【寝る子は育つ】
子どもの寝顔というのは実に幸せそうで、見ている我々をも幸せにしてくれます。幸せな表情をして眠っている子どもたちもまた、幸せなのです。
しかし、文明の発達した現代、子どもたちが幸せに眠ることが難しくなってきていることをご存知でしょうか。「一日の睡眠時間をきちんと確保している」家庭でも、状況によっては眠れていないことがあります。
私たちは、子どもが眠ることをどのように考えていけば良いのでしょうか。ただの習慣として考えるものか。それとも眠ることによって子どもにどのような影響を与えるのか。また眠らないことによって子どもの体にどのような影響を与えるのかをしっかりと学んで考えるのか。両者には雲泥の差があります。この記事を通して、親や教育者が子どもの睡眠について真剣に考えるきっかけとなり、実践してくれることを心から願っています。
【眠りを奪われた子どもたち】
子どもの睡眠時間がどんどん削られています。1960年から5年ごとに、日本人の平均的睡眠時間を記録した情報(「日本人の生活時間2010」NHK文化放送研究所、NHK出版2010 )によると、1960年に比べ、なんと日本人の睡眠時間が1時間も減っているのです。
その原因の一つは「夜更かし」にあります。世の中に便利なものが溢れ、人々を刺激するようなものに24時間晒され続けた結果、我々の体は自分の体を大切にするどころか、ダメージを与える方に向いています。
このような意識の中で育ってきたので、人間は眠ることの大切さを認識することが大変難しくなってきています。(妊娠中のお母さんが夜更かしするということは、子どもも一緒に夜更かししているという事実に気づかねばなりません)
・新生児は16時間〜18時間
・生後4ヶ月〜6ヶ月で12時間〜14時間
・1歳〜2歳で11時間〜12時間
・3歳以降は10時間〜12時間
このくらいの睡眠時間が子どもにとっては必要なのです。眠れない子どもが保育園でどのような生活をしているかご存知でしょうか?登園してきてもボーとしている、イライラして友達同士の関係が結びにくい、遊びへの意欲が全くなく子どもらしさが失われています。もっと深刻になると途中で眠り始めてしまいます。この状態で子どもはどのように園生活を楽しめば良いのでしょうか?
【眠ることはなぜ大切か】
発達のスピードがとても早い子どもにとって、眠るというのは最高の回復手段なのです。人間の脳は起きている時、ほんのわずかながら傷ついています。眠ることによってそれを回復させ、以前よりも強くなっていくのです。従って、子どもの睡眠時間が足りないということは、脳が回復しきらないうちに目覚めてしまい、常に傷がある状態になってしまうということなのです。
これは非常に大変なことです。常に傷ついた状態で脳が正常に働くはずがありません。そして子どもが元気で生き生きと活動できるはずがありません。
きちんと家庭で子どもの眠りを保障してもらっている子どもは、非常に意欲的な子どもが多いです。登園した瞬間から希望に満ち溢れた目つきをしており、すぐさま自分のしたい遊びに取りかかることができます。集中力も凄まじく、虫取り一つにしても、捕まえられるまで絶対に諦めないような姿を見せてくれます。(もちろん、食事も子どもが1日を元気に過ごすために必要不可欠なものです)
「寝る子は育つ」と、昔から言われてきていますが、まさにその通りなのです。保育園から帰ってきて、夜遅くまで遊ばせたり、大人の都合に付き合わせるくらいなら、心を鬼にしてでも眠らせてあげることが、親の愛ではないでしょうか。
【子どもの眠りをどう保障するか】
子どもの睡眠を保障してあげるために、我々は何をすべきでしょうか。実際のところ、親の勤務形態によっては子どもに早寝早起きのリズムを確保してあげることが難しいところがあるのも承知しています。
しかしながら、私はそうした親が自らを変える努力をしてきたのを見てきました。「子どものためならなんだってできる」という情熱を持った方は、自らの職場に勤務時間の調整を申し出たり、生活の中で無駄な時間はないかと探して、改善したり。
未来を変えてきたのはいつでも「情熱のある人」であると私は思っています。自分の信念に基づいて、何があってもブレない。たとえ誰かに批判されたって諦めずに行動し続ける。声を上げ続ける。
実際のところ、人間は情熱と信念を持った人に訴え続けられると心が動かされてしまうのです。ですからどうか「私にはできない」と決めつけないでください。あなたが「子どものためにしてやりたい」と決意したその瞬間から、道はひらけてくるのです。あらゆる方法を模索して、実践して、失敗したっていいのです。失敗の先には必ず成功が待っています。
【眠りの質を高めるために】
さて、情熱ばかりでは子どもの睡眠を保障して行くのは得策ではありませんから、子どもがどのようにしたら心穏やかに眠れるか、睡眠の質を高めるにはどうしたら良いかを具体的にお伝えしましょう。
まず、眠る際に人工的な光は不要です。ご家庭によっては豆電球にして眠っている場合もあるようですが、人工的な光は子どもを覚醒させてしまいます。さらに、眠る直前に全ての電気を消すのではなく、1時間前から薄暗くしてあげるようにすると、子どもは眠りのリズムを確立させやすくなります。
間違っても、眠る直前までTVを見せたり、ゲームをさせたりすることはやめてください。脳を興奮状態にさせるばかりではなく、寝付きの悪さ、睡眠の質の低下に繋がります。
親も一緒に眠るようにしてください。親が子どもと一緒に眠るのは非常に難しいことだというのは十分に理解できるのですが、親の健康も大切です。親が健康であることは、心に余裕を持って子育てができることでもありますから、TVを見たい、スマホを触りたいという気持ちを、どうか子どもとあなたの健康のために使って上げてください。平日には難しいというようであれば、休日に実践してみてください。休日だからと言って夜更かしさせてしまう家庭がありますが、休日こそ、正しい生活リズムを確立する良いチャンスだと思って取り組んでください。
起きる時間を一定にしてあげてください。眠る時間が遅くなってしまったから、睡眠時間を確保するために起きる時間も遅くしたら良いかと思ってしまいそうですが、そうではありません。毎日、起きる時間と眠る時間がバラバラになっていると、それだけで睡眠のリズムを乱してしまうのです。ですので、眠る時間が遅くなってしまったとしても、起きる時間は同じにしてください。きっと子どもはぐずるかと思いますが、しっかり朝ごはんを食べたり、散歩をすることで目覚めていきます。
朝ごはんを食べさせてください。朝ごはんは、体内時計を確立するためにも大切です。決まった時間に食べさせるように努めることで、子どもの目覚めもよりスムーズになるでしょう。パンやシリアルなどはできるだけ避け、よく噛んで食べる必要のあるご飯とお味噌汁を与えると、栄養面でも非常に良いです。
体を動かして遊びましょう。いくら眠りの環境を整えても、子どもは遊び疲れていないと眠ることは難しいです。そして、体を動かすことは子どもの成長にとって欠かせないものですから、天気の良い日などは積極的に外に出て体を動かしましょう。子どもに合わせてハードな動きをするのが苦しいという方は、お散歩でも大丈夫です。子どもとの会話を楽しみながら歩くことをお忘れなく。
【おわりに】
今から子どものために実践しようと思ってくれた方、本当にありがとうございます。でも、一つだけお願いがあります。やってみても上手く行かなかった時、自分にイライラしてしまった時。どうか自分を責めないでください。あなたはこの大変な世の中で、本当に凄いことをしようとしています。「できなかった」ではなく「今日はこれができた」と、できたことを見つけ、自分を褒めて上げてください。本当に大切なことは少しづつしか進んでいきませんから、焦らず、自分を信じて続けてみてください。
ライター:斎藤保育を愛している保育士
斎藤公子氏の「さくらさくらんぼ保育」実践園に勤めている保育士。
決して時代に流されない「子どものための保育」に感銘を受け、様々なツールを用いて情報を発信している。
Instagram:sakura.sakuranbo1920
note: note.com/saitouhoiku1920
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