしれません。未来から過去を振り返って、「ああ、自分はこんな人間だったのか」と気付くみたいに。
つまるところ「自分自身」とは、「何をするか」ではなく「何であるか」という状態が肝心なのだという結論に落ち着きました。ありとあらゆる経験はその方向性を形作るだけ、特別な経験など何もしていなくたって、人間は皆「何者か」に成れるのです。
とはいえ、ベトナム語専攻に入れば他に類を見ないほどの激レアな経験がたくさんあるはずです。私が在学中に経験した事などほんの一端に過ぎません。気になる方は気軽に聞いてみてね。ベトナム語専攻はツイッターやFacebookもやってるよ。
年長者らしく長ったらしい話になってしまいました。ここまで読んでくれた方がいれば、ありがとうございます。新しい箕面キャンパスにもいずれ行ってみたいですね。
おわり
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