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【時事ネタ】日本版DBSで子どもを性犯罪から守れるか
2023年9月13日に、こども家庭庁が「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議報告書」(いわゆる「日本版DBS」導入に向けた調査、検討報告書)を公開しました。
この日本版DBSで、どれだけ子どもを性犯罪から守れるか、考えてみました。
子ども関連事業における子どもへの性犯罪報道
こども関連事業業務従事者による性犯罪は、記憶に新しいものでも四谷大塚の講師による盗撮および小児性愛サイトへのアップロード、中学校校長による盗撮及び性的暴行等、枚挙にいとまがありません。
報告書にあった日本版DBSの方針:
①性犯罪前科で起訴された事案を対象とし、条例違反、起訴猶予等は要検討
②学校教育法、児童福祉法の認可事業所(認可保育所、認定こども園等)が確認義務付け、認可外保育所等は認定を受ければ確認義務付け
③前科の期間は検討中
④本人同意の上、事業者が照会申請を行う
この内容で、どの程度の効果があるかと考えると、照会した対象者が実際にデータベースに登録されている、というケースはかなり限定的になると予想されます。
理由は下記の通りです。
日本版DBSに登録される性犯罪は氷山の一角
あらゆる犯罪の中で、性犯罪は被害者が申告した率がわずか14.3%とかなり低い水準です。
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また、申告したとしても、相手を検挙し、起訴されるには更にハードルがあり、もっとも認知件数の多い強制わいせつは平成26検挙率58.1%、起訴率は40.7%とあります。
https://www.moj.go.jp/housouken/housouken03_00084.html
法務省「性犯罪に関する総合的研究」
被害→認知→検挙→起訴
の率を全て掛けると被害から起訴に至る率はわずか3.38%となり、強制わいせつ加害者の96.6%はデータベースには登録されません。
また、電車内での痴漢や盗撮は、迷惑防止条例違反として取り扱われるので、このデータベースには登録されません。
以上のことから、データベースに登録されている犯罪は実際起こっている性犯罪のごくごく一部であると言えます。
では、この日本版DBS導入の意義はあるのかを考えると、一定の意義はあるのではないかと感じます。
抑止力としての効果を期待
例えば、起訴まで至らなくても性犯罪で検挙された人間が、日本版DBSに登録されている可能性を恐れて認可事業に応募しない、という抑止力としての効果は期待できると思います。
運用方針としては本人に同意を得て照会する、という手順になるため、この時点で応募を見送る人は出てくるのではないでしょうか。
日本版DBS以外で応募者の犯罪歴を確認する方法
日本版DBS以外で、応募者の犯罪歴を確認する方法がひとつあります。
それは、「ネット検索」です。
ネットニュースでは、検挙された時点で実名で報道されるケースが少なくありません。そして、一度ネットニュースに載ると、その後不起訴になったとしてもニュースに名前が残ります。
※補足あり
人手不足が叫ばれて久しい保育業界ではありますが、保育士の採用に当たってはあらゆる手段を活用し、子どもを守っていきたいと感じました。
※補足
この過去の犯罪履歴がネット上に残ること(忘れられる権利)について、児童買春で逮捕された男性が検索結果削除の訴えを起こしましたが、東京高等裁判所で逆転敗訴となりました。