【障がいは保育で克服できる】
【障がいは保育で克服できる】
皆さんは「障がい」というものにどのようなイメージをお持ちでしょうか。何かしらの理由で体の自由が効かなかったり「自閉症」や「ダウン症」など、診断名のついた方などのことを想像するのではないでしょうか。
障がいというのは一般的に上記のような状態であるために、日常生活に支障があり、配慮を必要とします。障がいの程度によって配慮の程度は様々です。
しかしながらこの「障がい」。乳幼児期からの適切な保育がなされていれば、克服できることをご存知でしょうか?この事実に保育者の多くが気づいていません。従って、保育園に障がいのある子どもが入園してきてもどうして良いかわからず「ただ生活の流れに遅れないように配慮してやる」ことしかできないのが、現在の日本の乳幼児教育の課題です。発達支援センターの方が時折、巡回指導という形で気になる子どもを見にきてはくださいますが、その障がいをどのように克服するか、という部分にまでは踏み込めていないようです。(私の知る限りでは、です。自治体によっては手厚くサポートしてくれる所があるかも知れません。)
一応、発達を促してくれる専門の機関も存在しますが、多くの場合、障がいが発見されてから受診する、という場合がほとんどなのです。
障がいというものは「固定化」します。これはつまり、障がいのある状態に対して正しい刺激を与えずに放置しておくと。脳が「このままで良いみたいだ」と判断して脳の成長を促すシステムをストップさせてしまうのです。
この「固定化」を防ぐためには0歳児からの適切な保育が何よりも大切です。0歳児というのは脳にとって最も大切な時期で、正しい環境のもとで正しい刺激を与えて育てれば、どんな障がいを持った子どもでも確実に発達していきます。(それを実践しているのが斎藤公子先生のさくらさくらんぼ保育なのです)
この文章を記すことによって、障がいをもつ子どもを保育している教育機関、親御さんの励みになることを願っています。最後の方では、書籍もご紹介しますので、そちらも是非参考にしてみてください。
【理解することから始めよう】
我が子に障がいがあると分かった時。障がいを持った子どもの担任をさせてもらうことになった時。ほとんどの人はどうして良いかわからず、途方に暮れてしまうのではないかと思います。自分を責め、受け入れられずに苦しみ続けてしまうこともあるでしょう。ですが自分を責めることはありません。あなたは障がいをもつ子どもとの出会いによって、自分が成長するチャンスを手に入れることができました。これは素晴らしい出来事です。そして現代の保育ではたとえ障がいを持っていても、克服できるという事実が存在します。
「障がいは克服できるもの」という信念を持ってください。そしてあなたが今からできる最善のことは、子どもに対して嘆くことではなく、子どもの可能性をどこまで伸ばしてやれるか。それだけを考えてこれからは保育、子育てをしていきましょう。
【障がいを持っていても発達する】
「障がいを持っていると、成長しないのではないか」と考えている方が大変多いように感じます。しかしながら現実はそうではありません。障がいを持った子どもでも確実に発達していきますが、そのスピードがいわゆる「健常児」と比べてゆっくりなだけなのです。ゆっくり発達していくという特徴を持っているので、一般的に見れば「発達していないのではないか?」と思われがちですが、実は確実に発達しています。(程度によっては健常児と変わらぬほど自らの障がいを克服して卒園していく子どももいます。なんて素晴らしい保育でしょう!しかしそのためには障がい児に対する正しい理解と、親や教育者の不断の努力が必要であることはお伝えしておかなければなりません。)
生後7ヶ月で歩行しそうな状態の子どもがいました。(多くの保育園や親御さんは「あら、早いのね」といって見過ごしてしまいがちですが、本当は12ヶ月を待たずに歩行するというのは非常に気をつけて見なくてはならない状態です。本来ならば寝返りを獲得し、ハイハイに移行する準備期間のような年頃です。それも待たずに5ヶ月近くも早く歩行に移行するというのは、ヒトの進化の流れから見ても、何かしらの大変さを抱えていると考えた方が懸命です。)
職員会議でもその子どもについての話し合いがなされ、「12ヶ月を迎えるまでは、ハイハイをたくさん経験させてあげよう」ということになりました。お母さんも全面的に保育園を信頼して一緒に努力していくことになりました
この信頼関係というのが非常に大切です。たとえ子どものためとは言っても、保護者と保育者の信頼関係が無ければ、子どもの発達を同じ気持ちで見守ることはできません。
その子どもは、平地の状態だと立とうとしてしまうので、斜面に連れていき、親と一緒に斜面をハイハイしながら上り下りする遊びなどをたくさん経験させてあげました。初めこそ、その子どもはうまくハイハイできずに、お母さんに泣くことで思いを訴えていましたが、お母さんの素晴らしいところはそこで助けてあげるのではなく、常に笑顔で「おいで、こっちだよ」と我が子を励まし続けたことです。
子どもが親に励まされて斜面を登り切った時、お母さんや保育者は「えらい!」「よく頑張ったね」と、子どもに感嘆の声をかけてやるのです。「泣いているから助けてあげたい」という気持ちをお母さんがグッとこらえて我が子のために笑顔でい続けることがどれだけの「心の強さ」が必要か、子どもを育てたことのある親御さんなら共感していただけるかと思います。
それだけではなく、お母さんは子どもの生活をきちんと守ってくれていました。TVを見せない、子どもに害のあるものは与えない、などの徹底も、子どもの成長を後押ししてくれる欠かせない要素であることを理解しているからです。
現在、その子どもはクラスの中でも際立ってたくましく、健康的です。笑顔と意欲に満ち溢れ、体から生きることの喜びを表現しているような子どもに育っています。しっかりとハイハイを経験してきたので、転んでも手をつきますし、段差があれば「自分で降りられるかな?」と観察してから降りる、とても賢い子どもに育っています。
子どもが育てるには「待つ」という姿勢も非常に大切です。子どもの生活を守ること、その時期に本来経験すべき運動をしっかりとさせてあげること、そのほかにも斎藤公子氏のリズム遊びや、縦抱きによる目交(まなかい)、マッサージを毎日丁寧に行うからこそ、障がいを持った子どもが育つのです。
【人間の尊厳を大切にする精神を持ってこそ障がいは克服されていく】
子どもと向き合う時に大切なのは「一人の人間として尊重すること」だと思います。これは健常児であっても、障がい児であっても変わることはありません。
人間は生まれながらにして平等であり、個人の能力に応じて等しく教育を受ける権利があります。そして障がいを持った子どもと向き合う時、私たちができることは、障がいをそのままにしておくことなく、一歩でも前へ、前へと良い方向に導いてあげることではないでしょうか。
まだまだ私たちは「子どもだから」という言葉でもって、人間の尊厳を大切にする、ということまでは意識できていません。大人が権利を求めるのと同じように、子どもに対しても権利を求める姿勢を、子どもに変わって大人である我々が要求しなくてはならないのです。その先に子どもの発達があり、障がいを持った子どもの発達があると思うのです。
【おわりに】
「障がいは克服できる」という事実を初めて知った時、私は衝撃を受けました。経験の浅かった頃の私は、障がいを持った子どもを助けてあげることはできないだろうと思っていたからです。それを教えてくれたのが斎藤公子先生の「さくらさくらんぼ保育」だったのです。
障がいを持った子どもを育てている親御さん、教育者の方へ。子どもの障がいを克服するには、年齢が低ければ低いほど有効です。2冊の書籍をご紹介しますので、参考にしてみてください。皆様の役に立つことを信じています。
1.出版:青木書店 新装版「さくら・さくらんぼの障害児保育」
編著:斎藤公子
2.出版:太郎次郎社エディタス.スタジオほもり「リズム遊びが脳を育む」(DVDブック)
編著:大城清美
ライター:斎藤保育を愛している保育士
斎藤公子氏の「さくらさくらんぼ保育」実践園に勤めている保育士。
決して時代に流されない「子どものための保育」に感銘を受け、様々なツールを用いて情報を発信している。
Instagram:sakura.sakuranbo1920
note: note.com/saitouhoiku1920