【DQM3】ファンであっても「No」を突きつけるべき駄作
もうね、アホかと、馬鹿かと。
昨年末にリリースされた『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』は、シリーズが25年の間に築いてきた信頼を切り売りすることでギリギリ成立しているようなゲームだ。
2023年発売のゲームとは思えないチープなグラフィック、テンポが悪く迫力にも乏しいイベントシーン、薄ら寒いノリの会話を繰り広げるキャラクター、矛盾だらけの陳腐なストーリーなど、ありとあらゆる要素が壊滅的な出来で、良い点を探す方が難しい。
それでも「グラフィックは見慣れたら気にならなくなる」、「ストーリーはスキップ機能のおかげで見なくて済む」などと苦し紛れのフォロー(?)をしながら遊んでいた僕だったが、このゲームのキモである育成収集要素さえも苦痛に満ちていたことには、流石に堪忍袋の緒もブチ切れた。
結論を言ってしまうと、キャンペーンをサクッとクリアするだけなら、それなりに楽しく遊べるだろうが、それ以上の楽しみを求めている人には勧められない出来だと思う。ある程度やり込むと、それまでは目を逸らすこともできたであろう、このゲームのデカすぎる粗と向き合わざるを得ないからだ。
根本的につまらないわけではない
誤解しないでほしいのだが、これまでシリーズが培ってきたシステム自体は変わらずに面白い。フィールド上でエンカウントしたモンスターを収集、育成して他の個体と配合して別のモンスターを生み出す。
このルーティンを繰り返し、お気に入りのモンスターを作ってニヤニヤしたり、スキルやステータスを厳選した最強のモンスターでオンライン対戦に赴くのも良いだろう。だが、そういった楽しみを得るためには相応の苦しみにも耐えなければならない。
本作の問題
①季節・天候
本作には季節と天候という概念が存在する。
ゲーム内には四季があり、それぞれの季節によって出現するモンスターが変化する。また、季節ごとに2種類の天候が存在し、天候によっても出現するモンスターが変化する。そのため、一部のモンスターは特定の季節の特定の天候下でしか出会えないということもしばしばある。
例えば、ナイトウォーカーというモンスターを野生で仲間にするなら、中級以上の「甘味楼の魔界」のフィールドで、「秋」の季節に、「おばけ」の天候という条件を満たしている時期に出会うしかない。配合で作ろうにも特定のモンスターを要する特殊配合でしか作れない。クソ面倒だ。
では、季節と天候を変えるにはどうすればよいか?
答えはシンプル、待つだけだ。
一つの季節は約5分で自動的に切り替わるため、その間は何か別のタスクをこなすなり、ゲームを放置するなり、時間を潰して待機するほかない。
別のタスクといっても、ゲーム内時間はフィールド上でしか進まないため、待ち時間で配合をしたりなどは当然できない。レベル上げをするか、後述するマラソンに取り組むくらいしかやることは無い。
ゲームを進行させると季節を一つ進める消費型アイテム「季節のこな」が解放されるようになるが、入手方法があまりにも限定的であるため、気軽に使用できないだろう。プレイヤーが自由に季節を変更できるようになるのは、エンディング後に解放される非消費型アイテム「季節のフルート(ちなみに僕はこのアイテムを入手していない)」を入手してからだ。
また、天候に関してはランダムで変化する。プレイヤーが干渉する手段は一切存在しない。いつか変わってくれることを祈り、ただ信じて待つほか無い。
季節と天候、どちらか片方だけだったらそこまで気にならなかったかもしれないが、両方の条件を合わせるのが面倒かつ時間を要するものであり、プレイ時間を重ねれば重ねるほど鬱陶しく感じた。
このゲームの場合、野性のモンスターを仲間にする作業は、あくまで配合の前準備に過ぎない。特に高ランク帯のモンスターを生み出すには、種となるモンスターが大量に必要であるわけだが、こういった「季節や天候が変わるのを待つ時間」がゲームのテンポを悪くしていることは間違い無いだろう。
②マラソン要素
このゲームのプレイ時間の殆どはフィールドを徘徊している時間が占めている。配合に必要なモンスターを仲間にするため、プレイヤーは走り回る。
中でもコンプリートやSランク以上のモンスターの配合を目指すプレイヤーを苦しめるのが、「タマゴ」と「メタル系モンスター」の存在だろう。
ごく稀に希少なモンスターと出会える「タマゴ」と、レベル上げと一部モンスターの配合に必要な「メタル系モンスター」は、マップ上に点在する特定の出現ポイントにてランダムでポップする。
それらがどこにポップしているかを事前に確認する手段は無いので、とにかくしらみ潰しにフィールドを走り回るしかない。ちなみに特定の季節でしか行けないポイントがあるなど、ここでも季節の要素が邪魔をしてくる。やっぱ季節要素クソじゃねーか!
はじめに書いた通り、確かにキャンペーンをクリアする程度なら、特別レアなモンスターは必要ないのかもしれない。だが忘れてほしくないのは、本作がキャラゲーであるということだ。
本家作品では敵として倒すしかなかったモンスターを手持ちに入れて旅をしたり、竜王やゾーマといったラスボス級のモンスターを手持ちに入れたりできることはスピンオフ作品ならではの楽しみだろう。
そういったレアなモンスターを仲間にするのに、ある程度の「難題」を設定するのはゲームとして当然なのだが、本作において問題なのは、それが単調で退屈な作業でしかないのに加え、配合システムの仕様上、その作業を何度も要求されることだ。
③パフォーマンス面
↓の画像を見てほしい。
このゲームは、頻繁にクラッシュを起こす。
体感だと10時間に1回程度だろうか。本作はオートセーブが搭載されているので安心、かと思いきや先述したマラソンとの兼ね合いでオートセーブ機能はOFFにしていることが多く、そこそこの時間の作業が吹っ飛んでしまうことも度々あった。
タマゴからしか手に入らないレアモンスターを2体仲間にした直後にゲームが強制停止された際には、思わず僕もゲーム機を床にクラッシュさせてしまいたくなった。なんとも忌々しい思い出だ。
本作が地味な軽作業を延々とこなすゲームであるだけに、その作業時間が丸ごと吹き飛んだ後には「単純作業の記憶」以外に何も残らない。品質管理の重要性について改めて考えさせられた。
④課金へのこだわり
配合をする上で重要になるのは、配合元モンスターの確保だ。どんなモンスターが生み出されるかは、配合元になる親モンスターの種族やランクによっておおよそ決定される。
だが、高ランク帯のモンスターになると、特定の組み合わせでの配合(特殊配合)を要求されるようになる。その特定のモンスターには、前述したメタル系モンスターやタマゴ限定モンスターも含まれる。
メタルキングやライオネックといった確保に時間を要するモンスターが配合元リストに載っていると、「マラソン」の4文字がチラつく。一回仲間にしたモンスターをもう一度確保するために、また何時間もマラソンをさせられるのはハッキリ言って苦痛だ。
そんなヘタレなヌルゲーマーの我々に対して、我らがスクウェア・エニックスは救いの手を差し伸べてくれた、それもたったの1,320円(税込)で。
なんだろう、それって以前は無料でしたよね?
簡単に説明すると、「以前仲間にしたことがあるモンスターに再び出会えるダンジョン」は過去作から存在し、当然だがデフォルトでの搭載であり、プレイヤーは無料で使うことができた。
それが本編とは別売のDLCとして販売されている。
しかも本編の発売日当日から配信されているため、本編から意図的に排除していることが窺える。
別にDLCそのものを否定したいわけではない。
本編をより快適に遊べるようにするアイテムや、本編後の世界をより楽しめるような追加ストーリーやダンジョンをDLCという形で販売するのは、現代においては至極真っ当な手法であるだろう。
問題なのは、以前から使えたものを意図的に排除し、あえて不便な体験を提供するようなやり口だ。
これ2013年のゲームじゃないよな?
⑤労力に見合わない高ランクモンスター
さて、マラソンという苦行にも耐え、人によっては金銭的な苦痛にも耐え、ようやく誕生した最高ランクモンスター、さっそく意気込んで使ってみると、ある一つの疑念がよぎる。
うわっ…私のモンスター、弱すぎ…?
配合によって生まれたモンスターの初期レベルは1からスタートするため、弱いのは当然といえばそうなのだが、それにしても強さを実感できるタイミングが分かりづらいように感じた。
確かに優秀な専用スキルを持っていたり、レベルが上がるとステータスに磨きがかかっていくのだが、パッと見で分かるようなインパクトに欠ける。
別に対戦で無双させてほしいと言っているわけではない。あくまでクソ面倒な生産コストに比べると、その性能はイマイチ見合っていないと思うだけだ。
じゃあレベル上げればいいだけだろ、と思うかもしれないが、問題なのはレベリングの手段も乏しいことだ。要はメタル狩りをしなければならないのだが、過去作にあったメタル系限定ダンジョンのようなものは存在しない。つまり、これが何を意味するか?メタル系が出るまでマラソンだ。ふざけんな!
配合するだけでもクソ面倒なのに、強くなるまでにも時間と労力を要するので、よほどの愛着がない限り、モチベーションを保つのは難しいだろう。
⑥コンプリート不可能なモンスター図鑑
それでも僕はこのゲームをやめなかった。僕は自分自身に目標を課し、それをクリアするまではこのゲームに向き合おうと決めていたからだ。それは「モンスター図鑑の完成」。ゲーム内で出会える全てのモンスターを仲間にし、図鑑を完成させることだ。
僕はこれまでに挙げてきた不満要素にもめげず、淡々とマラソンと配合を繰り返し、ついに523体のモンスターをコンプリートした!はずだった……。
どうやら3体取り逃したようだ、もしかすると隠しモンスターがいたのかもしれないと思いネット検索をかけてみると、そこには衝撃の情報が映っていた。
マクドナルドデリバリー限定オリジナルモンスター、入手期限は1月12日(金)22:59まで……。もう貰えないじゃねーか!
しかし僕は冷静になって考えた。今時、ネットで交換申請を出せばどうにかなるだろうと。だが、本作にモンスターの通信交換機能は実装されていない。つまり、1月12日までにマックで3度デリバリー注文していないヘタレにはモンスター図鑑をコンプリートする資格は無いらしい。公式はこの3体について、今後別の方法で配信する予定などと宣っているらしいが、今後っていつだよ。いい加減にしろ!
別にいいんですよ、期間限定配布のモンスターの1体や2体いるくらい。性能も大したことないだろうし、デザイン的にも特別欲しくはない。だが、コンプリート率に含めるとなると話は別だ。
通信交換機能の無いゲームで配布期間が終了しているということは、いつ来るかも分からない再配布を待ち続ける以外にコンプリート手段は無い。そう思うと、なんだか急にどうでもよくなった。
これだけ不満があっても、キツいだのダルいだのとボヤきつつもなんだかんだでこのゲームを楽しんでいた。確かにプレイ時間の殆どは単調な作業ではあったが、自分で建てた目標を少しずつクリアしていくのに達成感を得られたからだ。
だが、最後の最後で自分の力ではどうしようもないことがわかってしまい、急にどうでもよくなった。既にソフトは売却したし、ゲームデータもSwitchから削除した。二度とプレイすることは無いだろう。
僕が123時間も捧げたチャレンジは、たった3体のしょうもないコンパチモンスターのせいで台無しにされた。クソッタレ、やってられるか。
お詫び
記事にリアクションを下さった方の証言から、コラボモンスターはコンプリート率に絡まないことが分かりました。お騒がせして誠に申し訳ございませんでした。
終わりに
本作は出来の良くないゲームだ。
だが、配合をシステムの根幹に据えた育成収集システムは今やっても十分に楽しいと感じられたし、ポケモンが未だに大人気であることからも分かるように、ポテンシャルを秘めたジャンルだろう。
また、本作はこれまでGBやDSといった携帯機で展開されてきたシリーズにとって、初めて据置機向けにリリースされた作品ということもあってか、全体的に不慣れさが感じられた。据置機での開発経験やノウハウが不足していた可能性は大いにあり得る。
だとしたら、真価が問われるのは次回作になるのかもしれない。いつになるかは分からないが、今作を超える素晴らしい作品になることを願うばかりだ。