【時事ネタ】「育休審査厳格化」は本末転倒
2023年の12月2日に、こんな記事が掲載されました。
上記の問題に対し、厚生労働省は新たに復職の意思を確認する申告書を提出させる等、審査を厳格化させる方針、と結ばれています。
記事を読んで率直に思ったことは、全く根本解決になっていない上に、本来減らしたかった筈の「自治体側の事務負担」は増えるのではないか、ということです。
そもそも本当に復職したい訳ではないにも関わらず、保育園の入園申請というとんでもなく煩雑な書類群を提出した人にとって、意思確認の申告書などその気がなくてもいくらでも作成することができるでしょう。
そんな書類を追加で提出させ、確認する方がよほど「自治体の事務負担」を増加させる原因になるのではないでしょうか。
またコストの面から考えても、0歳児を保育園に預けたときに掛かるコストと、育児休業給付金では、保育園に預けたコストの方が遥かに高いはずです。(注釈1,2)
保育コストの高い0歳の間は子どもを預けず自分で育て、1歳になってから保育園に預けて復職したいというニーズが高いのであれば、本来行政と母親の利害は対立せず、win-winです。
0歳で無理に復職するケースが減れば、その分の定員を1歳以上に割り振ることができ、待機児童の減少にも繋がります。
『満2歳までは保育園に入れない等の条件を付けず育休を取り、復帰したいタイミングで保育園に預けることができる』というのが、保護者にとってはベストであり、行政にとっても大きな不利益はない筈です。
只し、保育園の運営費用は国と都道府県、市区町村が負担するのに対し、育児休業給付金は雇用保険料を財源としていますので、運営費用が浮く一方で雇用保険料が逼迫してしまう問題は残ります。
厚生労働省がやるべきはこの財源の問題を整理することであり、不要な書類提出を義務付けて保護者と行政に負担を強いるのは全く無意味だと感じました。
注釈1 鈴木亘著「経済学者、待機児童に挑む」によると、0歳児を認可保育園で預かったときの平均運営費用は月額40万円だそうです。
注釈2 一方、育児休業給付金は当初6ヶ月間は賃金月額の67%が支給されますが、25~29歳の女性の平均賃金月額は約24万円であり、67%をかけると16万円となります。(平均賃金月額は「2022年賃金構造基本統計調査」より)