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「人見知り」ってどんな意味があるの?いつするの?どうすればいいの?解説します!
皆さんは子どもに「人見知り」をされた経験はありますか?特に0,1,2歳児を担当する方は、信頼関係ができるまでは人見知りをされるのではないでしょうか。また、お子さんを保育園や幼稚園に預ける予定の方も、お子さんが人見知りになっていて不安…という方もいるかもしれません。
子どもの人見知りにはちゃんと意味があります。
意味を知るだけで、自分の対応が変わったり、安心感を与えることができます。一緒に勉強しましょう!
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園長コマツ
とある私立認可保育所の園長です。 子どもや保護者、職員みんなが活き活きと暮らせる保育園へ向けて悩みながら改革中。 自分の取り組みや学びをNoteを通して発信します。 プライベートでは二児の父。 好物はハンバーグ。
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人見知りとは?
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改めて「人見知り」の定義について確認してみましょう。
人見知りとは?
8か月頃の赤ちゃんが見知らぬ人を見ると不安になったり、目が合うと泣き出したりする行為のこと。
この現象が「人見知り」と言われる現象です。個人差もありますが、早い子で生後6か月~8か月くらいの赤ちゃんに見られるようになります。人見知りは英語で「eight-month-anxiety」と訳されます。日本語にすると「8か月不安」です。つまり、世界中で人見知りの現象は確認されていることになります。
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世界中で確認されているということは、生物としての人間に備わっているものだと考えられますね。
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人見知りが起きる理由とは?
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①視力の発達が関係している。
人見知りは子どもの視力の発達が関係していると言われています。子どもの視力は生まれてから徐々に良くなっていき、およそ5歳くらいで成人と同じ視力になります。視力の発達は以下のようになっています。
年齢 視力
新生児 0.02~
6か月~ 0.2~
1歳~ 0.4~
3歳~ 1.0~
5歳~ 成人とほぼ同じ
ひと昔前、赤ちゃんの知識は産婆さんや産婦人科の医師が主に持っていました。当時は「新生児はペンライトを目で追わないことから、目が見えていない」というのが一般的な考え方でした。しかし、その後の研究でライトを目で追う認知発達や運動発達と視力は別問題、という事がわかりました。視力を測定する機器の発達により、現在は新生児で0.02とされています。
人見知りは、赤ちゃんの視力が発達してきたことにより、人の顔を認識するようになったからこそ、起きる事象だと考えられるようになりました。生まれたての赤ちゃんは世界はぼんやりして見えています。それが生後6か月くらい経つと……0.2程度になるので、段々世界が見えてきます。人の顔もだんだん見えるようになってくるでしょう。そこで起きるのが、養育者と他者との区別、つまり「人見知り」というわけです。
②赤ちゃんが持っている能力の1つ「顔認識」と関係がある。
生まれたての頃は視力がまだ未発達な赤ちゃんですが、人間の顔を認識する力が優れていると言われています。例えば…以下の2点の画像を赤ちゃんに見せたとします。
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同じパーツを使っている2つの画像ですが、AよりもBの方が人間の顔に近い事がわかります。この2つの画像を見せた時に赤ちゃんはBの画像を注視するそうです。
つまり、赤ちゃんは「人間の顔の基本的な構造」を認識するための本能的な顔認識システムを備えているのです。人見知りはこの顔認証システム+記憶の発達によっておこります。
生後2か月以降になると、顔認証システムに加えて記憶の発達が起きてきます。すると、今までは「人の顔らしきもの」はわかっていた赤ちゃんが…「人の顔らしきもの」+「よく見ている人の顔」を覚えるようになってくるのです。人見知りは視力が正常に発達している、安心できる養育者と他人とを区別できている証拠とも言えます。
そもそも、なぜ人間の赤ちゃんは人間の顔を認識する力が優れているのでしょう?
ちょっと専門的な話
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ここからはちょっと専門的な話です。スイスの生物学者アドルフ・ポルトマン(1897-1982)は人間の特殊性として「二次的就巣性」と「生理的早産」を提唱しました。なんだか難しい単語がでてきますが、わかりやすく解説します。
二次的就巣性…人間は高度な生物であるにも関わらず、巣の中にいる。
こちらの表は哺乳類の妊娠期間や生まれた時の特徴を比較した図です。
それぞれの種族による妊娠や出産時の特徴
下等な種(ネズミなど)
・妊娠期間ー短い(20日前後)
・一胎ごとの子の数ー多い(5-20匹)
・ 誕生時の状態ー未熟(就巣性)
高等な種(猿や馬など)
・妊娠期間ー長い(猿=170日前後、馬=330日前後)
・一胎ごとの子の数ー少ない(1-2匹)
・誕生時の状態ー成熟(離巣性)
人間
・妊娠期間ー長い(280日前後)
・一胎ごとの子の数ー少ない(1-2人)
・誕生時の状態ー未熟(就巣性)
生物学的には知識が低いネズミのような種は「下等な種」と分類されます。下等な種はそれぞれの個体は未熟な状態で生まれてくるので、すぐに死んでしまいます。なので、一胎ごとに多くの子どもを産み、生存確率をあげるのです。そして生存する確率をあげるために、生まれたてのころは巣の中で育ちます(就巣性)
猿や馬など高等な生物に分類される動物たちは、妊娠期間も長く、出産時はある程度完成した状態で生まれてきます。これはお腹の中で子どもを成熟させ、完成度を上げることで生き残る生存戦略をとっているのです。
しかし、人間の特徴は違います。妊娠期間は長く、生物としての完成度は高いはずなのに…生まれたての赤ちゃんは自分で生き抜くことはできません。周囲にお世話してもらうこと、つまり巣の中で生きるような状態で生まれてくるのです。この特徴を二次的就巣性と呼びます。
つまり、高度な生き物であるにも関わらず、巣で生活することを前提に生まれてくるのが人間、これはとっても特殊な事例なのです。
生理的早産…周囲の人に保護されることを前提に、未熟な状態で生まれてくる。
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生物としての人間のもう1つ大きな特徴が「生理的早産」です。
生理的早産とは?
猿や馬など他の哺乳類が生後まもなく自力で生活できるのに対し、人間は親や周囲の人に保護されながらではないと、生きていけないという状態で生まれてくる特徴のこと。
そもそも人間は高度な生物でありながら、未熟な状態で生まれてくる、ということです。人間はなぜこのような状態で生まれてくるのでしょう?それは2つの説があると言われています。
人間が生理的早産で生まれてくる理由
①人間は二足歩行するようになり、骨盤が狭くなったことで、胎児が通れるスペースが小さくなった。胎児が通れるうちに出産をしないと母体に危険が及ぶため。
②人間は野生の中ではなく、集団の中で生きていく習性があることから、身体よりも脳の発育を優先するため。
まだまだ人間には解明できていない謎が多いのです。ただ、他の生物と比べると、とても特殊であることがわかります。生物として人間を見てみると、色々な気づきが得られますね。
人間は「社会の中で生きていくことが前提の生き物」なので顔認証が優れている。
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ここまで人間の生物としての特徴を解説してきました。人間の赤ちゃんは長い妊娠期間を経て、高度な生物として生まれてくるはずが……母体が出産に耐え切れないので、そもそも早産で生まれてくるという、とても特殊な生物なのです。
何が言いたいのかというと、赤ちゃんは高度な能力を持ち合わせながら、未熟な状態で生まれてくるので、能力を発揮するまでに時間を要する(保護されなくてはならない)存在ということです。顔認証能力もその1つの例と言えるでしょう。
人間の顔認証が優れているのは「人間が人と人との間の社会で育つ生き物だから」ということがわかりました。そのような背景を知ると、赤ちゃんが人見知りしている理由も少しわかると思います。
徐々に視力が発達したり、信頼関係を育む中で「信頼できる人」「よく知らない人」をちゃんと区別する能力が身についているのです。「よく知っている人」は後追いしたり、まとわりついたり、愛着行動を示します。反対によく知らない人には、人見知りの反応を見せます。
人見知りはちゃんと人の顔を判別できている証拠!安心できる人、安心できない人を見分けられるという事は生きる上でとても大事な能力です。人見知りが起きても、ネガティブな感情にならず、その子がちゃんと発達している証拠と受け取ってあげてください。
人見知りされたら、どうすればいい?
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では、赤ちゃんに人見知りされたら、私たちはどのように行動すれば良いのでしょう。園長コマツがオススメする対応は以下の三点です。
無理に慣れさせようとせず、少し遠めの距離を保ち、赤ちゃんが自らやってくるのを待つ。
遊ぶことやお世話をすることを通して、赤ちゃんと信頼関係を結ぶ。
赤ちゃんが信頼している人と仲良くしている姿を見せる。
無理に慣れさせようとせず、少し遠めの距離を保ち、赤ちゃんが自らやってくるのを待つ
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こちらから無理に距離を詰めると、赤ちゃんはかえって不安になります。自然と子どもが受け入れるようになるのを、じっくり待つようにしましょう。
遊ぶことやお世話をすることを通して、赤ちゃんと信頼関係を結ぶ。
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上記で説明した通り、赤ちゃんは信頼できる人かどうかを見極めています。一緒に遊ぶこと、お世話をすることで赤ちゃんの中で心地よさが育まれていきます。最初は泣かれてしまうかもしれませんが、「泣いてしまうのが当たり前」くらいのおおらかな気持ちで声掛けをし、一緒に心地の良い時間を積み重ねることで、信頼関係を築いていくことが大切です。
お互いに無理のない範囲内で楽しく過ごしましょう。
赤ちゃんが信頼している人と仲良くしている姿を見せる。
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赤ちゃんは人を判別する能力に優れています。赤ちゃんが信頼している人と仲良くしている姿を見る事で「あ、この人は安心できるのかな」と理解するようになります。赤ちゃんが信頼している人と楽しそうに話したり、一緒に過ごすことも大切です。
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慣れ保育などで最初は保護者と一緒に登園するのは、保育士と保護者が仲良くする姿を子どもに見せて、安心してもらうねらいがあります。
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まとめ
・人見知りは赤ちゃんの「顔認証システム」と「記憶」の発達によって起きる。
・人間は「二次的就巣性」と「生理的早産」という哺乳類としては珍しい特徴をもっている。
・「二次的就巣性」…高等な生物であるにも関わらず、下等な生物の習性である「巣」で育つ。
・「生理的早産」…猿や馬のように、生まれたてですぐに活動できる状態ではなく、周囲の人間に保護されること前提で生まれてくる。
・「二次的就巣性」と「生理的早産」の特徴から、人間は社会の中で生きる事が前提の生物である。だから、顔認証にも優れている。
・人見知りは「顔認証」が育っている証拠。
(赤ちゃんに人見知りをされた時の対処法)
・無理に慣れさせようとせず、子どもが自然と受け入れるのをじっくり待つ。
・遊びやお世話を通して信頼関係を築いていく。
・赤ちゃんの信頼する人と仲良くする姿を見せる。
以上です。参考になれば幸いです!