見出し画像

どうする?父親の施設入所25 最後の日々

コロナ禍2022年12月26日
父との面会を終えたあと、24日に父はすべての点滴を抜かれることになっていました。年内最後の仕事が入っていた12月26日。
その日わたしは仕事で、3歳の子どもと一緒に、部屋でお母さんの帰りを待っていました。仕事中に電話はとらないのですが、この時ばかりは「ごめんね」と断って出ました。施設のケアマネさんからでした。心臓がバクバクします。

 施設との会話
ケ「グラグラしていたお父さんの歯が抜けたので、お知らせしますね」
私「歯?ですか?」
ケ「最後にずっと一本だけ残っていたんですが、それが今日抜けました!」
私「父はどんな具合ですか?」
ケ「点滴を抜いたので、尿量は少なくなっていますが、今日もふた匙ぐらい食べましたよ。お父さんの状況はあまり変わりありません。今なら、お父さんと電話つなげられますよ」
私「お願いします」
介護士「今日、お父さんの最後の歯が抜けましたよ!さっきちょっと目を開けていました。声かけしてあげてください」
私「お父さん、最後の歯が抜けたんだって?すごいねー。どこか痛いところはない?みんな元気にしてるよ。大丈夫よ。大丈夫よ。お父さんも大丈夫よ」
介護士「今、ちょっと目をあけて頷いてくれていますよ」

男性の介護士さんの声があまりにも柔らかいので、慌てていたわたしも穏やかになってきました。父はこの柔らかい声を聞きながら横たわっているんだなと思うと、とても安心しました。

電話を切ると、そばで聞いていた子どもが、じっとわたしを見ているので、とりあえず「わたしのお父さんの具合が悪くて、電話がかかってきたのよ」と説明してみました。彼は神妙に「それは大変だったね」と言ってくれました。こちらがびっくりするぐらい心のこもった声でした。

ケアマネさんや介護士さんは、どことなく嬉しそうでした。父の最後の歯が抜けたことが。そうか、父は体を使い尽くして、最後の歯一本も残さず逝ってしまうんだなぁ、きっとそれは悪くないことなんだろうと思いました。

あの柔らかい声の介護士さんが、遠慮せずにお電話してくださいねと言ってくれたので、毎日誰かが電話して、交代で父に声をかけました。「うー、うー」と返事をしてくれた日もありました。

点滴をやめたあとも、届いた葛湯を飲むかと聞いたら、5匙ぐらい食べ、冷まし足りなかったのか「熱い!」と言って冷ましてもらいながら食べた、とケアマネさんが嬉しそうに電話をくれたこともありました。その後も、ゆるやかに父の状態は落ちていきました。今夜がヤマと言われる前日まで、父はひと匙、ふた匙と流動食を食べていました。

つづきはこちらの記事より。




いいなと思ったら応援しよう!