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子どもの好き嫌いを考える 「定本 育児の百科」
何度か記事で触れていますが、私が働く保育園には、一定数「子どもには大人の言うことを聞かせなければいけない」給食は「好き嫌いなく残さず食べ(させ)なければいけない」という保育観を持った保育士がいます。
どちらかというと年配の方が多いため、私は「昔の子育てや保育は好き嫌いも許さず、指示に従わせることを最優先にしていたのかな」と感じていました。
特に保育園は家庭と違い集団行動になるため、自ずと子ども一人一人異なる希望を制限する場面が出てきてしまいます。
では、その「昔の子育て」の理論を学べば、子どもの自由を制限し、大人の枠に厳しく収めようとする保育の正当性や根拠が分かるかもしれない、と思い、今回「定本 育児の百科」を読んでみました。
結論、私の推論は完全な的はずれでした。
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この本の初版は1967年。56年前ですので、間もなく還暦を迎える方が生まれた頃に出版された、育児の指南書としてはかなり古い部類と言えると思います。
職場で日頃厳しく子どもに接している職員が生まれた頃、どんな育児書が読まれていたのか?
内容はとても意外なものでした。
たいていの人間は食物に好き嫌いがあるものだ。
父親に好き嫌いがあっていいが、子どもにはゆるされないというのは、子どもの人権を無視している。
子どもの偏食は、先生が命令したり、おだてたりすれば、ある程度なおせる。だが、それはきらいなものが好きになるというより、きらいなものをがまんして食べられるようになったというだけだ。
子どもの生理にさからったむだな強制が、なんとしばしば「しつけ」とよばれたことか。
読む前はてっきり、「始めに好き嫌いを許すと好きなものしか食べられない偏食になるから、少しだけでも食べさせる」等と書かれているのかと思っていましたが、内容はその正反対、むしろ好き嫌いを認めないことを「子どもの人権無視」とまで言い切った、かなり強い論調です。
「がまんして食べられるようになる」ことも、「成長」ではなく「むだな強制」と一刀両断されていて、私の職場に未だに根強く残る「好き嫌いなく食べることがいいこと」という保育観を大きく覆すものでした。
どうして、この理論が現場に浸透しないのでしょうか?
全国に約4万ある保育施設の中で、こうした状況にあるのが私の職場だけならいいのですが、昨年ニュースになった保育園での誤嚥事故や虐待事件を見る限り、多くの保育園で未だにしつけという名の元に「子どもの人権を無視」した「むだな強制」が行われている可能性の方が高いと思います。
保育園に勤める保育士の、全員とはいかなくともせめて園長、主任保育士がこの「育児の百科」や、「子どもへのまなざし」を読み、日々の保育を省みることができれば、子どもにとっても職員にとっても過ごしやすい保育園になるのではないか、そんな風に思えた本でした。
※保育園での食事の強制に関連したニュースについての過去の記事は↓です。