ラーニングディスポジションとは
テ・ファーリキを読んでいると、見慣れない言葉ランキング上位に「ラーニングディスポジション」や「ワーキングセオリー」があがってきます。すごく重要なのによく分からないこの2つについて、解説してみたいと思います!
ラーニングディスポジション=学びの構え、傾向
ラーニングディスポジションはテ・ファーリキに出てくる単語で、ラーニングストーリーを書く時にも重要なアセスメントの視点です。日本語では「学びの構え、学びに向かう姿、学びの傾向」等によく訳されています。
初めの頃、「構えって何?」とよく分からなかったのですが、それはテ・ファーリキのアセスメントの考え方がそれまで僕が知っている評価の基準と違ったからということもありますし、「ディスポジション」の部分にぴったりくる単語が日本語にないから分かりにくいんじゃないかとNZに来てから思いました。
最近、日本在住のネイティブイングリッシュスピーカーの保育者を対象とした研修で、NZの保育とラーニングディスポジションについて説明すると、初めは皆「それは何?」という反応でしたが、ディスポジションの意味を説明するとすぐわかってくれました。
英語でそのまま理解して伝わるものと、日本語に訳しても伝わるものとありますが、ラーニングディスポジションとワーキングセオリーは英語脳(英語のテ・ファーリキ脳?)で考えるとスッと入ってきます。
そのため、テ・ファーリキを理解したいという保育者や研究者の方には、今はコロナで難しいと思いますが、実際にNZに来て、園の周りの地域や雰囲気も含めて、保育を経験することをお勧めしています。
ちなみに、ディスポジションは「人が持つ何かをしたいという衝動や、それによって自然に行動すること、そういったものの傾向」のような意味なので、学ぶときの傾向、構え、といった訳になるのだと思います。
では、テ・ファーリキではどんなラーニングディスポジションが重要視されているか見ていきましょう。
テ・ファーリキに関連するラーニングディスポジションには、勇気と好奇心(興味を持っている)、信頼と遊び心(参加している)、忍耐力(困難、挑戦と不確実性に持ち堪える)、自信(視点や感情を表現する)、責任(責任を取る)、その他、互恵性、創造性、想像力、レジリエンスが含まれます。
-テ・ファーリキp.23、翻訳は谷島
ここに挙げたもの以外は必要ないと言うことではありませんし、どんなラーニングディスポジションを大切にしているか、どんな価値を感じるかはそれぞれの文化的信念(Culutual beliefs)に影響を受けることも明言されています。
例えば、子どものどんな場面を見て「勇気と好奇心」があると捉えるか、どんな画面で「遊び心」があると捉えるかは人それぞれ、保育者それぞれの視点によるし、色々な視点を持つ先生がいることが良い事と考えられています。
そして、その先生の視点、考え方、信念には、どんな文化で生まれ育ち、関わってきたかが影響していると考えられています。子どもがしっかり自分のやりたいことを表現していることを何より大切だと考える文化もあれば、子どもが他者を思って優しさを発揮することを最も大切にしている文化もあり、それらは全く違う価値観の文化から、似ているもの、混ざり合っているものまで色々ありますよね。
ニュージーランドは「二分化主義の上に成り立つ多文化共生国」ですので、ここはラーニングディスポジションを理解する上でも大事なポイントだと思いました。
そのうえで、特にここに挙げた9つのラーニングディスポジションは子どもたちが「ライフロングラーナー(一生涯自分の興味のあることを学び続ける人)」であることを目指すニュージーランドの社会を生きる上で、大切だと考えられています。
勇気と好奇心(興味を持っている)、
信頼と遊び心(参加している)、
忍耐力(困難、挑戦と不確実性に持ち堪える)、
自信(視点や感情を表現する)、
責任(責任を取る)、
その他、互恵性、創造性、想像力、レジリエンス
しかし、実際にラーニングストーリーを書くときにこの項目を入れなきゃいけないというプレッシャーがあるわけではありません。
例えば、チェックリスト的に子どもたちのできる事やできないことを評価する視点(欠乏アプローチと言います)で、
「〇〇くんは好奇心はあるけれど勇気が見えないから心配だね」
「△△先生、もっと〇〇君の勇気が見られるようなラーニングストーリーを書かなくちゃ」
「子どもたちの勇気が伸ばせるような保育をしていきましょう。」
など、チェックするための項目になってしまったらそれは全然テ・ファーリキの保育じゃないのですよね。
流れとしては、子どもや保護者、保育者同士が信頼関係を作りながら保育で関わるうちに、保育者のやる気や楽しさのもとにアイデアが集まり、良いラーニングストーリーを書こうと思うようになり、自然とラーニングディスポジションに目が行くようになる。というのがサステイナブルだと思うので、保育者の主体性やチームワークが発揮できる環境を作ることが重要だと思います。
9つのラーニングディスポジションも、ニュージーランドの社会を想定して挙げられているので、日本だったらどうか、うちの園だったらどうか?どんなラーニングディスポジションがいいのかな?というアイデアはその園に携わる先生たちや子どもたちの方が詳しいですよね。
欠乏アプローチの視点からでもラーニングストーリーを書くことはできてしまうので、取り入れたばかりで初めはよく分からなくても、テ・ファーリキのアセスメントは信頼アプローチが大大大前提だと知っておいて頂きたいなと思います^^
ラーニングストーリーは信頼アプローチ
テ・ファーリキのいうアセスメントは信頼モデル(アプローチ)ですが、テ・ファーリキができる前は、こちらが決めた基準に沿って子どもができること・できないことをチェックリストでチェックしていくような評価方法を使っていました。テ・ファーリキができて徐々に、信頼アプローチによるラーニングストーリーなどのアセスメントが保育現場に浸透していったそうです。ラーニングディスポジションもテ・ファーリキ後に浸透しました。
欠乏アプローチで見ていないか?は保育者自身やチームで定期的に振り返ることがすごく大切だと思います。それにはテ・ファーリキ5つの要素の振り返り質問が役に立つので、良かったら翻訳を参考にしてください。
もっと知りたい方は、こちらの本で実際のラーニングストーリーや保育実践、実例、解説、テ・ファーリキの解説などが読めますのでぜひ。
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保育者の実践に役に立てたら嬉しいです^^
次回はワーキングセオリーについて!