
影響を受けた育児本②ママたちが非常事態!?
一つ前の投稿で、佐々木正美さんの「子どもへのまなざし」を紹介しました。
タイトル通り子どもへの尊敬のまなざしに満ちた素晴らしい本なのですが、ただ一つ欠点があります。
それは、『母親の無限の忍耐と愛情を前提としている』ことです。
書かれた時代(1998年)や、著者自身の子育ては(おそらく専業主婦の)奥様が担ったであろうことを考えるとやむを得ない面もあるとは思いますが、後半部分に、下記のようにあります。
『現代の若い両親は、子どもに目を向けてあげることができなくなりつつあります。(中略)親自身が自分の楽しみを生活の中心にするという習慣が身に付いているからです。(中略)貧しい時代には、自分の子どものために、親自身の希望などをおさえることは、社会のなかで自然に学習できていたと思います』
この辺りの、両親(記載は両親とありますが、全体のトーンとしては母親に向けたものと感じました)は子どもが生まれたからには子育てを全ての中心に据えて生きるべきという論調は、理想としては理解しつつ、『母親なんだから』という言葉で生き方を制約されてしまうような、逃げ場のない息苦しさを感じました。
そんな時に出会った本が、NHKスペシャルで話題になった「ママたちが非常事態!?」の書籍でした。
ママたちが非常事態!? 最新科学で読み解くニッポンの子育て https://www.amazon.co.jp/dp/4591152758/
この本の中で、夜泣きやイヤイヤ期の原因について脳科学の観点からの研究が紹介されているのですが、一番印象に残ったのは、アフリカの狩猟採集民族の子育てについてでした。
その部族では、子どもが生まれると複数の子どもをまとめて、何人かの母親や年長の子どもが集団で面倒を見ます。母親は子どもを預けて仕事に出掛けたり、残って他の子どもに母乳を与えたりしながら、共同で子育てを担うそうです。
人間の脳はこの狩猟採集の時代に適応しているため、現代社会のようなマンションの一室で母親が一人で子育てを担うことに強いストレスや孤独感を感じる、とありました。
この事実は、子育てを『辛い』と思ってしまうこと自体に罪悪感を感じていた当時の私にとっては目から鱗でした。
脳が適応していないのであれば辛くて当然で、別にそれを知ったからといって子育てが楽になるわけではないのですが、『なぜ辛く感じるか』のメカニズムを知ることができたことは大きな変化でした。
同時に、『母親なんだから』子どもを育てることを全てに優先させて当然、という固定観念からも解放されました。
特に0歳で子どもを保育園に入れて仕事に復帰してしばらくは、急な残業でお迎えが遅れるときや、子どもが体調不良で仕事を切り上げてお迎えに行くとき等、子育ても仕事も中途半端で、こんな母親で子どもがかわいそうだと自分を責めたことが何度もありました。
以前よりスローペースな筈の仕事すらこなせず、体調不良の時にもすぐに駆けつけられない。
電車の乗り換えで泣きそうになりながら走っていました。(今思うとそれも産後のホルモンバランスの影響があったかもしれません)
そんな当時の私にとって、人間の脳は共同養育を前提としているという研究結果は、肩の荷が下りたように感じられました。
産後、育児の孤独感に苦しんでいる方には、是非お勧めしたい本です。