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ジェンダー平等を阻むもの②女性が女性を妬む時

なんだかサスペンスドラマのタイトルみたいになってしまいました。

前回の記事で、ジェンダー平等を阻んでいる第一の問題は男性の労働時間が国際的に突出して長いこと、それに伴って女性の家事育児の時間が男性の5.5倍にも上ることを書きました。

では、男性の労働時間が削減されれば、家事育児の時間は夫婦同等になり、女性の賃金や管理者比率は改善されるでしょうか?

どうもそれだけでは不十分だと感じた出来事が、つい先日ありました。

休日にファミレスで食事をしていた時のことです。
少し早い時間だったこともあり、店内は比較的空いていて、私たちの隣は50代〜60代の女性3名のグループでした。
そのグループの会話で、ある著名な政治家がどれだけ忙しくても帰宅してから家事や育児を担っていることについて、
「奥さんひどいよね」
「やってあげればいいのに」
「昔はバリバリ仕事してたからって今はどうせ暇なんだから」

とひとしきり批判していました。

この会話を聞いて、ジェンダー平等とは、全ての女性がそれを望んでいるわけではないことを実感しました。

そのグループの女性陣は一見して子育ても一通り終えた年代で、「自分たちは家事も育児も夫を頼らずやってきたのだから、今の世代もそうするべき」という空気感が漂っていました。

そしてこの空気感は、決してこの時居合わせた3人だけのものではないと感じました。

現に、私の勤める保育園でも、女性が子どもを保育園に預けて働くことに否定的な同僚がいます。

また、令和元年の内閣府の世論調査では、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方に関する意識について、全年代で女性の31.1%、家事や子育てが最も多忙であると考えられる30代でも32.2%が「賛成」または「どちらかといえば賛成」と答えています。
※年代別で最多は70代の37.3%

内閣府 男女共同参画社会に関する世論調査

この、女性自身が「妻は家庭を守るべき」と考えていることは、ジェンダー平等が単に男性と女性の間の問題ではないことを物語っています。

橘玲さんの「スピリチュアルズ『わたし』の謎」には、他者との比較についての「不都合な真実」が記されています。

脳にとっては、自分より劣った者は「報酬」、優れたものは「損失」で、他者の失敗を喜び、成功を妬むように進化の過程で「設計」されてきたのだ。

橘玲「スピリチュアルズ『わたし』の謎」

自分と同じ働く母親という立場でありながら職場の環境やパートナーに恵まれて、「成功」している(ように見える)女性を見ることは、そうではなかった(と自分で感じている)女性にとっては妬みの対象で、身体的な痛みと同じ脳の回路が働く、ということです。

近年、働く母親と子どもを持たない同僚の間で、子持ちの女性ばかりが優遇されていると感じる反感が「子持ち様」という言葉に代表されるヘイト、断絶につながっていますが、これも同じ原理だと思います。

難しいのはこれが個人の道徳心といった性格の問題ではなく、誰しも持ち合わせている人間の脳の特性であるという点です。

男性と女性、子どもを持つ女性と持たない女性、働く母親と専業主婦…etc.
「私たち」と「あの人たち」を分ける線は無数に存在し、これが細かくなればなるほど他者への寛容さが失われます。

この人間の不道徳な脳の働きを理解し、断絶を回避していくことが、ジェンダー平等には必須なのだと感じました。


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