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保育士による園児切りつけ事件ーとあるポストへの違和感と考察ー


事件の概要



2024年6月7日、鹿児島市内の認定こども園で男児の首を保育士が切りつける事件が起きました。ニュースでも大きく取りあげられたので知っている方も多いと思います。

21歳の女性保育士は殺人容疑で逮捕され、その供述から事件にまつわる状況が少しずつわかってきました。

  • 21歳の保育士は、今年の2月に採用され、4月から2歳児担任として勤務

  • 勤務態度は「真面目」との同僚の声もある

  • 子どもを切りつけたのは私物のカッター

  • 制作物の準備の作業を中断したため持っていた

  • ケガをさせたのは間違いないが、子どもを殺すつもりはなかった

  • 子どもとの関係が思い通りにいかず、思わず手が出た


捜査が進むにつれ、まだまだ詳しい情報が出てくる可能性がありますが、現在のところ以上のようなことが明らかになっています(6月14日現在)。


さまざまな意見がある中…


ネットでもさまざまな意見が見られます。
概ね、保育士が子どもを切りつけたという点において、「信じられない」「どんな理由があったとしても受け入れられない」など、否定的な意見がほとんどでした。

そんな中、テレビなどでも活躍している「てぃ先生」がX(旧Twitter)でのポストでこの事件について取り上げていました。

以下、その全文を引用します。
ちなみに、ポストされた日付は事件の翌日で、まだあまり事件についての詳細が明らかになっていない時点でのものです。

どんな事情があっても子どもへ刃物を向けている時点で、この保育士自体に問題がある。一方で21歳という年齢からすると、短大や専門を卒業して間もないと思うが、就職直後の知識も経験も無いうちから、子どもたちへ「担任として」の対応が過剰に求められていたとも推察する。
「早く子どもたちに言うことを聞いてもらわなければ」という誤った焦りから、日常的に言葉での脅迫に近い対応があり、その延長線に今回の事件が発生したように感じる。
施設側の保育士に対する教育やサポートが十分だったのか、もっと言えば保育業界の人手不足が原因となり、保育士へ過度なストレスやプレッシャーを与えていないかなどをしっかりと考えていかないと、こういった事件が繰り返される可能性だってゼロではない。しっかりとした保育士が全体のほとんどを占めているからといって、そうでない保育士が発生しやすい環境を放置していい理由にはならない。

てぃ先生のポストより


てぃ先生のポストへの違和感と考察


私はこのポストを読んで、違和感を感じました。
てぃ先生のことをよく知っているわけではないのですが、個人的には全国の保育士の先頭に立って情報発信など力を発揮してくれていると思っています。ただ、時折発言などを聞いていると、よく勉強はなさっているようだけれども、少し思慮が浅い、想像力を働かせてほしい、と思うことがこれまでもありました。まだまだ若いので、これから経験を重ねることで発信に深みや含蓄が出てくることを期待しています。

ですが、今回のこのポストについては、論理的に破綻している部分があります。彼が発信したかったであろうことを想像しながら、考えてみたいと思います。そのことが、この事件を、単なる「保育士がおこした衝撃的な事件」に止まらせないことにもつながると信じて。



まず大前提として、保育士が子どもに刃物を向けることは、子どもの安全を守るべき保育士として、いかなる状況でも正当化できないことです。たとえ、周りからのプレッシャーがあったとしても、周囲のサポートが不足していたとしても、職場環境が劣悪だったとしても、子どもを傷つける理由には全く当てはまりません。

その上で彼は、「21歳という年齢からすると、短大や専門を卒業して間もないと思いますが、就職直後の知識も経験も無いうちから、子どもたちへ『担任として』の対応が過剰に求められていたとも推察する」と述べています。

この点、同世代の若い保育士が聞いたときに、多くの若い保育士は喜ばしく思わないのではないでしょうか。若くて情熱もあり、責任感をもって適切に対応している保育士はたくさんいます。このような表現は、若い保育士さんへの配慮が少し足りていない印象があります。

ご本人も述べている通り、ただの推察にすぎません。推察にすぎないのに「若さゆえに」とも読みとれるような表現は避けるべきだと思います。


あと1点。

彼は、「しっかりとした保育士が全体のほとんどを占めている」とも述べています。つまり、今回の事件については個別のケースとして扱うべきではないかというのが私の主張です。

保育の質の向上のための研修やサポート体制の強化は必要ですが、一部の不適切な行為を全体の問題としてとらえるのは無理があります。

「推察する」「感じる」など、彼個人の想像や思いが多く占めていて、客観的な事実に基づいていません。保育業界を少しでも良くしたい、保育士の働く環境をより良くしたいという思いはわかります。しかし、彼の言動の影響力を考えると、いささか前のめりのポストではないかと思います。


心配な点をまとめると…


・事実確認の重要性


事件の詳細が明らかになっていない状況で、憶測や推測で意見を発信することは、間違った情報を拡散するリスクがあります。これは混乱や誤解をまねく恐れがあります。

・保育士全体への偏見の助長


個々の事件を職場環境などの全体の問題に結びつけると、保育士全体に対する偏見を助長する恐れがあります。多くの保育士が誠実に働いている中で、職場環境の問題を一部の事件に結びつけて論じるのは公平さに欠けるかもしれません。



想像するに、この事件をきっかけに、保育士の職場環境や業界全体の問題について議論することが重要であると発信したかったのではないでしょうか。

情報の正確さを保ちながらも、被害者とそのご家族の方の思いに十分に寄り添い(ここが重要だと思っています)、保育業界がより良くなっていけるよう、その旗振り役を担っていただけるように、期待しています。


最後に…。


事件を起こした保育士の供述では、「子どもとの関係に悩んでいた」とあります。

保育経験が浅く、子どもとの関係も周りの職員との関係も、十分に築けていなかった可能性があり、焦りやプレッシャーを感じていたことでしょう。うまく子どもとの関係を築いていけないことに無力感を感じ、自己肯定感も下がっていたとするなら、大変な毎日を送っていたかもしれません。

そこに日常の業務が重くのしかかり、慌ただしい毎日を過ごしていく中で、落ち着いて振り返る時間も余裕もなかったことは想像できます。

私は、新人保育士の育成が、保育業界の長年にわたる大きな問題点だと感じています。どうすればこの事件を防げたのが。保育士をどう育てていけばいいのか、また別の機会に考えたいと思います。


最後まで読んでいただきありがとうございました。
ご感想、ご意見などあれば、よろしくお願いいたします。

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