「叱る」ことに効果はない。スッキリ腑に落ちた本
子育てや保育において、「叱る」という行為はごくごくありふれた行為です。
また、社会人として働いていても、部下を注意したり、上司に叱責されることは珍しくありません。
では、この叱る行為に、どれだけ効果があるのでしょうか?
叱る効果についての疑問
私は、これまでの子育てや保育で、叱ったことで「子どもの行動が継続的に変わった」という成功体験がほとんどありませんでした。
また、自分の身を振り返っても、上司に叱責されると反省したり本来あるべき行動を考えるのではなく、反発したりその場をうまく逃れることの方を考えてしまうことの方が多いと感じます。
これらのことから、常々「大人も子どもも、叱っても意味がないのでは?」と思っていましたが、それをスッキリ説明してくれた本に出会いました。
出会った本「〈叱る依存〉が止まらない」
この本の中で、筆者は「叱る」ことは倫理的、道徳的にやめた方がいいわけではなく、単に「効果がない」上に「副作用の弊害が大きい」としています。
なぜ、叱ることに効果がないのか
では、なぜ叱ることに効果がないのでしょうか?
筆者は、「叱る」という行為を、「叱られる側のネガティブな感情の発生が必須」と定義しています。
叱られた側は、「ネガティブな感情」を受けて脳の扁桃体が反応し、「戦うか、逃げるか」の判断をします。
叱る行為は権力者(親や保育者、上司に)からなされるため、「戦う」判断は現実的ではなく、大抵は「逃げる」ための回避行動が取られ、叱られた行為をやめたり、謝ったりします。
問題は、この回避行動が本質的な行動の意味を理解した上での行動の改善ではないことです。
例えば、家庭や保育園で、やるべき支度や着替えをせずに遊ぶ子どもがいたとき、「早くやりなさい!」「いい加減にしなさい!」などと強い口調で叱ると、子どもは怯え、その状況から逃れるために遊ぶのをやめて支度をするかもしれません。
ただ、その行動は「遊ぶのは支度を済ませたあとなんだ」「早く支度をすればたくさん遊べる」と理解した上での行動ではないため、次の日また同じことを繰り返します。
どんなに叱っても変わらない子どもに、
「どうして毎日同じことするの」
「もうママ(先生)同じことで怒りたくないんだけど」
とこぼしたことがある方も多いのではないでしょうか。
このように、叱ることで得られる回避行動は、子どもの学びによる改善とは別物と言えます。
叱ることの副作用
①エスカレートする
叱ったあとに子どもが回避行動を取ると、大人は「叱ったから行動が改善した」と勘違いし、誤った成功体験を獲得してしまいます。
「叱るときはガツンと言わないとなめられるよ」
などと諭すベテラン保育士に心当たりがある方もいるのではないでしょうか。
ですが、叱られることによる恐怖の刺激は慣れが起こります。
以前までと同じ強さで言っても効果がなくなると、「叱れば言うことを聞くのだから、もっと叱らなければ」と、どんどん強い口調にエスカレートしていってしまいます。
その結果、虐待や不適切な保育に発展してしまうことは大いに想像できます。
叱ることの副作用
②叱る側は快感を覚える
これは読んでいて恐ろしいと思ったのですが、他人を叱るとき、叱る側の脳は他者を罰することで処罰感情が満たされ、報酬系回路が活性化し快感を得られるそうです。
芸能人の不倫がSNSなどで炎上するのも、上司が飲み会などで新入社員に延々と説教をするのも同じ仕組みです。
叱る側は叱ることで快感を得ることができ、本来の目的である望ましい行動の改善が達成できなくても満足してしまうのかも知れません。
叱らずにするべきこと
叱ることに効果がないのであれば、好ましくない行動については、好ましい行動を子どもが考えて変えるよう働きかけるか、またはそもそも課している環境や課題を変える必要があります。
安易に叱ることによる回避行動で満足せず、本質的な変化を導くアプローチを考えていかなければならないと感じました。