2歳児と劇あそび
2歳児の発表会、ある園もない園もある。
あってもなくてもどちらでもいいと思う。
2歳児・・・その年度の4月2日に2歳の子どもたち。
幼稚園の年少クラス(3歳児)よりも、1学年下の子どもたち。
年度の途中でどんどん誕生日を迎え、3歳になっていく。
素直になれなかった過去の私
以前、勤めていた園の一つでは0歳児から発表会があった。
子どもの遊びの延長で行われるという名目だったけど、担任が発表会の前に題材となりそうな本や歌(わらべうた)を持ってきて、大人の力で子どもたちが好むように仕掛け、「子どもたちが好きな絵本なのでこの題材にしました」と言っていた。
レールを敷いてる感があった。
「普段の遊びの延長です」と保護者に言うために、ある時期が来たら普段の遊びを表現遊び中心にしなければならなかった。
「どうしたら子どもたちが楽しく舞台にあがれるか」を追求すると、「舞台に上がって楽しかった」と思う経験が必要で、そのために普段の活動を劇ごっこにしては他のクラスに見てもらい、見られる経験(褒められる経験)を重ねていた。
「舞台に慣れておく」のも必要で、しょっちゅうホールへ行き、誕生会ごっこや発表会ごっこをしていた。
もちろん、他のクラスと合同での練習もリハーサルもあった。
お外に行きたいようないい天気でも、行けなかった。
他クラスが舞台に上がっているときは、自分のクラスの子どもたちが静かに座って見られるようにするのが担任の役割だった。
大人がやらせている感がぬぐえず、「子どもたちは楽しんでいないのでは?」とモヤモヤが募っていた。
例えるなら、人工甘味料。砂糖の代わりに人工的に作って、「ほら、甘いでしょ??」って言うイメージ。甘く作ったんだから甘くて当たり前。でも本物じゃない甘さ。
私自身は全然楽しくなかった。
子どもたちからうまれた遊び
時は経ち、発表会のない園の2歳児クラス。
ある時、「だんごむしのころちゃん」という紙芝居を読んだ。
Amazonのリンクを貼っていますが、クリックしても購入しても私には何のメリットもありません。
そもそもAmazonのアカウントを持っていません。
【あらすじ】母離れしただんごむしのころちゃんが、落ち葉を食べようとするとアリやカマキリに食べられそうになり、ミミズに威嚇されて、穴に落ちる。穴の中でモグラに襲われかけるが、セミの幼虫に助けてもらい地上に戻る。その後、せみの幼虫は羽化、ころちゃんは脱皮するというストーリー。
翌日、別の紙芝居を読もうとしたら、「ころちゃんが見たいー」との声。
この学年の子どもたちは好んで見たがるようになった。
ちなみに、この学年の前の子どもたちは、「ごきげんのわるいコックさん」、その前は「みんなでぽん!」がお気に入り紙芝居だった。
「みんなでぽん!」は、英語バージョンも楽しんで見ていた。
まつい のりこ さん と
せな けいこ さん と
とよた かずひこ さん
は乳児保育を語る上では外せない絵本作家さん。
年に何冊もお世話になる。
話をだんごむしに戻そう。
子どもたちが紙芝居に慣れ親しんだ頃、散歩先の広場に落ち葉があった。
その時、一緒にいた子どもは4~5人。
「落ち葉みーつけた!」
「ころちゃんも落ち葉たべるんだよね」
「むしゃむしゃ、おいしーい!」
ころちゃんになる子がいた。
子どもたちが自然にだんごむしのころちゃんごっこをはじめた。
「落ち葉、おいしいなぁ」
と私もころちゃんになる。
誘導するような声掛けはしない。
私もころちゃんになって子どもと同じ目線でいるだけだ。
子どもたちになりゆきを任せていく。
すると、「ここはおれのところだー」とアリになりきった子があらわれた。
「きゃー」
とダンゴムシ一同で丸くなる。
すると、今度はアリをやっていた子がカマキリになって襲ってきた。
だんごむしをやっていた子が急にカマキリに寝返ったり、ミミズをやっていた子がセミになって救出してくれたり、役は変えつつも、みんなで「だんごむしのころちゃん」というストーリーを展開していく。
あー、2歳児の劇ごっこってこういうことなんだ!!
とストンと落ちた。
それと同時に、
保護者にこのかわいいあそびを見せてあげたい!!
そう強く思った。
この遊びは、広場に行ったときに繰り返して遊ぶようになった。
公園にも落ち葉はあったけど、なぜか広場ところちゃんが結びついているようだった。
回を重ねるごとに、ストーリーやせりふが忠実になっていき、順番が違うと「次はカマキリじゃない?」など友達にささやく子もいた。
「あっ、そっかー」と返す子ども同士のやりとりが、いとおしくてたまらなかった。
「今日は広場に行こうか」と言うと、返事が「今日もころちゃんしたいー」となるくらいだった。
だんごむしのころちゃんごっこの経験が先にあったら、発表会のある園でももっと素直になれてたかもしれないと思った。
おしまい