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ポケモンから始まる”自分だけの本”

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小学生の時に『ポケットモンスター(ポケモン)赤・緑』が発売して、あの時代の多くの子どもたちが嵌まったように僕もポケモンの世界に夢中になりました。

もちろん、ポケモンの名の付くグッズは片っ端から手を出していたのですが、その中でも最も心惹かれたのが『ポケモン図鑑』でした。

『ポケモン図鑑』は全ポケモンの身長や体重などのデータが細かく記載されている設定資料集に近い攻略本なのですが、当時、数多く制作された攻略本と大きく異なるのは「ピカチュウの電圧を図る様子」や「ニョロゾの骨格画像」、「ゲンガーにまつわる逸話」、「カブトプスの捕食の様子」などのミニコラムがオリジナルの挿絵と共に載っている点でした。

確か出版元はアスペクトで、『スーパーマリオRPG』や『ひみつのたからばこ(マザー2の攻略本)』といった今では伝説級の”読み物として面白い”攻略本を手掛けていました。

ゲーム中の画像の使いまわしや似たような資料ばかり載っている攻略本に対して、子どもながらに「またこれか…」と辟易していた僕は、この”攻めた”攻略本に一瞬で心を奪われました。

「こういうのが読みたかった!」

『ポケモン図鑑』を手にして以来、ゲームボーイの中だけにあったポケモンの世界がリアリティを帯びながら広がりました。

「育て屋さんって預かったポケモンをどんな風に育成しているんだろう」

「7番道路のゲートの人は会社員?バイト?」

「ニョロゾがカエルに進化することもあったのかな(注:のちに本当にカエルに進化しました)」

そんな風に妄想する日々は楽しいっちゃ楽しかったのですが、やっぱりプロ(=大人)が作った『ポケモン図鑑』のような本が読みたい衝動に駆られてきました。

でも、残念ながら続編が出る気配がなかったので、足りない知恵を絞ってたどり着いたのが「読みたいポケモンの本がないなら、自分で作るしかない!」という結論でした。いわゆる自給自足です。

本を作る以前に、お世辞にも絵がうまい訳ではなく、ろくに漢字も書けないし、作文を書けば100人中100人が頭に?マークが浮かぶ文章力。さらに言うと3日続けばよい方の致命的な飽きっぽさ。

それでも『ポケモン図鑑』のような本が読みたい一心で、使っていなかったジャポニカ学習帳の「じゆうちょう」に一心不乱にポケモンの読み物を書いていきました。

「新商品のチラシ(『ミラクルボール』のご案内)」

「ポケモンを使った新ビジネス(ラッキーのたまご屋)」

「ポケモンジャーナリストによる三面記事(『ミュウをつかまえろ』)」

「エビワラー日記(栄光と挫折の後の復活劇)」

誰に見せる訳でもなく一人で思いついた記事を描いてはニヤニヤ。でも、自分の書いた記事の幼稚さやイラストが公式の杉森健さんのタッチと全然似てなくてイライラ。

そんなことを繰り返しながら、「じゆうちょう」にポケモンの記事を埋めていきました。

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それから20数年が経ちました。あんなに読み込んでいた『ポケモン図鑑』はどこかへ行ってしまいましたが、夢中になって描いた「じゆうちょう」は未だに手元に残っています。

「じゆうちょう」の1ページ1ページから楽しそうに描いている様子がひしひしと伝わり、さらに「本を完成させたときの喜び」が蘇ってきます。

『ポケモン図鑑』とは比べ物にならないクオリティですが、あんなに飽き性だった自分が最後まで”自分だけの本”を作れたことがよっぽど嬉しかったのだと思います。

大人になった今も、ラブデリックや『moon』に関する”自分だけの本”を作っているのは、恐らく小学生のときの名残です。大好きなものに出会うと「こんな本があったらいいな」と思うようになり、そのうち1冊の本にまとめるという作業を始めています。そして、完成したらニヤニヤ。

基本的に当時とほとんど変わっていません。

ちょうどリアルタイムで『moon』の本を作っているのですが、その作業も大詰めまで来ています。

ただ、「じゆうちょう」やこれまでのラブデリック関連の本とは違って、今回の本は、資料を集めるにあたりTwitter上で多くの方に協力してもらっているので”自分だけの本”ではないのです。

本当に自分が読みたい『moon』の本にするには僕個人の範囲ではカバーしきれなくて、どうしても多くの方の協力が必要でした。何せ『ポケモン赤・緑』が1996年で、『moon』が 1997年。そう簡単に当時の資料は見つかるはずがありません…。

だから、飽き性の自分も「協力してくれた方のためにも、こればかりはちゃんと完成させねば・・・」と変な使命感が生まれています。

もう2年以上、『moon』の本を作ろうと悪戦苦闘していますが、協力してくれた方に何とか恩返ししたいという気持ちで、オンボロPCと激重フォトショップと向き合っています。

夢の本までもう一歩(二歩、三歩・・・百歩?)。何とか完成までたどり着けて、数十年経ったときの老後の楽しみにしたいです。

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追記

2017年の電ファミニコゲーマーの「moon20年目の同窓会」、2019年のファミ通の『moon』特集号を読んだときに、

「こういうのが読みたかった!」

と久しぶりに衝撃が走りました。

やっぱりプロはすごい!!!

追記の追記

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『ポケモン図鑑』を中古で買いました。あと、『moon』の本が完成しました!


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