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ほげあ
2018年12月16日 21:54
◆ 目次第七話残響†††まるで、ぜんぶ死んだみたい。病室の中で看護師さんが動き回っているのに、なぜかそう思った。空気を入れ替えるために開け放たれた窓から、冬の朝の冷たい空気が吹き込んで、カーテンがバサバサと揺れている。「あれ?おかしいですね。親方さんから何も聞いていませんか?」慣れた手つきでシーツを引きはがしながら、顔なじみの看護師さんは言った。「ヒメちゃんの転院の
2018年11月29日 20:43
第六話田中?ヒナヒナにしてやんよ!†††「このまま容態が安定するようなら、一週間ぐらいを目処に一般病棟へ移れるでしょう」緊張に張りつめていた親方の背中から、ほっと力が抜けたのが分かる。「あの…ヒメちゃんの意識は…」「正直なところ、まだわかりません。大きな事故でしたから…」「そうですか…」親方との気詰まりな空気をふっと変えるみたいに、医師はヒナに視線を向けた。「ところ
2018年11月25日 17:58
第五話みとらじSS @病院の屋上†††「ヒナ…寝ちゃって……ねえ美兎ちゃん!ヒメ!ヒメのところ、行かないと!」「まあまあ。さきほど親方さんにお会いしましたが、峠はこえたと」「ほんと……?」「ええ。鈴木の歌が届いたんじゃないですか?」「ぅ………ぇええええ……良かった……良かったよぉ…………」「よしよし。鈴木、頑張っていましたもんね」「ぐすっ……そんなこと……ないよ」
2018年11月25日 17:49
プロローグ「星空の狭間」第一話 『鈴木フロ』第二話 『消えない赤色』第三話 『命』第四話 『星に願いを』第五話 『みとらじSS @病院の屋上』第六話『田中?ヒナヒナにしてやんよ!』第七話『残響』
2018年11月18日 03:10
第四話星に願いを†††まぶしい……まぶたの奥に赤色はもう見えない。夢に出てきたナースさんの処置が効いたのかもしれない。バタバタと、何人もの人が慌ただしく廊下を行き交う音がする。「ヒメ!」跳ねるみたいに飛び起きると、瞳のなかで、像がかたちを結んだ。声を飲む。その姿を見たら、息ができなくなってしまった。ベッドにのせられ、目の前を運ばれて行く真っ白なヒメの顔。体にか
2018年11月18日 03:09
第三話命†††「ヒメならなれるよ、太陽に」夕暮れの河原でそんな風に言ったのは、いつだったろう。もうずいぶん昔のことみたいに思える。−−−−寒いまだそんな季節でもないはずなのに、ぶるりと寒気がして目が覚めた。(いけない!!ヒナ、眠って……)慌てて廊下の奥、手術室を確認する。手術灯は−−−−「あれ?」手術室がない。手術室どころか廊下も壁もない。顔をあ
2018年11月18日 03:08
第二話消えない赤色†††気付けば、壁の前に立っていた。壁は、顔のすぐ目の前にあった。ぎょっとして少し後ずさると、壁だと思っていたものは扉だと分かった。真っ赤な電光掲示板には「手術中」の文字。(……パジャマだ)自分の格好に気付く。スマホがない。財布もない。(……痛っ)ぎゅっと握り込んだ拳の爪が、てのひらに突き刺さって痛い。真っ白になった指を、ほどくようにゆっくり
2018年11月16日 20:36
第一話鈴木フロ†††(ヒメになんて言おう……)ブクブクと、顔半分をお風呂につけて思案する。きっかけは、ささいなことだった。ほんの少しのすれちがい。ケンカなんて呼べるものではないと思う。だけど、ヒメに悪いことをしてしまったような気がして、ジップロックに入れたスマホに手を伸ばす気にもなれない。ヒメはきっと、怒っていない。こんな風に、ヒナが気にしているなんて、思ってもいない。
2018年11月15日 17:34
プロローグ星空の狭間†††「いいんですか?本当に」ここまで導(みちび)いてくれたのは彼なのに、取り返しのつかない罪を犯したみたいに『親方』は言った。「うん。だってこれは、ヒナにしかできない−−−−ううん。ヒナが、絶対にやらなきゃいけないことだから」「……ヒナちゃん」真っ黒に日焼けした親方の顔。笑ってできるはずの目尻のシワが、今は辛そうにゆがんでいた。−−−−本当に